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45、束の間の平穏の後に

 年も暮れに近づくとキラー減少により被害者の人数が激減していった。


先進国ではキラーが地上で行動をしている事に着目しドローンでの空中移動を主な移動手段となっていたり、人間の歩く歩行空間が主に地下に作られる等対策が進んでいった。


日本国内では一条の研究成果によりマツダのDNAを仕込んだリストバンドを流通させ、キラーからの襲撃を回避する対策が進んでいた。


これにはマツダも参加しており、以前大塚が使って命を繋ぐ事が出来た<魔剣>に由来するもので、一瞬で命を奪われる事が激減している。


これにより義手の製造技術が驚異的なスピードで進化しマツダが使用している軍用に近いものまで作られるようになった。


動画配信サイトでマツダの義手を見た金持ちが同じ義手を付けられるよう軍に依頼を出す者もいたが、義手着用後は軍務に付かなければなず、副業を一切行えない為、超高額なお金を払ってまで軍に従事する者は現れなかった。


マツダも部屋出る機会を今まで以上に減らし、大塚との訓練も行わず、怒りを発生させないよう生活を行っている。


もちろんキラーが近くに発生した時はマツダも出動する予定となっているがここ最近では近場にキラーが発生する事が無い。


被害は出るものの束の間の平和を人々は楽しんでしいた。


だが、いつの時代にもいるように悪知恵を働かせてお金を稼ぐものも多い。


収入が少なくお金に困った人からキラー対策の腕輪を高額で買取り、さらに数倍の金額で金持ちに転売を行うものも多く現れた。


生産には時間がかかり、全ての国民に配布出来るには程遠い為再配布を行えず、キラーによって命を失うものも多かった。


中には能天気な金持ちが両手両腕に腕輪を装着しキラー討伐を試みた者もいたが逆に全ての手、足先を失う惨劇が生まれている。


幸い命を失っていないものの、本来片手だけで済んでいた所を全ての四肢を欠損してしまう事態に陥ってしまった。


動画配信サイトでは前回のマツダの姿を映した動画が横行し、テレビのニュースでもマツダによる次のキラー討伐を催促する内容が多く流れた。


中にはキラーの被害を放置している犯罪者だと批判するコメンテーターも出てきている。


もちろんメディアに触れていないマツダの目に留まる事はないが目に留まる事があれば再びキラーが活性化することは防げないだろう。


これには海外のメディアからも注目を集め、米軍からはマツダの身柄を引き渡すよう要請が相次いだ。


赤石もその対応に追われているが、日本国内のキラー対策用腕輪の配布が落ち着いたら海外にも培養したDNAサンプルを引き渡すという条件を出して何とか凌いでいる状況だった。


メディアではキラー対策用腕輪の日本独占は不当だとして軍事侵攻による強制的奪取も検討されているとの報道もあるほどだ。


特にアジアの大陸からはスパイを送り込まれ、腕輪を付けていた腕ごと何者かによって切り取られたという被害が相次ぎ国家間の緊張も高まっている。


キラーの被害が落ち着いたというのに今度は人同士の被害が多発してしまっているのだ。


キラー討伐軍も本来の業務の他にキラー絡みで起きた国家間犯罪の火消しの対応も増え業務は多忙を極めていた。


日によっては海外のスパイが基地を襲撃することもあり、基地内は常に緊張に包まれている。


マツダは次の一条の妊娠を確認出来次第次のキラー討伐に向けた動きをしようと考えているが、一条が疲れ果てて帰ってくると食事も摂らずにソファーで寝る日々が続いていた為次の行動に移せずにいる。



 何も進展がないまま桜の花が咲き始めた頃事態は急速に動き出す。


マツダのマンションにどこかの国の軍隊が攻め込んできた。


マツダがキッチンで朝食の用意をしていると寝室からガラスの割れる音がする。


慌てて寝室に向かうと一条が後ろから首に腕を回された状態で捕まっており、兵隊風の装備をした者が四人こちらに火器を向けている。


昨日は一条が久々に早く仕事を切り上げられた為今日は裸のまま寝ていた。


毛布を巻かれる事も無く無造作に捕まえられた一条の姿を見て怒りに顔を震わせた。


「その子を放せ」


怒りに震えた声を絞り出し警告をする。


「この女を殺されたくなければ我々に同行してもらウ。表へ出ロ」


語尾が籠った話し方をする。


恐らく外国の部隊だろう。


マツダは怒りで動けずにいる。


「怒っていい」


そう言って一条は首を押さえられた状態で暴れ出した。


「黙っていロ!」


すると一番近くにいた兵隊が一条の頬を殴った。


マツダの怒りが殺意に変わった時、目の前にキラーが現れ一条を殴った兵隊を真っ二つに千切り他の兵隊に投げつける。


人並外れた力で投げ飛ばされた肉塊は火器を構えた兵士をボウリングのピンの様になぎ倒す。


一条を捕らえていた兵士も片手に持った火器を使ってキラーに射撃するが当たる気配はなく壁に多数の穴が空く。


「After all he is,,,」


無線で何か言おうとしたところで兵士の頭が水風船が割れた様に破裂し、一条を抱えたままベッドに倒れる。


「一子!」


怒りで我を忘れていたマツダは一条の倒れる姿を見て我に返り頭の無い兵士から引き剝がし、毛布で包んだ。


しかし、目の前にはまだキラーがいる。


案の定マツダと対峙している時は動きは遅い。


マツダは一条を抱き抱えるとリビングに向かって走り、キッチンの陰に一条を避難させる。


「ここでやる!」


マツダの決意に一条も黙って頷いた。


「後は頼んだ!」


そう言ってマツダが寝室から出てきたキラーに立ち向かう。


今までこんな至近距離で対峙したことが無いがやはりキラー攻撃を仕掛ける様子はない。


先程の怒りで多くアドレナリンを分泌していたせいでマツダは肩で呼吸をしている。


「お前は何者だ」


立ち止まって問いかけるが返事はない。


ただ、腕が届くかどうかの距離で立ち止まり動かなくなった。


「今日は助かったが、消えてもらう」


そう言って戦闘態勢を取り大きく拳を引くと力いっぱいキラーに打ち込んだ。


デパートの時と同じくリビングの大型テレビもろとも壁を吹き飛ばしキラーの上半身を消滅させる。


そして通例の儀式かのように右足の付け根から血飛沫が上がり足とマツダが別々の方向に倒れる。


だが、今までのように叫び声は上がらず悶絶の唸りが漏れる。


そして


「一条さん、無事ですか?」


絞り出すように一条の安否を確認した。


「マツダさん!」


一条は毛布を投げ捨てマツダに駆け寄る。


「私は無事です!それよりも、足の状態が危険ですよ!」


一条が足の断面から勢いよく血を放出し続ける足に目を向ける。


「痛いのはわかっていたので何とか耐えられそうです」


マツダは苦しそうな声を絞り出している。


「マツダさん、堪えている所悪いのですが、気絶してもらわなきゃ手術が成功しません、どうにかして気絶してもらえませんか」


「わかった、じゃあ殴って、映画みたいに」


「無理ですよ!あんなやりかたじゃあ死んでしまいますよ!」


一条は慌てた様子で周りを見渡し何かを探しているようだがやがて


「ごめんなさい!」


そう言って鼻をつまみながらキスをした。


キスをすると言っても口全体を覆うような形で。


少ししてマツダは一条の頭を抱き抱えるように意識を失った。


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