笑えるようなサプライズを
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ワタメはワタシの憧れよ。お母様からの言いつけを無視してお外に出たら、退屈と停滞を感じさせる日々から手を取ってくれた。プリンスじゃなくて可愛い暴れん坊だったけどネ。
ワタメも退屈から抜け出したいのは間違いないわ。ワタシと違う点は1つ、紛らわせ方を知らないだけ。その心の不満を、少しでも逸らすことが出来ていなかったのよ。
ギャングをものともしないで潰して、オモチャを手に入れた子供みたいに笑っていた。あの時、それを見て完全無欠のヒーローと勘違いしたのがワタシの間違い。
「あっ、そこ危ないよ?」
「ぇっ……?」
ワタメの腕と足からは血が溢れていたの。ワタシを庇ったばっかりに。
「Ms.ワタメ……? ワタメ!!! うで、血が……」
「んー? これくらい……」
腕を撃たれてもずっと笑ってた。まるで初めての感覚を不思議がるように。あの傷は、ワタシが付けてしまった。そして、この娘が抱える根本的なものを知ってしまったのよ。
……その笑顔が、ワタシの頭に焼き付いてずっと離れない。紛い物の薄ら笑いじゃない、遠慮なんか1つもないその姿が好きになったの。
それからは、ワタメのために嫌悪感すらあった色々な知識を必死に付けたわ。この娘が少しでも日常生活でも笑えるように。
ワタシをあの日助け出してくれた時から、ずっと待っていたわ。やっと、ワタメにとびきりのサプライズをしてあげられるから。
…………………………
「私、は―――」
適当にあしらって断ろう、それが正常な判断だ。いつもの私だったなら。だけど、今は生憎いつもの私ではなかった。
困ったね、こうなると私の選択は……。
「やる」
「……フフ、素直になってくれたわね?」
「癪だけど、わたしのことを考えて言ってるんでしょ」
「スキだわ、その顔も」
わたし、の声はいつもよりも、いや……頑張って作った声が崩れて、小学生くらいの声になっている。コイツの言葉で、完全に戻ってしまった。
ただ、わたしは新しいオモチャを手に入れた子供のような顔。コイツは夢が叶ったかのような顔で笑ってる。
「リトルシスターも間違いじゃないと思えてくるわ、ワタメを見てると」
「うっさい……」
「……なんで、受けてくれたの? いつものワタメなら断ってるでしょう?」
「なんでって……そっちの方が楽しそうだからに決まってるから」
「それなら、良かったわ」
コイツは安心したように息を吐く。なに、コイツらしくない……。いつもならワタシを煽ったりからかってくるのに。
「それで、なにするの?」
「えぇ、とは言ってもまだ先の話だわ。ビッグなイベントの話は掴んでるけれど、純粋にワタシ達が強くならないといけないわ」
ここで少しぼかしてるあたり、今考えてるか本当に楽しいことを考えてるかの2択だ。ま、いっか。だって、せっかくの大きな舞台だもんね。
「今日中に合流してフレンドになりましょう? そうしたら、ワタメとデートの続きが出来るわね」
「あ、わたし海の上からのスタートだったからむり」
「え?」
詳しく事情を説明したら腹抱えて笑われた。げせぬ。昔っからエンカウント運に恵まれてないってのは余計だから、合流したときは海に沈めるもんね。
読んで頂きありがとうございます。前話からの分岐で思い付いていたのは3ルートありましたが、このルートで物語を進めていきます。




