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名前を失う異世界物語  作者: きなこもち
1章・生存競争
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眠れない夜

日も沈んできたので、いつ戦いになってもいいように、ゴーレムの見張り番を作って睡眠を摂ることにした。

皆が寝静まった頃。

「─ねぇ、起きてる?」

赤い髪の少女の声だ。

「どうした?」

眠い頭で答える。

「アンタにつけた名前の由来、教えておこうと思って。」

そういえばそうだ。

あのときは「ルーアンにはセンスがない」で片付けていたが、

いくらセンスがないとはいえ何も無いところから『キビスケ』なんて名が出てくるワケがない。

「私ね、困ってたのよ。誰もいなくて。

私は何も最初からこんな所にいたわけじゃないの。普通に生まれて、学校に行って、家族と過ごして、普通に生きてきてたと思う。

でも、ある日、ベッドで寝てたら、私は突然、炎の中にいた。ベッドや家がとかじゃなくて、文字通り私の周りの世界が燃えてたのよ。

そして気づいたらこの世界にいた。

ワケわかんなかったけど、それから私は独りだった。」

ルーアンの言ってることはよくわからないが、ひとつだけいえることといえば、

「寂しかったんだな。」

「なっ、寂しくなんか─ううん、そうね。寂しかったのよ。

私は寂しかった。ここから救ってくれるヒーローが欲しかった。だからアンタに名前をつけるとき、昔絵本で見たヒーローが浮かんだんだと思う。凄いのよ、そのヒーロー。仲間と一緒に悪い鬼を退治しに行くの。」

彼女は懐かしそうな顔で、どこかで聞いたことのある話をした。

ルーアンのいた世界と、僕の世界とでは彼の名前は違うのだろう。

「なるほどなるほど?僕にヒーローになってほしかったワケか。」

ニヤニヤしながら問い詰める。深夜テンションが入ってきてしまった。

「...そうよ!私、アンタには期待してるんだから、私達を負けさせたら承知しないんだから!」

意外にも素直な答えに面食らったが、その分頑張ろうと、この娘を死なせてはならないと、心に誓って、眠りについた。

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