眠れない夜
日も沈んできたので、いつ戦いになってもいいように、ゴーレムの見張り番を作って睡眠を摂ることにした。
皆が寝静まった頃。
「─ねぇ、起きてる?」
赤い髪の少女の声だ。
「どうした?」
眠い頭で答える。
「アンタにつけた名前の由来、教えておこうと思って。」
そういえばそうだ。
あのときは「ルーアンにはセンスがない」で片付けていたが、
いくらセンスがないとはいえ何も無いところから『キビスケ』なんて名が出てくるワケがない。
「私ね、困ってたのよ。誰もいなくて。
私は何も最初からこんな所にいたわけじゃないの。普通に生まれて、学校に行って、家族と過ごして、普通に生きてきてたと思う。
でも、ある日、ベッドで寝てたら、私は突然、炎の中にいた。ベッドや家がとかじゃなくて、文字通り私の周りの世界が燃えてたのよ。
そして気づいたらこの世界にいた。
ワケわかんなかったけど、それから私は独りだった。」
ルーアンの言ってることはよくわからないが、ひとつだけいえることといえば、
「寂しかったんだな。」
「なっ、寂しくなんか─ううん、そうね。寂しかったのよ。
私は寂しかった。ここから救ってくれるヒーローが欲しかった。だからアンタに名前をつけるとき、昔絵本で見たヒーローが浮かんだんだと思う。凄いのよ、そのヒーロー。仲間と一緒に悪い鬼を退治しに行くの。」
彼女は懐かしそうな顔で、どこかで聞いたことのある話をした。
ルーアンのいた世界と、僕の世界とでは彼の名前は違うのだろう。
「なるほどなるほど?僕にヒーローになってほしかったワケか。」
ニヤニヤしながら問い詰める。深夜テンションが入ってきてしまった。
「...そうよ!私、アンタには期待してるんだから、私達を負けさせたら承知しないんだから!」
意外にも素直な答えに面食らったが、その分頑張ろうと、この娘を死なせてはならないと、心に誓って、眠りについた。




