悪徳商人、戦争をする
苛烈王と戦争が始まり、二か月。戦場の森を抉る爆風が敵兵を塵にする。
「撤収ー! 純白騎士が出て来たぞ!」
逃げる敵兵へ、柔らかな風が吹く。すると、敵兵は次々に倒れ伏した。そこに佇むのは、戦場にも関わらず傷一つ無く、血に染まる事のない純白の鎧を来た騎士。脱いだ兜からは、鮮やかな金髪が汗と共に舞う。物語に現れる勇者を思わせる風貌の青年騎士が剣を掲げると、周囲の味方が歓声を上げる。
「【疾風のユリウス】、万歳! 我らが【純白騎士ユリウス】に万歳!」
ユリウスを加えた義勇軍は快進撃をする。そして、拮抗していた戦況を覆して苛烈王の軍勢を追い詰めていた。
「純白騎士ユリウスの参戦で、戦いがこんなに楽になるなんてな」
王国軍の兵士達が話していると、側に来た上官もこの戦争を不思議がっていた。
「それだけじゃない。何故かは知らんが、敵軍の位置や陣地などの情報を、司令官が知って作戦を立てているんだ。ここは物資の集積地と魔導通信地を兼ねているから、王国に深入りした苛烈王は飢えと司令部からの通信遮断で大混乱だろうな。他の戦地でも勝利の報告が来ているらしい」
今、ユリウスたちが居る場所は敵地の奥深くだが、激しい交戦もなく制圧が出来た。王国軍司令部からは、信頼できる筋からの情報と言われるだけで、現場の人間には知らされない。
「隊長。魔導砲隊、準備完了です!」
「よし。苛烈王本隊へ、砲撃開始!」
砲身に浮かぶ魔法陣から発射された砲弾は、各地への狼煙を兼ねていた。全軍、総攻撃と。今、苛烈王と決戦が始まる。
◇
戦場より遠くの崖で、打ち上げられた魔導砲を見つめる集団が居た。日除け傘の下、果実水を飲みながら感嘆の声を上げる。
「苛烈王よ、補給を軽んじるお前の戦争は時代遅れなのだ。ワッハッハッ!」
「旦那様、ユリウス様の部隊は退却路を封鎖して待機するようです」
「何!? それでは、退却する苛烈王と戦う事になるじゃないか。おい、将軍に賄賂とついでにユーリの部隊配置を変えるように行って来い!」
戦場を走り回るトラヴィオ商会の特殊な従業員は、金貨の袋を抱えて消えた。
「諸々と上手く進んでいますね。戦争へ参加すると言った時は、いまさら反抗期を迎えた息子にショックを受けて、錯乱したのかと思いましたよ。まさか、ユーリを守る為に敵軍の配置位置を教えたり、軍需物資の入手妨害をして、戦争を操ろうとするとは」
ジーオルの遠慮のない言葉に、トラビィオは眉を寄せて鼻で笑う。
「家出息子の為じゃない! 苛烈王はな、莫大な財を貯め込んでおる。あいつの軍が壊滅した隙に、王都に乗り込んで商人仲間と共に全ての財産を奪ってやるのだ。商人達の長年の夢である、商人の国を創る地盤とする。戦争を操り国を丸ごと奪うなど、我が悪徳極まれりだな!」
「その長年の夢も、三か月前に作った物でしょうに。商人仲間を説得する理由にって」
「うるさい、うるさい!」
トラビィオは、地団太を踏み戦場を見つめた。その視線の先にはユリウスの所属する部隊が居る。
「だ、旦那様、大変です! ユリウス様の部隊に、苛烈王が突撃を行いました!」
「……は?」
その時、轟音と共に一瞬の眩い光が戦場を走った。
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