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「少し……、待ってもらおうかナ、ワシの弟子への乱暴狼藉はなぁ……」
その男はカードを以て消して見せた、ヨシリスを炎で巻いて。そうして中から現れるんだ、加島を助け出してみせて「召喚にはルールがあるはずだぞ……、教えられなかったのか、貴族のボンボンよ。ナぁ、 それは魂を縛る戦いだぞ、崇高なるヤイバなのだ、だからこその魂と言えるカードよ」
その貧相な体には見合わない程の殺気が。そうして何より重みのある言葉の魂が。何せ呪言となるのだから、召喚の楔に抗い続けた男の気迫は。
そのトロール2体を前にデッキセット、手札5枚で真理は4の「フゥ……、フゥ……、うぅゥ。まぁ、これでも上々だナ」
それに対してヨシリスが、トロールを2体も有する貴族は「なんだ……キサマ? 私のエモノだぞ、それは庶民を飼うべき私の象徴となる物、貴族の行いであるべきだっ、大体なぜ話しかけたよ、ひれ伏せよォっ!?」
「さすれば勝ち取ればよいだろうに、キサマ……、それもできんのかナ、貴族の癖に」
「ふぅ……、ふぅ……、もォ構わんさ、なんだって構わない、構わないんだッ!」
激昂というかまた地団駄、怒りが頂点らしくて「丁度いい……丁度いい、あまりに弱いレリック1つじゃア俺の戴冠には相応しくないだろう、派手に行こうかぁ……!」
だがしかし、震える、こんな威圧感が漏れる相手は初めてだろう。召喚とは魂を司る力だよ、それは段違いの光、闇を、カオスをも。
かの老人はカードをもって切り裂き、それでも彼はもう……。
「アンタ……、クモ爺さん大丈夫なのか。アンタもう戦えないんじゃ――」
「構わん、はぁ……はぁ……ワシに構うナ、弟子ヨ行けぇっ」
だが見えていたから、それ位は感じ取れるさ。安定しない、基本であるはずの心象が揺らいでる。すると2匹ものトロール相手に真っ向召喚するんだ。
「それにワシならこんな小僧なぞ相手にならんナァ、この程度ならばよォ」
手札から魔法を発動「真理1:【駆けつける勇気】相手の場にいるカードと自分の場のカード、その真理差だけの白の0/1トークンをだす。6体召喚になるナ」
「ふふふ、その程度ならば」「更に白の真理2:【この無英の躯】3/1召喚! モンスターを自在に操り、全てに+1/0効果、そうしてこのユニットを召喚時、コントロール下のユニットの分だけ+0/2する――」
ただの亡骸だった人形が4/13となって登場し、しかも湧いた6体が1/1へ。操り人形が闊歩する、その糸は求めた力か人生か、それとも……。
上下に開く赤い目が見据える。もう10/19という軍勢が真理3と2カードで登場してしまうから。さすがに焦らざるを得ない。トロール2体でも10/20、しかも真理は向こうが1残っているという。
「なんだ……、この男のカードは。私の教師とはまるで――」手札は3・真理は0。
命の輝き、感じるのは正に熱い鼓動だ。青筋を立てる貴族は、それを洞窟からも感じ取り「ここまでの研鑽・練磨は普通ではありませぬぞ! 坊ちゃま、ソレと戦ってはならないっ……」
急いで出てきた教師は。そうして恥を凌いで召喚をセットするのだ、二人がかりでの戦い。すぐにもう一人の召喚師たるが手札を使い……っ!
