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名前を失う異世界物語  作者: きなこもち
1章・生存競争
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全面戦争・前編Ⅱ

「...へぇ、そうかい。なるほど騙された。そうだよな、人数で負けたって言ってたしな。」

トニーは、片足を川に突っ込んだままにしたのではない。

「気づくのが遅くってよ、それとも、考えが足りないのかしら?洞窟の中に入ってしまっては、『水』の女がどう活躍するというの?」

正確には、川に入った片足を、水(・)が(・)掴(・)ん(・)で(・)離(・)さ(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)のだ。


「くっ、こん、な、ものォ!『自己強化』!」

身体を強化して、水の手を振りほどいてアルバに殴り掛かる。

「悪いがそれも不正解だ。このボクに正面から挑んでくるなんて、ね!『電撃』!」

アルバは『電撃』による弾幕を張る。

だが、

「効かないねぇ!俺の身体はもうほぼ岩石だ。その程度の電撃、効くはずがねぇ!」

「じゃあ、これならどうかしら?」

気づくと、トニーの背中から大波が襲ってきていた。

「やれ、シャーレイ!」

波は大きすぎて、もう回避は間に合わない。

「しまっ─」

ザッパーーーーン。

「─かはっ!」

大波はトニーに覆いかぶさり、トニーの身体を固めて動けなくしてしまった。

「フフフ、ワタシもねぇ、あ(・)の(・)御(・)方(・)には感謝しているのよ?地獄の底にいた女に、せかいの半分をくれるっていうんだから。だからまずはこの、水と同化し、自在に操るスキルで、あ(・)の(・)御(・)方(・)の野望を叶えさせてあげなくっちゃ。」

妖艶な声で、女は言った。

「フン、つくづく傲慢な女だ。あ(・)の(・)御(・)方(・)はお前などいなくとも、目的を達成できるさ。」

「そうかしら?少なくとも、あなたには無理なようだけど?ほら、グズグズしないで、さっさとこいつを始末して、中に入った連中を追いかけた方がいいんじゃなくて?」

「それもそうだな。

─では、さらばだ。恨むなら、殿(しんがり)など任せた仲間達を恨むんだな。『雷撃』!」

ズドォォォォン。

雷が、岩の身体を、貫いた。

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