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名前を失う異世界物語  作者: きなこもち
1章・生存競争
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訪れないエピローグ

目覚めると、ベッドの上にいた。

どうやら僕は、本を開いた後眠ってしまっていたようだ。重たい本が腹の上に乗っている。

「ご飯よ、降りてきなさい。」

母の声が聞こえる。僕は学ランからジャージに着替え、本を机の上に置き、僕を呼ぶ声に従いリビングへ降りる。


夕飯を食べて戻ったが、まだ頭から離れない。

僕にしては、行き過ぎた活躍だった。普段の自分からは考えられないほど動き、成功していた。

そして何より、彼女達は僕を信頼してくれた。

だから僕は、夢であったとわかっていながらも、その生存を確認したかった。

明日は学校だ。夜更かしは大敵だが、加藤や塩谷がいる学校なんかよりそちらの方が余程大事に思えた。

何とかして確認する方法はないか。

また本を開けば、夢の続きが待っているだろうか。

だが本を開くことでまた危機に晒されるかもしれない。

あの時僕は確かに死んだはずだ。

だが僕はこうしてここに生きている。食事もできて、声も出せる。

何より今は自分の名前を思(・)い(・)出(・)せ(・)る(・)。

ということはやはり、夢だったのだろう。

なら、続きも全て夢であるなら、もう一度ぐらい。

そう思って、僕は再び本を開いた。


そこには、朱い珠を持った、赤い髪の美しい少女の姿が、確かにあった。

本当に、息を呑むような美しさだった。

僕は安心した。彼女は、助かったんだと。

だが同時に、その下の『─1─』という数字が気になった。

ページ数の表示なのだろうが、そこから先のページにはその表示どころか何も書いていないのだ。

訝しみながらページをめくり、戻し、めくり、戻し。

何回か繰り返した。

「当たり前じゃないですカ☆まだ貴方自身が歩んでいない場所の記録が、貴方に視(み)えるワケがないのデス☆」

突然、本から発せられたその声と同時に、ページが強制的にめくられる。

そこには『─2─』というページ表示。

そして驚くべきことに、誰も手を触れていないのに勝手に僕の名前が刻まれていく。

そして僕は、それを読むことができなくなっていった─

「─やめろ...やめろ!」

「申し訳ありまセン☆まだアタシの目的は、終わっていないのデス☆

ちょっと1つじゃ足りなくテ☆貴方にはあと何回か、付き合ってもらいマス☆」

あまりのことに何も考えられず、僕の視界は、真白く包まれていった─

当然のことながら、夢オチではありません笑

1章はここで終わりですが、物語はまだまだ続きます。

とりあえず次の2章の終了までは、このままの更新ペースでいこうと思います。

これからも『名前を失う異世界物語』を、よろしくお願いします!

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