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NEVER END ONLINE〜少女、終わりなき世界の攻略者〜  作者: 無色


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21/40

21.白蜘蛛の怪物

 【魔物の住処】。

 攻略難易度、出現モンスターのレベル、共に初心者仕様のダンジョンだ。


「私は盾役になるから、攻撃は任せるね」

「足を引っ張らないよう努めます」


 石畳の回廊を進むと、角から棍棒を手にしたゴブリンが数体現れた。

 ゴブリンたちは二人を捉えるなり、棍棒を振り回して突進してくる。

 アリスはゆっくりとした攻撃を受け弾き返し、ユイの射線から身体をずらす。


「今だよ!」

「はい! 【風刃】!」


 放たれた刃がゴブリンの一体に直撃し【炸裂】が発動する。

 爆ぜた刃が周囲のゴブリンにもダメージを負わせた。

 撃破に安心し肩を下ろしたのも束の間、後ろからもモンスターが襲いかかる。

 ブラックウルフという黒い体毛の狼だ。

 油断し反応が遅れたユイの背に爪が食い込もうとするが、それよりも早くアリスが一足で跳び狼の頭を蹴り飛ばした。


「ユイちゃん!」

「っ、【風刃】!」


 床に転がるブラックウルフを攻撃する。

 ダメージを与えられた身体は光となって消えた。


「油断大敵だよ」


 指を立てて可愛らしく叱るアリスに、ユイは申し訳ないと思いつつも胸をときめかせた。

 その後もモンスターを倒しつつ上階を目指す。

 アリスが防ぎ、ユイが攻撃するというスタイルを一貫して。

 またアリスは攻略済みのためマップが表示されるが、ユイはその限りでない。

 ダンジョンに慣れさせるという意味でも、ユイに通路を指定してもらう。

 

「また行き止まりです」

「大丈夫だよ。慌てないで進もう」


 アリスの優しさにそっと後押しされ、絶大な安心感と緊張を背に、来た道を戻ろうと踵を返したときだった。

 カチッと踏んだ床の石が一部へこみ、それに合わせて地響きが起こり壁が動いた。

 何事かと慌てる二人の前に、地下へと続く階段が現れた。


「アリス様、これは」

「隠し通路だ」


 階下は闇が差し見えないが、心なしか冷たい風が吹いてくる。


「どうする?」

「行って……みます」


 えも言われぬ異様な空気を掻き分けるように、アリスを先頭に階段を降りる。

 二人が足を踏み出してすぐ、開いた壁の入り口は閉じ、階下へと続く松明が点灯した。


「進むしかないってことだね」

「少し怖いです」


 地の底まで続くかのような長い階段。

 数分をかけて降りた先の空間は、木々と滝が織りなす美しい渓流となっていた。

 しかし、見渡す限りの風光明媚に拭いきれない異物感が。

 苔むした岩、青く茂った木、各所が白い糸で雁字搦めにされている。


「アリス様……」

「大丈夫。ユイちゃんは私が守るから」


 ユイの胸のときめきが止まらない。

 そんな折、奇怪な笑い声が二人の耳を劈いた。

 アリスは剣を構えて、天井から糸で吊り下がってきたそれを見据える。

 長い髪を垂らし、白織の和服を纏った女性。

 ただし下半身は人間のそれでなく、自動車ほどの大きさの巨大な蜘蛛となっている。

 雪のように白い蜘蛛の身体、八本の脚の先は赤く染まっている。


「【鑑定】」


 完全初見の相手に、アリスはステータスを確認した。


「白蜘蛛の怪アラクノフォビア……ユニークモンスターだ!」


 アラクノフォビアは女の上半身が右腕を横に伸ばし、腕を薙ぐのと同時、五指から伸ばした糸でアリスたちを攻撃した。


「っ!」


 ユイを庇う形で糸の攻撃を防ぐ。

 腕が痺れるほど重く硬い糸。

 それはまるで鋼鉄のワイヤーのようであった。

 

