本能 -止まらぬ崩壊-⑨
《やはり駄目か・・・・・》
様々な人間を蘇らせ、それらに力と命令を与えていたア=レイは半分は興味本位で、半分はヴァッツを引きずり出せればと考えていたのだが1つ、またも彼の興味を引く出来事があったらしい。
ア=レイが誰もいない自室でそのような声を漏らすと、ナジュナメジナも紅茶の味を十分に堪能してから尋ねてみる。
《何だア=レイ?また私のあずかり知らぬ所で悪さをしているのか?》
《おいおい、言いがかりはよしてくれ。私はただ私の興味を優先しているだけだ。これは未来永劫変わらないさ。》
そもそも善悪という主観による勝手な決めつけなどア=レイにとって微塵も興味がなく、相手を貶す為だけの悪口程度にしか捉えていない。
《実はクンシェオルトとメイに私の命令が届かなくてね。いや~、アンは上手く動いてくれるんだけど、ナジュナメジナから見て何か原因に思い当たりは無いか?》
なので悪さと言う言葉を聞き流した後、こちらに素朴な質問を投げかけてくるとナジュナメジナはまだ驚かされるのか、と感心しながらその内容に耳を傾ける。
《待て待てア=レイ。まさかそんな素直に悪巧みの内容を教えてくれるとは思わなかった。もう少し順序だてて説明してくれ。》
彼は無意識だった。無意識に自身の力が及ばない状況を素直に相談しているだけだった。
だがその内容は相変わらず破格のものだ。いや、人を操るだけなら確か『天族』にも可能だったはずだが、彼はそれらに該当しないのをナジュナメジナは知っている。
《うむ。実はヴァッツの意識が何処かに隠れてるんじゃないかと思ってね。それを引っ張り出す為に奴と深い関りを持つ者達を消してみたんだけど全く現れる気配がないんだよ。》
《・・・それはザジウスとかいう奴に『天界』を荒らすよう唆したのも関係しているのか?》
《ああ。私も人間関係というものを多少は学んだつもりさ。だからいきなり最も近しい人物より、その周辺から潰そうと考えたんだが実際はクレイスを殺しても何も起こらなかった。もしかしてあいつは私が思っている以上に薄情な性格なのかな?》
少なくとも今の会話だけ聞くとア=レイの方がよっぽど薄情だという結論になりそうだが実際の所は2人を比べてみないとわからない。
破格の力だけでなく、懐の深さから沢山の友人や仲間に囲まれていたヴァッツと、体を奪ったナジュナメジナにしか話し相手のいないア=レイを見て、人はどちらが情に厚いと判断するのだろう。
《・・・だとすると、ヴァッツは本当に消えてしまったのではないか?》
《いいや、それはない。私にもよくわからないのだが何故か奴の力だけは感じるんだ。あれ?・・・力だけ感じるのもおかしな話だな?》
《・・・いや、おかしくはないぞ?むしろヴァッツが何処かからお前の邪魔をしているんだろう。だからクンシェオルトやメイを従わす事が出来ない。違うか?》
《う~~む・・・お前にしては中々の指摘だ。ただ私より遥かに弱いあいつが邪魔など出来るものなのかな?》
《・・・前から気になっていたんだが、お前は自分を過大評価し過ぎではないか?》
《何?》
これは今に始まった事ではないし、実際ナジュナメジナは5年以上も体を奪われているのだからその力は相当なものなのだろう。
しかし油断大敵や足元をすくわれるという言葉があるように、自らを過信し過ぎて何かを見失うという事は往々にしてよくある事なのだ。
《ヴァッツがお前の息子であり、お前から見てまだまだ矮小な存在だという理屈もわかる。だが私から見れば奴は破格と呼ばれるに十分な動きを見せてきた。少なくとも彼に敵う存在はいないと思わせる程に。》
《・・・・・》
ナジュナメジナが素直な意見を述べると珍しくア=レイは黙り込んでしまう。それが少し意外ではあったものの、これで見ててはらはらするわきの甘さを少しでも改善してくれれば、と思わずにはいられなかった。
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