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NEVER END ONLINE〜少女、終わりなき世界の攻略者〜  作者: 無色


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13/40

13.覚悟

 数日が過ぎ、一週間が過ぎ、アリスは変わらず悩み続けた。

 勉強しているときも、お風呂に浸かっているときも、頭の片隅に浮かび上がるプロの二文字。

 別段断る理由があるわけではない。

 ゲーム以外に頑張っている何かがあるわけでも。

 ただゲームが好きなだけで、一番になりたいという理由だけで、プロという世界に足を踏み入れていいのかと。

 踏ん切りをつけれずにいたのだ。


「いただきます」

「はいパパ、あーん」

「あーん。んー、今日もおいしいよママ」


 夜、父と母と揃って食事。

 仲睦まじい……睦まじすぎる光景を目にしながら、アリスは、ねえ、と話を始めた。


「あの……お父さん、お母さん。私が、プロゲーマーになりたいって言ったら、どうする?」

「プロゲーマー? あらぁ、いいじゃない。アリスちゃんはゲーム上手だもの。ねえパパ」

「うん。夢があっていい。パパも昔は憧れたなあ」


 思った以上にすんなり賛成され、キョトンとしてしまう。


「ほ、本当にいいの? ちゃんとした仕事じゃないかもしれないんだよ?」

「昔ならとやかく言う人も多かっただろうけど、時代だからね。それにお金を稼ぐのならなんだってちゃんとした仕事さ。やってみたいことならやってみればいい。プロっていうのは大変な世界なんだろうけど、たとえそれで失敗しても、パパとママがカバーするさ」

「そうよ。いっぱい挑戦して、いっぱい失敗して、それでも楽しいと思えることをするのが、正しい選択よ。アリスちゃんがプロになりたいのなら、私たちは精一杯応援するわ」

「…………あのね、じつは」


 アリスは前日あったこと、自分がProject Stormの代表に声を掛けられていることを両親に伝えた。


「まあ、すごいじゃない! そんな大きな会社からスカウトされるなんて! さすが私たちの子だわ!」

「自慢の娘だ! パパ嬉しい! んーまっ、んーまっ!」


 横から抱きつかれて頬にキスされた。


「アリスちゃん有名になっちゃうわね。モテモテになっちゃったらどうしましょう」

「いや、そうじゃなくて……」

「なんだと?! 世界中の男が邪な目で見るの?! じゃあダメだ! パパ許さないぞ! ああでもアリスちゃんがやりたいことならなぁ」

「あの……」

「頑張って、アリスちゃん!」

「有名になってもパパとママのことは忘れないでねぇ!」


 とにかく賛成してくれてはいるようで安心はしたものの、あまりに呆気なく了解を取れたことに肩透かしをくらい、依然として気持ちを固めきれなかった。







 気晴らしにと、久しぶりにログインすることにした。

 未だ【不思議の国のアリス】の話題で持ちきりなため、一人コッソリと高い山の上へ。

 誰も居ないところで景色でも眺めようと足を運んだのだが、すでに先客が一人。


「!」


 黒いコートをたなびかせ、勇ましくも流麗にモンスターを屠っていく女性。

 狼の頭を蹴り砕き、虎の身体を一刀両断し光の粒子へと変える。

 バトルを終えドロップアイテムを回収し終わったところで、その人物はアリスに気付いた。


「お、アリスじゃん。久しぶり」

「レイさん!」


 黒いコートを靡かせ、黒の剣士レイはヒラヒラと手を振った。


「こんなとこで奇遇だね。もっと連絡誘してよ」

「アハハ。レイさんは素材集めですか?」

「暇つぶし。アリスは?」

「私は……」


 なんとなく、この人になら相談出来るとアリスはそう思い、


「ちょっと、悩みというか。聴いてもらってもいいですか」


 腰を下ろして話を始めた。

 詳細は省き、自分たちがプロに勧誘されたことを。

 どうするべきかを。


「ふーん、プロねえ。いいんじゃない? なれば?」


 レイは驚くほど軽薄に言い切った。


「そんな簡単に」

「だってその人、アリスを見込んで頼んだわけでしょ。魅力を感じない人をプロに誘ったりしない。ならいいじゃん。なっちゃえなっちゃえ」

「でも、私は……」

「やりたくないわけじゃないんでしょ?」

「それは、まあ」


 レイは腰の剣の柄に手を添えて訊ねた。


「アリスは、プロってなんだと思う?」

「プロ……」

「ゲームじゃなくても、野球でもサッカーでもいいや」

「人より上手くて、それでお金を稼げる人、ですか?」


 違う、レイは即答する。


「他人がうんざりするくらい自分の好きなことを誇れて、人生の全てを賭けることを厭わない人。その世界で生きると決意した人。その覚悟がある人だけがプロを名乗っていい。プロの世界は、そんな本物がゴロゴロしてる。努力と才能を高い次元まで昇華させた、化け物みたいな人たちが」

「人生を賭ける……」

「夢のため、友だちのため、それも立派だけど所詮は建前だよ。自分が最強であることを証明するっていう純粋な自尊。逆にそれを口に出来ない人は、プロを名乗る資格なんて無い。やりたいからやる。自分を奮い立たせるのに、それ以上の理由が無いのと同じでね」


