訪れないエピローグ
目覚めると、ベッドの上にいた。
どうやら僕は、本を開いた後眠ってしまっていたようだ。重たい本が腹の上に乗っている。
「ご飯よ、降りてきなさい。」
母の声が聞こえる。僕は学ランからジャージに着替え、本を机の上に置き、僕を呼ぶ声に従いリビングへ降りる。
夕飯を食べて戻ったが、まだ頭から離れない。
僕にしては、行き過ぎた活躍だった。普段の自分からは考えられないほど動き、成功していた。
そして何より、彼女達は僕を信頼してくれた。
だから僕は、夢であったとわかっていながらも、その生存を確認したかった。
明日は学校だ。夜更かしは大敵だが、加藤や塩谷がいる学校なんかよりそちらの方が余程大事に思えた。
何とかして確認する方法はないか。
また本を開けば、夢の続きが待っているだろうか。
だが本を開くことでまた危機に晒されるかもしれない。
あの時僕は確かに死んだはずだ。
だが僕はこうしてここに生きている。食事もできて、声も出せる。
何より今は自分の名前を思い出せる。
ということはやはり、夢だったのだろう。
なら、続きも全て夢であるなら、もう一度ぐらい。
そう思って、僕は再び本を開いた。
そこには、朱い珠を持った、赤い髪の美しい少女の姿が、確かにあった。
本当に、息を呑むような美しさだった。
僕は安心した。彼女は、助かったんだと。
だが同時に、その下の『─1─』という数字が気になった。
ページ数の表示なのだろうが、そこから先のページにはその表示どころか何も書いていないのだ。
訝しみながらページをめくり、戻し、めくり、戻し。
何回か繰り返した。
「当たり前じゃないですカ☆まだ貴方自身が歩んでいない場所の記録が、貴方に視えるワケがないのデス☆」
突然、本から発せられたその声と同時に、ページが強制的にめくられる。
そこには『─2─』というページ表示。
そして驚くべきことに、誰も手を触れていないのに勝手に僕の名前が刻まれていく。
そして僕は、それを読むことができなくなっていった─
「─やめろ...やめろ!」
「申し訳ありまセン☆まだアタシの目的は、終わっていないのデス☆
ちょっと1つじゃ足りなくテ☆貴方にはあと何回か、付き合ってもらいマス☆」
あまりのことに何も考えられず、僕の視界は、真白く包まれていった─
当然のことながら、夢オチではありません笑
1章はここで終わりですが、物語はまだまだ続きます。
とりあえず次の2章の終了までは、このままの更新ペースでいこうと思います。
これからも『名前を失う異世界物語』を、よろしくお願いします!




