本能 -黒百合の花-⑥
あれから数日が経つと彼が他の女の子達とも関係を持ったのがよくわかった。
というのもリリーなどはずっと頬を赤らめて夢見心地といった様子を必死で隠そうと取り繕っているのがあからさま過ぎたからだ。
「全く!!あいつってば最悪ね!!そう思わない?!」
そしてハルカもまた別の意味でわかりやすい。というか何故彼女は怒っているのだろう?
気になるが尋ねると自分にも被害が及びそうで怖い気もする。だが今回は話を振られたので仕方なく聞き手に回る事にした。
「あの・・・あいつ、というのは?」
「ヴァッツに決まってるでしょ?!おっと、レドラ様とクンシェオルト様は少し席を外してくださる?」
どうやら嫌な予感は的中しそうだ。そもそもここはヴァッツの部屋なのにその執事と従者が追い出される云われはない。ただ彼らも何かを察したのだろう。静かに隣の部屋へ移動すると、ハルカは声を潜めてその理由を語り始める。
「時雨もあいつに抱かれたんでしょ?」
「ぇひぇっ?!そ、そそ、そんな事はありません、よ?」
「いいわよ隠さなくても。あなた表に出やすいんだから。」
リリー達を温かい目で見ている場合ではないらしい。だがハルカには事あるごとに見抜かれているので今更か、といった諦めもつくと自身も小声で答え始める。
「・・・私はヴァッツ様に不満など1つもありませんでしたよ?」
「ほっほう?じゃああいつの初めてがイェ=イレィだったとしても?」
・・・・・
「・・・・・はい?」
おかしい。自身の記憶では恐らく時雨が初めてだった筈だ。
だがこれは大きな勘違いで、時雨の初めてをヴァッツに捧げた図式は成立するものの、ヴァッツがそれ以前に他と関係をもっている可能性は十二分にあったのだ。
だから余計に驚愕を覚えた。
何故なら彼がそういった行為に興味を持っている素振りは全く見せなかったし、何よりそれを満たす許嫁が周囲に4人もいるのに、まさか全く無関係の異性とそういった情事に及ぶとは想像出来る筈もなかったからだ。
「・・・ハルカ。どこから得た虚報かはわかりませんが被害妄想はよろしくありません。ヴァッツ様にも失礼ですよ?」
やっと求めて貰えたというのにこれ程耳に入れたくない情報も事実ない。
彼の初めては自分だとばかり思っていた時雨は、それ以上考えたくないという理由から一先ずいつも通りに自分らしい答えを返すが、ハルカは目を丸くした後、見せつけるようにわざとらしいため息をつく。
「はぁ・・・まぁいいけどね。でもおかしいって思わなかった?あいつから触られるとそれだけで感じちゃうって言うか・・・」
「・・・それは貴女もヴァッツ様を愛おしく思っているからでは?」
「・・・・・」
嫌いな相手から触られても決して快感を覚える事はない。それはあまり知識のない時雨でも本能から理解出来る。だから彼を想う異性であれば触れ合う事で感じるのも当然だという理論に行き着いた訳だが、この時ハルカも初めてその思考に辿り着いたらしい。
先程までの怒りは鳴りを潜めるとリリーが見せた時以上に顔を真っ赤にして黙り込んでしまったのだから、その可愛らしい姿に思わず笑みも零れるというものだ。
「と、とにかく!!あいつはイェ=イレィと関係を持ってたから色々知ってたそうなのよ!!全く!!そういうのは私と探っていくべきでしょ?!」
その意見には多少同意するところはある。これからも求めて貰えるのであれば、出来れば許嫁の立場にいる誰かと知識も関係も深めて欲しいものだ。
「・・・ところで何故イェ=イレィ様とそのような仲に?まさか彼女も・・・」
「その話、詳しく聞かせて貰えるかしら?」
ところがおしゃべりに集中し過ぎていたらしい。ハルカでさえ気配に気が付かず、2人はやってしまったといった表情を浮かべながら顔を向けると、そこには鬼のような形相を浮かべるハーラーが腕を組んで仁王立ちしていた。
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