本能 -止まらぬ崩壊-③
『リングストン』国内はともかく、国王が代わり、アンが補佐をすることで周辺国は相当な安堵を覚えていた。
「・・・シーヴァルは大丈夫?変な敵と遭遇したりしてない?」
「うん?いきなりどうしたの?」
それは『ボラムス』も例外ではない。
北の国境線を任されていたシーヴァルも家で休める事が増え、今夜も愛しい妻と楽しいひと時を過ごしていたのだが突然そのような話が持ち上がったので目を丸くする。
「・・・だってクレイスやイルフォシアが殺されたんでしょ?ア=レイとかいう奴の仕業で。」
「クレイス『様』とイルフォシア『様』ね。まぁ・・・あのお二人が誰かに負けるなんて想像つかないけどね。うん?」
普段は本当に素っ気ない分、こうやって時折気にかけてくれる事がとても嬉しいのだが今回ばかりはその内容が気になった。
「もし妙な人が現れたら戦わずに逃げるのよ?あなた、無茶しそうだし・・・」
「大丈夫だよ。無駄に命を懸けるような真似はしないさ。それにア=レイの放った刺客ってクレイス様にイルフォシア様、スラヴォフィル様と高位な方々ばかりだよ?俺の所にくるとはとても思えな・・・」
「待たせたな。迎えに来たぞ、カーディアン。」
そう。まさか自分が狙われるなど考えもしなかったが当然だ。何故ならア=レイはヴァッツの大切な者達を傷つける事で息子の心をおびき出そうと企んでいるのだから。
「ユ、ユリアン様・・・?!」
だが今は目に見えない事情などどうでもよい。
もしカーディアンが呟いた通り、突然我が家に入って来た短い金髪の男が5年近くも前に屠られたユリアン本人であるのなら、今回は彼女が狙われたという事になる。
であれば夫として、まずは妻をしっかり護り通す事こそが最優先だ。
「なんスか?!人の家に勝手に入り込んできて?!」
正体の真偽はともかく不法侵入者に違いはない。シーヴァルはまず棚に立てかけられていた長剣を素早く掴んで刀身を抜くと、カーディアンを護るように立ち塞がった。
「おっと、頭の悪い人間には理解が追い付かないか。私はユリアン。神の啓示を受けて今一度、この世に舞い降りたのだ。さぁ私の敬虔なる信者よ。今度こそ世界に安寧をもたらそう。」
ところがこちらの警戒とは裏腹に、ユリアンが敵意も殺意も見せずにそう告げてきたので一瞬唖然としてしまった。
ア=レイも無理に誰かを殺す為だけに蘇らせてる訳ではないのか。
それがわかっただけでも相当な収穫だったが、カーディアンに関する問題は残ったままだ。
(まさか今更『ユリアン教』に戻ったりはしないよな?)
確かに彼女は昔『ユリアン教』に嵌っていたがそれも過去の話だと思っていた。今となっては改心し、自分の妻として共に人生を歩めると信じていた。
「シーヴァル・・・この御方は間違いなくユリアン様ご本人なの。だから・・・その剣を納めて?」
なのに彼女はユリアンを気遣うような発言をしてしまった。
これによりシーヴァルの脳裏にはかつての苦々しい記憶が鮮明に蘇ってしまうのだった。
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