本能 -止まらぬ崩壊-⑦
様々な出来事が起こっていたものの、東の大陸には『トリスト』という抑止力が働いていた為、混乱は控えめだったが西は別だ。
「ビャクトル王が復位してすぐに西の『ラムハット』を滅ぼしたらしい。『フォンディーナ』はクスィーヴとの関係があるからしばらくは保つだろうけど、私達もうかうかしてられないよ。」
「むぅ・・・これもア=レイの仕業となると・・・メラーヴィ様、もし奴らが少しでも妙な動きを見せた場合、わしが直接ビャクトル王の首を落として参ります。」
こちらの大陸で猛者と呼べる者は少なく、まともに対応出来る手段も限られていた。
なのでメラーヴィもワーディライの屋敷でその話をしていたのだが、ここには問題児達も数多く在籍している。
「ほう?蘇った王か・・・面白い。我の宝剣『ア=セイフォン』を返すのであれば始末して来てやってもよいぞ?」
「お~!だったら俺の雷槍も返してくれ!ついでに鉄騎も返してくれれば今日中にでも討ち取ってきてやるぜ?!」
「それは勇ましいのう。だがあれらは『トリスト』が管理しておる。まぁ戻ってくることはないじゃろう。」
ワーディライも彼らの振る舞いにすっかり馴染んでしまったせいか、怒る事無く軽く聞き流してあしらうが、捕虜を最前線に送って矢面に立たせるという方法は古来からある。
であれば今後、本当に戦力が必要になった場合は『トリスト』に掛け合って彼らの武具を返還すべきか。いや、狂犬を野に放てば余計に戦況が混乱するか?
「あ~な~た~た~ち~?本っ当に捕虜の自覚に欠けてるわね?それとも、人間って皆これくらいの頭しか持ち合わせていないのかしら?」
そんな中、イラが真っ当な苦言を呈した事で室内はほっこりした雰囲気で満たされる。
最初こそ『神族』という事で相当警戒していたが、生来素直な性格なのだろう。彼女だけは捕虜の域を超えて様々な仕事を手伝ってくれるお陰で、今ではワーディライもその声を聞くと無条件で頬が緩んでしまう。
「ほっほっほ。しかしア=レイの魔手がこの地に届かないとも限らない。ア=ディラファとダム=ヴァーヴァの武具に関しては『トリスト』と掛け合っておくよ。」
「流石だメラーヴィ。聡明だと認めてやろう。」
そしてア=ディラファが不遜な発言をかぶせてくれるお陰で心は平静に戻るのだ。
「あまり動く事は出来ませんが、この土地には『腑を喰らいし者』もおりますからな。護りに関しては多少持ちこたえられるかと。」
『ダブラム』の北方には牛サソリが生息する砂漠に『フォンディーナ』もある。
ビャクトルがどの程度ア=レイに操られているのか定かではないが、もしこちらへ侵攻してくる場合は事前に何かしらの情報が入ってくるだろう。
「だね。ま、今は出来る所から備えていこう。」
『ダブラム』と『ジョーロン』は砂漠を挟んでいる為、侵攻する労力とその後の運営を考えると利は無きに等しいが、ア=レイ自身が何を企んでいるのか予測が付かないので油断は出来ない。
だが右腕を失い、荒れ狂っていたワーディライを拾ってくれた恩人であるメラーヴィだけは何が何でも護り通さねば。
もう50年近く胸に刻んだ決意を新たに会議は静かに幕を閉じると翌日、ア=ディラファとダム=ヴァーヴァの武具返還について『トリスト』から意外な使者が送られてきた。
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