「アリス様!」

「隠しギミックは簡単なのに、初心者用のダンジョンモンスターじゃない……」


 アリスの見解は、ある意味で正解で、ある意味で不正解と言えた。

 アラクノフォビアがこのダンジョンに配置されているのは、単に初心者に向けた運営の悪ふざけというわけではない。

 この場合、アリスがユイに同行しているというのが問題なのだ。

 そもそも隠し通路のギミックは、レベルが一桁のプレイヤーしか起動出来ない仕掛けであり、熟練のプレイヤーでは発見すら出来ない。

 本来ならばプレイヤーのレベルに応じたモンスターが出現するところ、レベルが二桁を超えているプレイヤーが同行した場合、そのプレイヤーに応じたモンスターが出現する仕組みがイレギュラーとして搭載されていた。

 加えて、ダンジョンでは大したドロップアイテムも入手出来ないため、熟練のプレイヤーほどこの場所には訪れないというのも理由の一つに挙げられる。

 更に、このイレギュラーのいやらしいところが一つ。


「【風刃】!」


 アラクノフォビアは両手から糸を伸ばし、空中にて矢を編んで一斉に射出。

 それら全てをユイに向け、風の刃を撃ち落とした。


「【アルフィリアス】!」


 アリスは矢とユイの間に無理やり割り込み、アラクノフォビアの攻撃を全て斬り落とした。


「このモンスター、ユイちゃんだけをターゲットにしてる」


 複数人がこの場に存在するとき、一番レベルが低い者がヘイトを集める仕掛けだ。


「アリス様……」


 刀を握る手が震えている。


 アリスは一言、大丈夫だよ、とユイの手に自分の手を添えた。


「言ったでしょ。守るって」


 剣を構えモンスターから目を離さず強く言葉にする。


「ユイちゃんには傷一つ付けさせないよ」


 これでもギルドのリーダーだからね。

 アリスは窮地に笑った。


「一緒に勝とう」


 ユイは駆け出す小さな背中に目を奪われた。





 

「【エアロリープ】!」


 ユイの【風刃】よりも数段強く速い真空の斬撃だが、アラクノフォビアの硬い外殻に弾かれる。

 高速で放たれる糸の玉を弾き更に加速。

 数度斬りつけるがいやに物理耐性が高い。

 相手が自分よりレベルが高い以上、【デッドリーイノセンス】の即死効果も望めない。


「【纏魔】なら……」

 

 アリスは切り札の使い所を迷った。

 それだけ目の前のモンスターの力が未知数だということだ。

 攻撃を仕掛けに前進しようとすると、アラクノフォビアは空間に張り巡らせた糸を使い、縦横無尽な動きをして見せた。

 巨体がユイを押し潰そうとするが、【アクセラレーション】を用いてユイをその場から動かす。


「きゃっ!」


 木の幹に着地する二人を、アラクノフォビアはケタケタと笑った。


「ユイちゃんしか狙わないし攻撃パターンが多い。これじゃユイちゃんから離れられない」


 木の幹から木の幹へ、次は岩場へ。

 着地すると同時、そこへ五指の糸がしなり襲いくる。

 どの攻撃もアリスの剣で捌ききることは可能だが、紛れもなく劣勢である。

 ユイは素人目にもわかる戦局をそう読んだが、その理由が自分にあることを十二分に理解していた。

 おそらくアリス一人ならば、容易でないにしろ倒すことは可能だろう。

 しかし狙われているのは常に自分で、それを守りながら戦うことが明らかに足枷になってしまっている。


「アリス様、どうか私のことは気にせずに」

「心配しないで」


 アリスはユイが自分を思いやったが故の発言だと察し、気を休めさせるために柔らかく微笑んだ。

 あくまでユイを思いやっての行動であったが、偶然にもこのときのアリスの判断は正しいものであった。

 ターゲットにされているプレイヤーが倒れたときバトルは敗北扱いとなり、この隠しエリアから強制的に退出させられるうえ、二度と挑戦することは出来ないというのが、この裏ボスの特殊ギミック。

