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悪徳商人、買い付けに走る

 凱旋式から数日後、トラビィオは軍務大臣に呼び出された。賄賂用の山吹色の菓子を鞄に入れ、執務室に訪れる。


「苛烈王との戦争では、お主の剣が大いに貢献した。あの剣は見事な物だ!」

「ありがたきお言葉。王国のお役に立てた事、臣民として誇りに思いまする」


 軍務大臣の言葉は、ユリウスを指しているのだろうと、トラビィオは受け取った。そして、剣と言う比喩を使いながら如何にユリウスが有能か話す。それとなく王女の様子も聞けば、城内でも婚姻の流れが出来つつあると教えられる。


(ふふふ。ユーリは、世界一の男前で優しい子だからな。王女が惚れるのも無理はあるまい。トラビィオ宰相への道も近いな!)


 この場にジーオルがいれば、親バカと笑われていたであろう。

 トラビィオの話を聞き終えると、軍務大臣は満足気に頷く。


「それほど良い魔法剣を王国軍に納めていたとはな。そのおかげで、各戦地で逆転が出来た。事前に話せば、魔法剣の訓練も実施できたのが惜しい所だが。それに代金も多めに払ったのに。そうか、これもお主の愛国心か! 見事である!」

「……は? 魔法剣? 愛国心?」

「いや、無粋な事を言ったな。何も聞くまい! 今回の魔法剣の発注もお主に任せよう。魔法剣が王国軍の正規装備だと誰が想像するか。この貢献、国王陛下や王女殿下の耳に入れておこう。孤児を立派な戦士に育て上げ、尚且つ王国軍への貢献。そんなお主が後見人とならば、ユリウスと王女殿下の婚姻も順調に進むだろう。期待しているぞ、未来のトラビィオ侯爵!」


 訳も分からず執務室を出た後、訓練所へ向かい納品した剣を魔法の眼鏡で鑑定した。


「な、何で魔法剣が? これも、それも魔法剣だと?」


 剣の柄には、トラビィオ商会の紋章が刻まれている。間違いなく、トラビィオが納品した物だった。段々と見えて来た状況に、急いで店へ戻る。


「ジーオル! ジーオルはいるか!?」

「はいはい。慌ててどうされました? ユーリが反抗期になったんですか?」


 欠伸混じりに、執務室から出て来たジーオルへトラビィオは持って帰った剣を突きつける。


「王国軍へ納品した剣が、全て魔法剣だったぞ。知っていたのか?」

「魔法剣な訳がないでしょう。納めたのは、戦場に転がっていた剣を溶かして作り直した物です。だいたい正規軍に魔法剣を納めるって、酔っぱらってもしないですよ」


 ジーオルに魔法の眼鏡を渡して鑑定させた。見るからに青ざめて行くジーオルを見て、何も知らなかったのだと確信した。そして、軍務大臣からの依頼を伝える。


「どうして、そんな依頼を受けたんですか!? 魔法剣を七百本納品って……」

「うるさい! てっきり、ユーリの話をしているのかと思ったらこうなったのだ。失敗すれば、王女との婚姻にも影響が出るぞ」

「それは、ダメです! 旦那様の不手際で白紙になれば……」


 舞い上がっていたユーリの姿を思い出していたジーオルは、実質的な弟が悲しむ様を見たくなかった。


「と、とにかく各地の魔法剣を買いまくれ! 金は惜しまん。そして、魔法技師へすでに納めた魔法剣と同じように作り直させろ!」


 指示を的確に出して、トラビィオ自身も連日徹夜で買い付けに走り回った。その結果、魔法剣の納品を達成した。

 困難な仕事を終え宝物庫に来たトラビィオは跪く。山のように積み上げられた財宝は半分に減っていた。


「どうして、こんな事に……!」


 事の真相は、実は戦地で集めていたのは捨てられていた剣だけではなかった。魔力が込められていた道具や魔法使いの杖も回収していた。鍛冶師達は依頼通り、それらの使える部分を用いた事で、計らずも大量の魔法剣を造り出していたのだ。トラビィオの指示ミスであった。


 そして、トラビィオの転落はこれが始まりに過ぎなかった。

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