 言われて、心が奮えたのがわかった。


「そっか……」

 

 それでもいいんだと。

 肩に伸し掛かっていたものが消え、身体が軽くなったのがわかった。

 胸の奥が熱くなって、たまらず立ち上がった。


「ありがとうございますレイさん! 私、行ってきます!」


 火がついたように目をキラキラさせて、アリスはすぐにログアウトした。

 残されたレイは、


「プロね……」


 アリスと同じく、心を奮わせた。


「おもしろすぎでしょ、志郎のやつ」







 ログアウトしてすぐ、アリスは二人に電話をかけ、今から会えないかと持ちかけた。

 時刻は夜の九時を過ぎた頃。

 飛び出すように家を出て、待ち合わせに指定した駅前の公園を目指す。

 到着後すぐ、心愛と雫はやって来た。

 汗だくになって息を切らすアリスに、二人は惑いながら近付いた。


「アリスさん?」

「どしたこんな時間に」

「はぁ、はぁ……」


 息を整え、膝から手を離して心愛と雫に思いの丈をぶつける。


「私……なるよ。なりたい。プロに。みんなで。二人と一緒に」


 聴いて、表情を明るくするのと同じく、無理に付き合わせているのではないかという不安にも駆られる。

 しかし、アリスは決意していた。


「二人みたいに人生を賭けてるわけじゃないし、まだ漠然としてる。一番強くなりたいとか、そんなことしか考えてないけど…で……も、好きだから! 二人といるのも、ゲームするのも! プロになったら、もっと広い世界を見られる気がする! だから!」


 握った拳を前に出す。


「心愛ちゃん! 雫ちゃん! 私と一緒に、世界の果てを見に行ってください!」


 炎のように熱く。

 力強く。


「……ニシシ、出逢ったときとおんなじだ」

「ひたむきなその眼に惹かれたんですよね。私たちに手を伸ばしてくれた優しく、強い姿。だから私たちはアリスさんが好きなんです」


 二人は顔を見合わせて頷き、拳を合わせる。


「ここはゴールじゃなく道すがら。降って湧いたただの幸運に甘んじるだけです。それでも」

「あたしらは止まんない。最初からずっと、目指してるのは一つだけだし」

「行きましょう、アリスさん」

「行こうぜ、アリス」

「うんっ! 世界の果てを目指して! We are!!」

「「「Alice in WonderLand!!!」」」


 この日、このときの決意が、彼女たちを運命を決めた。

 そして、覚悟と意思を持つ者だけが越えられる境界線。

 プロの世界へと足を踏み入れた。

 名前:アリス

 Lv:20

 職業:剣士

 称号:【死霊の(あるじ):MP+50 INT+30】

 HP:200/200

 MP:200/200

 STR:30

 VIT:10

 AGI:120

 DEX:20

 INT:15

 LUK:5

 装備

 【死と祝福の剣:片手剣/ロングソード:MP+40 STR+20:【デッドリーイノセンス】【形状変化】】

 【屍龍の外套:胴体:VIT+10:【瘴気耐性】】

 【屍龍の手袋:両手:DEX+10:【奇襲】】

 【屍龍のブーツ:両足:AGI+10:【隠密】】

 スキル

 【二刀流】【鑑定】【毒耐性】【麻痺耐性】【整息】【魔法剣】

 ユニークスキル

 【纏魔】

 アドミニストレートスキル

 【大賢者】




 名前:ココア

 Lv:23

 職業:戦士

 称号:【大物食い(ジャイアントキリング):STR+60】

 HP:230/230

 MP:230/230

 STR:90

 VIT:70

 AGI:30

 DEX:10

 INT:25

 LUK:5

 装備

 【デスサイズ:斧/大鎌:STR+50:【腐蝕】】

 【屍龍の外套:胴体:VIT+10:【瘴気耐性】】

 【屍龍の手袋:両手:DEX+10:【奇襲】】

 【屍龍のブーツ:両足:AGI+10:【隠密】】

 スキル

 【斧術】【格闘術】【鑑定】【毒耐性】【麻痺耐性】【軽業】【底力】【破邪】【誠心】

 ユニークスキル

 【超速再生】




 名前:シズク

 Lv:23

 職業:狙撃手

 称号:【魔弾の射手:STR+20 DEX+20 INT+20】

 HP:230/230

 MP:230/230

 STR:70

 VIT:40

 AGI:10

 DEX:35

 INT:70

 LUK:5

 装備

 【サクリファイス:銃/スナイパーライフル:STR+50:【劇毒】】

 【屍龍の外套:胴体:VIT+10:【瘴気耐性】】

 【屍龍の手袋:両手:DEX+10:【奇襲】】

 【屍龍のブーツ:両足:AGI+10:【隠密】】

 スキル

 【射撃術】【格闘術】【鑑定】【毒耐性】【麻痺耐性】【魔弾】【調合術】【爆弾魔】【鷹の目】

 ユニークスキル

 【武器庫(アーセナル)

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