 尤もアリスはそれを知らずとも引かない。

 不敗。

 【不思議の国のアリス】が掲げる理念に、リーダーの自分が背くわけにはいかないと剣を強く握り直す。

 この局面が劣勢だと、微塵も思わずに。


「ユイちゃん」

「は、はい」

「勝ってゲームを楽しもう」

「……はいっ!」


 アラクノフォビアは両手の五指から糸を出し、腕を交差してユイを狙った。


「行くよ! モード、【纏魔】!」


 深い闇が噴き出る。

 アリスはもう片方の手に【魔法剣】を出現させ、その場で大きく剣を振った。


「【ブラックエアロリープ】!」

「【風花の盾!】」


 【エアロリープ】に闇の属性を付与した真空の刃。

 それがユイが展開した盾に命中。

 盾もまた【炸裂】の特性を持ち、衝撃とともに爆散する。

 それはアリスの攻撃をも範囲的に散らして威力を増加し、アラクノフォビアは上半身を仰け反らした。


「ユイちゃん! もう一回!」

「はい! っ?!」


 攻撃に転じようとした刹那、蜘蛛の下半身が裂け大きな口を開き、そこから小型の蜘蛛を無数に産み出した。

 テニスボールほどの小さな白い蜘蛛がアリスたちの足から這い上がり、大きく膨らんだ。

 アリスは咄嗟に闇の魔力を爆発させそれらを払い除け、ユイと共にその場から離脱した。

 と、膨れた蜘蛛が爆発を起こし、周囲の蜘蛛も数匹も連鎖的に爆発を始めた。


「爆弾……!」


 威力はそれほどでもなさそうだが、アリスは蜘蛛の子で地面を覆われたことで足場を失い苦い顔をした。


「アリス様!」


 アリスが小さく焦っていたとき、ユイの目は今の一瞬の好機を見逃さなかった。


「蜘蛛の下半身の口の中……糸にくるまった繭のようなものが見えました! もしかしたらそれが!」

「アラクノフォビアの弱点!」


 ユイの言葉で一気に頭が晴れる。

 冴えた頭で、アラクノフォビアは一定以上のダメージを与えると口を開き、子蜘蛛の爆弾を吐き出すのだろうと予想。


(速さでゴリ押しして自爆覚悟で特攻……)