「なぁ、おぃ、大丈夫じゃないよなぁ。俺も戦うからクモの爺さん、2対2で!」「行け、構わんから行けヨ! お前がいても足でまといだ、切り札使ってそれじゃあ……」
もはや加島は戦えないだろう、俺が抱いてるのを見て「それに、多くを守らねばならないんだろうお前はナぁ――?」
その言葉に唇を噛む。ココで無駄な争いをしてしまえば恐らく学園に飛び火するんだ。正直見捨てることになるだろうが、ココで参戦した時の事を考えざるをえないとで。トロール2匹が大量の人形と戦い、そして……。
「この老いぼれがぁ! すぐに殺してやるぞ、この薄気味の悪い老人めぇッ」
その勢いづかせる教師のヘックスに対して。更に一枚を切るクモツヒゥラーは「真理0:【この落日、この運命】手札から一枚切る度に更に1ディスカードさせる。それを発動したプレイヤーは次のドローを2枚まで引いてよい!」制限時間8分。
舌打ちの声、これでタッグコンボは防いだ。そうして俺は必死にその朦朧としている加島を抱き、そして半獣のネコたちを抱えて走って行くんだ。
しかしあの教師が取り出したカードの炎が襲い来る姿。
さすがに2人相手は苦しいかナ……、でもその時に手札が来たから。見やるそれは「やはりか……、見逃してはくれん――」
苦しむ。ヒザを折るクモツヒゥラー。俺もが止まった、その目は学校と、それとあの俺に召喚を教えた人を見やる。
その病魔は既に彼から召喚たるものを奪い取ってしまっていて、やはり1人では――。
「フゥ……フゥ……、まずいな。もう見れんかもしれん――」
炎が直撃してあぶられて、だがしかし、根性で踏ん張るのだ。
走って走って、炎の中、必死に走って行く姿。あの爺さんの……いや召喚術師クモツヒゥラーの炎はまるで消えない怨嗟のように燃え広がってて。
すまない……、でもなんとか助けたいんだ。
「なぁ……、ナァ! 体は大丈夫か加島っ、巻き込んですまん……加島ぁっ」「い、良いんですよ……。私も何かを……っ、ハァ……ハァ……、ですから早くなんとかできる場所へ、勇さん――」
でないとこの子達が。
にゃあ……、にゃぁ……――、衰弱していくのを必死で抱き寄せる少女は。
だがダメだろう、あの人間たちの眼を見てれば分かる。恐らく汚物としてしか見られてない、加島もそうだが人型というのはかなりキツイらしい。
ならば「なぁ頼む、頼みがあるんだっ。少しだけこいつ等を学校で見てやりたい、アンタならやれるだろう!?」
みーと鳴くその顔に、マジマジと見て白は「あぁ……、然りだったね。ダメだねぇ……、入れるのは駄目だよ?」
「なんでだ……っ、少しでも良い、少しだ! 俺らは役に立ってるだろうよ、なぁそうなんだろ会長、だったら少しだけで良いよ――」「あぁよく……考えて欲しいんだよ。今の混乱期でそんなものを入れてだぁ? もし、他の生徒が悪い噂を持ち帰ってしまったら?」
最悪なのは、集団ヒステリーの引き金になりかねない事。腹をすかしている、そう、腹を。
その笑みは悪魔の笑みで、金色の白は。
「然りだな……。早くした方が良い、何せ……、あと2時間もすれば干からびるんじゃあないか」
「なぁ、なんでだ……っ、なんでそんな簡単に割り切れるんだ、お前はあっさりとそんな事が言えて――!?」
「それはね……、冒険者は危険を冒すんだよ、じゃあ私はその逆でなくてはならないからだね、それはキミが生んだと言えるよね?」
まるでその人間の逆を行くような。
だがしかし必然だ、まるで影だ、それを人は運命と呼ぶと――。ふふフ。
その言葉に発った。だが栄養がある物はおいそれとは転がってない、今は牛乳だろうか、ただ酪農はかなり裕福な行為で。全ての酪農家が王侯貴族の領分でしかない、そうしてただ。
「オィ、お願いだ、ミルクを分けてくれないか!? アンタが管理してるって聞いたんだ!」
「ハァ――? 駄目だよ……、ダメだダメだ。今は忙しいんだよ、さっさと出て行っておくれぇ!」
村が襲われた時用の家畜がいるにはいる。いわゆるデコイで全部管理されてて、だが牛乳一本が遠いから。傷ついたもう一匹が衰弱し始めた。
雨が……、必死にどうにかできないかとギルドに職人に、そうしてカード公社にまで頼み込むが駄目。加島もそろそろ限界だ、休息を取らせるべきで。
静かになり始める、ひたすら雨音に流されるような。
だからそのまま引き返す事に。俺一人で森の奥へと入るんだよ、森は兵士が守ってるから、レベル違いだがここでなら。
「なぁ頼む、アンタ、この子を助ける方法知らないか! ハァ……、ハァ……、この森ならいるだろう、助けれるのの居場所を知らないかよ!? モンスターで良いんだ!」
「キミの後ろにいる」
その時に気づいた。「賢者とは、既に必要を理解し、誰よりも早く得る、その算段をつける者をさすんだからな」
ざす……ざすン――。
歩いて来る、奥から、その賢者は目を閉じていて4足を、そうしてその5足めの足を踏み込む。それ毎にそれは、世界に言い知れぬほどの静寂をもたらしてしまう。
ケモノ共が一気に静まった、門番がどこかへいく。ゆっくりと振り返れば。




