全面戦争・前編Ⅰ
「おやまぁ。そちらも戦力を補給したようだ。
総力戦、とはいかないまでもこの戦争も終盤のようだ。」
アルバは、川の向こう岸にある洞窟を塞ぐように仁王立ちしている。
「その中に、『鬼』がいるのか?」
「フン、どうやら通れる気でいるらしいが甘いね坊や。もっとも君はサポーターであって戦闘能力がないのは織り込み済みだ。君だけなら通ってもいいだろう、あの御方の餌食になるだけだがね。」
「苛つくわね、その口調。」
「貴方...操られているわけではないのですか!?」
2人の追及に、アルバは嘲るような笑みをもらす。
「フッ、どうやら君たちは勘違いしているようだがね、ボクはあの御方に進んで従っているのだよ。愚かな他の連中とは違ってね!
あの御方に従えば、いずれは無限の富と栄誉、権力が保証されるのだ!なぜなら彼は王となる者!全ての権力者の頂点に立つ者なのだからね!」
「王となる者?」
「そう─だから先程はああ言ったが、君達を1人も通すわけにはいかないんだ。ボクの将来の為にね!」
「ケッ、この狭い世界で、権力や金に何の意味があると思ってんだ馬鹿が。」
「ハハハハハッ!無知は罪とはよく言ったものだ。君達は何も知らない。そしてボクも知らせない。無知のままに死んでゆくがいい!」
「そうかい。だが坊ちゃん嬢ちゃんだけは推し通らせてもらうぜ?」
『自己強化』を発動しながら、トニーはゆっくりと前進していく。
それに応戦するべく、アルバも『静電気』を発動させる。
「君、ボクと戦ってないからか、ボクのことをナメすぎなんじゃないのか?」
「それはこっちのセリフだ。今だ、走れ!」
叫びながら、向こう岸のアルバに殴り掛かる。
同時、合図を受けた僕達も川を一気に飛び越え、アルバの後ろから洞窟の前に回り込む。
「逃がすか!」
アルバがすかさずそれを塞ぎに来る。
「逃げんなよ、三下。」
静かに、川に片足を突っ込んだまま、トニーがアルバの肩を掴む。
アルバが動けない隙に、間髪入れず僕らは洞窟内に滑り込んだ。