 そんな作戦とも呼べない作戦が頭をよぎったが、個人の死もチームの死も、どちらも敗北と変わらないと却下。

 口が開いていたのはほんの数秒。

 距離を詰めて口を開かせ、爆弾蜘蛛を排しつつ口内の核を撃つ。

 速さに自信はあるが、それを確実に無傷で達成することは出来ないと冷静に判断した。


「私一人で難しいなら」


 アラクノフォビアの糸を弾きユイに振り向く。


「ユイちゃん、次で決めよう」


 勝利を前提とした自信。

 それこそが、その姿こそが、ユイがアリスに惹かれた所以。

 今、憧れが自分の力を求めてくれている。

 それだけで胸が奮え心が踊った。

 胸の前でギュッと拳を握り、自分もそうなりたいと強く返す。


「はい!!」


 アリスはとびきりの笑顔を浮かべ、手の平を翳し闇を渦巻かせた。


「【ブラックホール】!」


 黒い渦が蜘蛛の子を一掃。

 高出力の魔法にMPが一気に消費された。


「ついてきて!」

「どこまでも!」


 アラクノフォビアは縦横から糸の攻撃を繰り出すが、アリスは一度深く呼吸し、前進しながら一つ一つを弾き落とす。

 如何に硬く速い攻撃といえども、狙いがユイである以上防ぐことは容易い。

 背後をカバーしつつ、着実にアラクノフォビアとの距離を詰めていく。

 アラクノフォビアは上空に手を翳し、ワイヤーの雨を降り注がせた。


「やああっ!」


 剣が黒い線を描き糸の攻撃を防ぎ切る。

 回避と防御を繰り返し、やがて二人はアラクノフォビアを間合いに捉えた。


「【フェイタルアーク・アルフィリアス】!」


 魔法で形作られた片手剣と、【形状変化】によって大剣となった剣から繰り出される十四連撃を受け、蜘蛛の口が大きく開いた。


「ユイちゃん!」

「【風花の盾】!」


 数秒の好機、花の形の盾目掛け、風を渦巻かせた刀を思い切り突き刺す。


「【風裂衝】!」


 本来突きの威力を増加させるだけの技が、盾と衝突することで【炸裂】を発動させる。

 アラクノフォビアの体内で、風の盾が爆ぜたことでダメージが連鎖した。

 外部に比べて内部は柔らかく、微々たるほどだったHPバーの減少も大幅に増えていた。

 レッドゾーンに突入しそのままHPが尽きるかと思いきや、あと数センチというところで減少が止まる。

 最後の力を振り絞り口が閉じられようとし、ユイは焦りに表情を歪めた。


(やられる……!)


 だが、そこはアリスの権能の間合いだ。


「【グリムアリア】!」


 アラクノフォビアが大きく身体を逸らした。


「決めてユイちゃん!」


 閉じかけた口に強引に手をねじ込み、爆ぜた風の刃で核を刻む。


「【風刃】!!」


 ねじ込んだ腕ごと風で刻む、文字通り最後の攻撃だ。

 核を破壊されたアラクノフォビアは悲痛な叫びを上げ、蜘蛛の身体を地につけた。

 周囲の糸と共に光の粒子が空に昇っていく。

 【魔物の住処】の隠しエリア、堂々の攻略であった。






「ぃやったー! 勝ったよユイちゃん!」

「私が……。あんなに強いモンスターを……」


 緊張から解き放たれ、震える手を見つめる。


「そうだよ! ユイちゃんが倒したんだよ!」


 アリスは歯を見せて笑うと、スッと両の手を挙げた。

 そういった文化は無い。

 今まで経験したことの無いもの。

 ユイは頭上に疑問符を浮かべながら、倣って両手をあげる。

 アリスは軽く、手と手を合わせてハイタッチした。


「楽しかったね!」

「……はいっ!」


 手の温もりと少女の純粋な笑みにようやく実感を覚え、ユイはゲームの楽しさに触れたのだった。

 アラクノフォビアが倒れた後、リザルトとして二人の前にウィンドウが表示された。




 《レベルが上がりました。Lv23→Lv24》

 《ドロップアイテムを取得しました》

 《ユニーク装備【化け蜘蛛の盾】を取得しました》

 《称号【始まりを思い返す者】を取得しました》

 《称号【新星の導き手】を取得しました》




「ユニーク装備! だけど盾か……。ちょっと使わないなぁ」



 【化け蜘蛛の盾】

 大盾

 MP+20 VIT+50

 レアリティ:S

 スキル

 【補食】……相手の攻撃を無効化し、本来のダメージ量を回復する。




「あ、でもスキルは強い。【大賢者】でいじろうっと。ユイちゃんの方はどうだった?」


 対して今回の主役、ユイの方は大量のアイテムを前に軽く狼狽していた。


「はい。レベルが上がって、他にも色々と入手したようです」




 《レベルが上がりました。Lv6→Lv12》

 《ドロップアイテムを取得しました》

 《ユニーク装備【白蜘蛛】シリーズを取得しました》

 《称号【始まりを知る者】を取得しました》

 《称号【白糸の紡ぎ手】を取得しました》

 《ユニークスキル【裁縫術】を習得しました》




「称号に装備に、ユニークスキルも!」

「私の方だけ何故こんなに……」

「ラストアタックのボーナス報酬だね」

「美味しいとこ取りをしただけなのに、申し訳ないです」


 いいのいいの、とアリスは頭を撫でた。


「いっぱい頑張ったもんね」

「アリス様……」


 手にした白織の装備が映えるほど、ユイは顔を真っ赤にした。


「ねっ、装備変えてみせて」

「は、はい! すぐに!」


 装備を整えるとアリスは、


「おー!」

 

