本能 -止まらぬ崩壊-④
まさかまた意中の人を諦めなければならないのか。また別の誰かに取られてしまうのか。
過去に想いを寄せていたシャルアの時と同じような状況を受けて、シーヴァルの顔色はみるみる悪くなっていくが彼女達は全く気にすることなく話を続ける。
「ユリアン様、その、1つ気になった事があるのですが・・・」
「ほう。何だ?私は今とても気分が良いのでな。何でも答えてやろう。」
もしかすると最も場違いなのは自分なのかもしれない。だったら静かにこの場を去ろうか。
カーディアンの無警戒な様子も相まって、いよいよ心が折れたシーヴァルは、手にしていた長剣を握る力すらなくなるのを感じていると話は妙な方向へ進み始める。
「はい。ユリアン様、貴方はつい先程『神の啓示を受けて』と仰いました。ユリアン様こそが神なのではありませんか?」
「む?そうだ。確かに私こそが神で間違いない。」
「では貴方はどうやって再誕されたのですか?自らの御力ですか?それとも・・・」
「・・・・・貴様、何が言いたい?」
普段はこれほどはきはき喋らないというのもあるが、その内容と態度から強い違和感を覚えたのは間違いない。
ユリアンが明確に不機嫌さを現したのでシーヴァルも慌てて警戒心を取り戻す中、カーディアンだけはさも当然と言った様子で更に言葉を続けた。
「はい。貴方は確かにユリアン様ですが、私が愛し、求めたユリアン様ではなくなられました。そのようなお姿になられて一体何をなさるおつもりですか?」
まずい。
己の感情はさておき、相手を確実に逆撫ですると瞬時に察したシーヴァルは全力で彼女の体に腕を回して後方へ飛ぶと最大限の警戒態勢に入る。
もしかすると自分もクレイスやイルフォシアのようにこの場で散ってしまうかもしれない。だがそれでもカーディアンだけは絶対に護り通さねばと覚悟を決めるが何故かユリアンの怒りは既に霧散していた。
一体何がどうなっているのか。よくわからないまま彼女を抱きしめる腕に力を入れていると彼は静かに尋ね始める。
「・・・お前にはわかるのか?私が私でなくなっている事が。」
「はい。貴方は私に命を授けて下さったのですよ?その魂は未だ私の胸で生き続けているのですからよくわかります。」
それは彼女の胸にある大きな傷跡の事を言っているのだろう。正直あまりにも突飛な内容だった為あまり信じていなかったが、2人の様子からそれが真実なのだとやっと理解出来た。
「ふむ・・・流石は最後の信者だ。その言葉には重みがあるな。」
だかこの場面でユリアンが退く意味まではわからない。最初の発言通り、てっきりカーディアンを連れて行くものかと思っていたがどういった心境の変化だ?
「シーヴァルと言ったな。カーディアンを死ぬまで護れ。」
「えっ?!は、はいっす!」
「ユ、ユリアン様?!どちらへ向かわれるのですか?」
突然の命令にシーヴァルも慌てながら力強く返事をすると、彼女は別の不安から慌てて引き留めようとする。
「私にはやらねばならぬ事があるのでな。」
しかしア=レイによって蘇った者達が、必ず何かしらの命令が下っているなど知る由もない。
そしてわざわざそれを説明するつもりもないのだろう。ユリアンは最後に優しい笑みを浮かべると厳かな雰囲気を纏ったまま静かに家を出て行ってしまった。
いつもご愛読いただきありがとうございます。
本作品への質問、誤字などございましたらお気軽にご連絡下さい。
あと登場人物を描いて上げたりしています。
よろしければ一度覗いてみて下さい。↓(´・ω・`)
https://twitter.com/@yoshioka_garyu




