悪徳商人、商品を叱りつける
突然のユリウスの願いに、トラビィオだけではなくジーオルも体を固めた。
「……ユ、ユーリ。何を言っているんだ。そんな危ない所に行かなくていい。戦いたいなら、闘技場でやれば良いじゃないか」
「苛烈王を倒したいんだ。村を焼いたあいつを倒したい!」
ユリウスは苛烈王に故郷を襲われ、王国まで流れて来た。その時に、トラビィオ達に拾われたのだ。ユリウスが復讐をしたいのだと理解して拒否する。
「復讐なぞ、金にならんわい。それよりも、お前は御前試合に向けて準備をしろ」
「嫌です。父様、義勇軍に行かせてください。今の僕なら、苛烈王だって倒せます!」
「ダメだ。そうだ、御前試合には最新装備を出してやろう。誰も見た事のない格好良い鎧だ。皆、驚くぞ! それに、闘技場で戦うなら好きな果物を山のように用意させよう。どうだ?」
「え、本当ですか!……そうじゃなくて。義勇軍に行って苛烈王を倒したいんです。皆の敵討ちをしたいんだ!」
普段のユリウスなら、トラビィオの言葉に大人しく従っていた。だからこそ、ここまで自分の意思を通そうとするユリウスに、トラビィオは戸惑った。
「生意気な事を言うな! お前は、ワシに黄金を運ぶ商品だ。商品は黙ってワシに従えば良いんだ!」
「……父、様」
ジーオルは、傷付いた顔をするユリウスに声を掛けようとするが、走って部屋を出ていった。
「どこに行く! 魔法印よ、結びし者を拘束せよ!」
トラビィオの手の甲に刻まれた魔法契約の紋章は発動しなかった。それに驚くトラビィオ。真実を知るから気まずそうな顔をするジーオル。
「えーと、その……旦那様、あの言い方は酷くないですか!?」
「あいつが悪いんだ。たかが、商品の分際で。それより何故、魔法契約が発動しない!?」
「そんな事はどうでも良いです! 大切な息子を戦地に行かせたくないって、素直に言えば良いじゃないですか」
「……あいつは、ただの商品道具だ」
ジーオルの深い溜息が執務室に響く。
◇
夜。ユリウスは部屋で荷物の整えていた。義勇軍に参加する為だ。トラビィオや、優しくしてくれた人達を苛烈王から守りたい。その思いで義勇軍に加わろうとしていた。
戦災孤児を助けてくれる人もおらず、冷たい雨が永遠の眠りを誘おうとする。しかし、プニプニの手がユリウスを救った。大切に育てられた自覚もある。自分に出来る事なら喜んで何でもする。だけど、苛烈王が迫ってきている。昔みたいに、奪われたくない。
「酷いよ、父様。でも、僕の想いは変わらない。僕が父様達を守るんだ!」
部屋を出て、隠れながら家を出ようとすると純白の鎧が置かれていた。光を反射する白さは、高潔で何者にも染まらない強さを感じさせた。側には手紙が置かれている。
『ユーリ。俺達が何を言っても戦場に行くんだろう? それなら、この鎧を持って行け。これは、旦那様がお前の誕生日にと用意していた物だ。旦那様もあれが本心じゃない。その鎧を着て、無事に帰って来い。そして、勝ったけど文句あるのかって煽ってやれ。気を付けてな。ジーオルより』
ユリウスは手紙を大切に仕舞い、微かに不思議な温かさを宿す鎧を持って初めての家出をした。
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