 目をキラキラさせた。

 柄に鎖と蜘蛛の巣の意匠をつけた刀。

 肩と膝下を露出させた白い振り袖の装束は、各所の紅蓮の蜘蛛の巣の模様が走り妖艶さを漂わせている。


「い、如何でしょうか」


 丈の短さに慣れず、ユイはもじもじと裾を握った。


「すっごく可愛い! よく似合ってる!」

「あ、あまり見ないでください……」

 



 名前:ユイ

 Lv:12

 職業:剣士

 称号:【白糸の紡ぎ手:INT+70】

 HP:120/120

 MP:120/120

 STR:10

 VIT:10

 AGI:20

 DEX:10

 INT:50

 LUK:20

 装備

 【白蜘蛛の牙:刀:STR+10 INT+50:【眷属召喚】】

 【白蜘蛛の羽衣:胴体:VIT+20:【黄泉の風域】】

 【白蜘蛛の篭手:両手:DEX+10:【蜘蛛の糸】】

 【白蜘蛛の草履:両足:AGI+10:【綱渡り】】

 スキル

 【刀術】【鑑定】【毒耐性】【麻痺耐性】【炸裂】【風魔法】

 ユニークスキル

 【裁縫術】




「ユニークボスだと装備もシリーズでドロップすることがあるんだ」


 自分のときは出なかったけど、とアリスは若干不満気味。

 ドロップはLUKにも大きく関係してくる。

 実力のみで上にいこうという気概のアリスたちは、一律で幸運値を最低レベルに設定しているため、そういった弊害も生まれるのだ。


「あまりに分不相応ではないでしょうか……」


 装備を一新したことでステータスが大幅に上昇、更にスキルが大量に増え、スペックだけなら初心者の域を突出するに至った。


「ユイちゃんの力で手に入れたんだから、胸を張っていいと思うよ」

「私の力だなんて。全部アリス様のおかげです。ただの一ファンであるだけの私に、こんなに良くしてくれて……今日のことは、一生の思い出と致します。本当にありがとうございます、アリス様」


 面と向かって真正直に言われたので、照れくさくて後頭部に手を回した。


「あ、あの……差し出がましいのですが、記念に一枚撮ってもよろしいでしょうか」

「うん、もちろん!」


 アリスはココアとシズクとの距離感で、ユイに抱きつき頬を合わせた。

 気絶しそうなのを堪えスクリーンショットを起動させる。

 写真に写ったユイの表情は、緊張と歓喜で真っ赤になっていた。


「二人だけの思い出だね」


 サラッとこういうことを言うものだから、頭から湯気を昇らせてしまう。


「今日は楽しかったよ。また遊ぼうね」

「また……ですか?」

「うん。私たち、もう友だちでしょ?」

「友だち……」

「あれ、違った?」

「い、いいえ! 嬉しいです! 私も……アリス様と、友だちになりたいです!」


 夜空の星に負けないほど明るい笑顔で。

 二人はフレンド登録を交わした。

 フレンド欄にアリスの名前が増えたのを見て、ユイはまためいっぱい表情を輝かせた。


「今日はこれでログアウトしちゃうけど、またログインしてるのを見かけたら一緒に遊ぼう」

「よ、よろしくお願いします!」

「またね」


 手を振りながら、アリスは世界から去っていった。

 残されたユイはしばらくの間、夢見心地でその場で呆けた。

 憧れの人が、本気でドキドキした人が、つい先ほどまでそこにいて自分と会話し、自分のために長い時間を費やしてくれた。

 自分はあの瞬間、誰よりもアリスの近くに在ったのだと。

 そんな現実味の無い現実に放蕩した。


「アリス様……」


 胸の高鳴りが冷めやまない。

 再びアリスの隣に立つことを望みつつ、自分一人でも戦えるように腕をふるう磨いておこう決意した。

 その様子を暗い路地裏から眺める影が三つ。


「へえ」


 赤い眼を輝かせ、小さく舌舐めずりをする。


「いいオモチャ、見ーつけた」


 その少女は白織を身に着けたユイを、さながら飢えた獣のように見据えた。

 ご愛読感謝いたします。


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