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名前を失う異世界物語  作者: きなこもち
1章・生存競争
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『岩』の男、トニー

「ハハハッ、じゃあこの俺が力になってやろう!」

ライムが寝ている岩から、唐突に声がした。

「岩が、喋っ─」

「おおっと!?俺は岩だけど、岩じゃねぇよ!ちょっとこの嬢ちゃん、どかしてくれや。」

ルーアンと2人でライムを持ち上げると、「解除!」という声の後、岩がぐにゃぐにゃと形を変えて人型、もとい、人間に変化した。

「よっ、俺、『岩』のトニー!よろしくな!」


その岩は、本当に人間だったようだ。

よく喋り、よく笑う、快活な男。

『影』と違って、こちらは信用してもよさそうだ。だが一応、

「本当に協力してくれるのか?交換条件とかは─」

「ねェよ、ンなもん。俺はただ、闘って、勝って、生き残れればそれでいい。それ以外は二の次だ。」

「でも聞いてたでしょう、さっきの話。こっちは戦力不足よ?あっちについた方が生存率は高いんじゃなくて?」

「いんや、俺はアイツとは合わない。あっちの人間関係は、『鬼』と、それ以外。それで完結してんだ。『それ以外』の部分は『鬼』には絶対服従だ。だから『鬼』に嫌われたら排斥される。

それとあとひとつ、この世の中には決まりがあってよ。」

トニーは絶対不変のルールだ、といわんばかりの自信満々の顔つきで、

「どういう決まりですか?」

「正義は絶対に勝つ、ってことだ。」

身も蓋もないことを言い出した。

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