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あぁヤバいだろうな、コイツはだいぶと強い――。
さっき見てたとこだと獣人の中でも高位の物を自慢してたんだ、確かにポイントかき集め続けてるのだろう、ライオンでも目指しているのか。
すると召喚戦ならと剣を抱く加島が来て「いや、お前は良い……、今回は俺一人でやる。お前を巻き込みたくないんだよ」
「え、いえ……、そんな訳がっ。私も戦います、戦わせて下さい勇さん!」「だが最悪だと相手に負けてカードが奪われるんだぞ、お前も入ってしまうんだ。あとな……、何より、人間との普通の勝負もしてみたかったしな――」
その言葉に抗議したい様子だが、しかし。そのまま有り金全てを条件に戦いを挑む事になるんだよ。いや――何故かそれでは足りなくて結構な。
「よっしぃ~、じゃあ勝負だな若いのぉ。もう逃げれねえぞ~、泣いても知らねえ」へへへ。
その時男の眼が光った気がしたが。
するとデッキを掲げて召喚術用の囲いの中へと入ってしまう、始まりだ。そうして相手は手札が5枚でマナが3だったんだ、かなり強いかよ。
剣の業、杯の業。我らが辿るは一つの螺旋の、無の世界。
背中に不可視たる黒の羽が見えて吠える俺は、相手は牙の塔としての魂だ。互いが背負う王国を使役して召喚術師らは激突するから。
今、カードをドロー、黒の羽根が舞った、そうして牙が唸り一斉に震え出す。
「では尋常に」『2帝会戦。デュエル――、Open Your Brains Edge(思想で戦端をこじ開けろ、貴様の生きるを穿ってみせよ)!』
「じゃあ一気に行くぜぇ、コッチは3コスト! 来た来た、俺のお得意がぁ――」
そうして召喚するんだ、俺の初めての単体での戦いがはじまる。
水の音が響く……、それはモンスター達の血であり、赤みどろと成り果てた階段を下って行く姿。ただ静かに、重く。
「ふん――、薄汚いな。なぁ……、それでまだなのかぁ、そのレリックの場所とは……」
ぽちゃん……、ぽちゃん……。何匹もが逃げて来ていた。
森の奥に近づけばそれはヌシの領域になり、そうしてそれぞれにあったレリックには魔物が群れる場合が多いという。この森の中枢にもレリックが存在して、大いなる存在たちが守っているのだから。
月が滲む、赤の全てを踏み潰して進み。
「あぁ……、しかしこれでやっと私もデッキが構築されるのか。ただ……こんな程度では面白味がないなぁ、まだ外郭であって緑淵の轍と来ただけだろう。レベルが低いのしかおらぬぅ」
「しかし真理が2でも十分ですぞ坊ちゃま、そうしてもう真理が3つ並ぶならば破格なのです。何せこの力は普遍、いわばそれが真理の力だ……。有史以来ヒトですら変わっていないと言いますな」
「しかしだ、カードとは強き者がおらんと見くびられるぞ~? 貴族なら名がすたるだろう。まぁ、平民出の師匠殿には分からんだろうがな~」
その弟子の言葉にも眉根を動かさぬ白き髪の男、それを放っておき「だが我らはバロンだぞ? 未だバロンだ……っ。あの学園に呼ばれる事すら危うい、こんな事があってたまるかよっ! しかも我らが有するこの森の先にはアノ最大の問題がいるだろうが――。だからだよクソが、日和よってからにッ」
その頭蓋を砕く。脳を破壊されても、それでも逃がそうという。他をすり抜けさせて出口へ向かわせるのを見逃さない、メスの断末魔が聞こえて。涙を流すそれは。隠しえぬ高揚が。
「あぁ~あ……、カードもそうだがよぉ、天然とは言えもう少し良いレリックは採れんのかよ……。例えば大地たるミドリの有色を求めるという、あのドラゴンの臓物とかなぁ……?フヒヒヒ。かなり美しいと聞くぞぉ~」どっくん、どっくんとなァ――。
遊びとしてその赤の軌跡を擦らせていく、ズリズリとスプレーの落書きみたいなものだ。ここは確かに月の領域、月は色をも染めるから、その増大には。
「だがしかしですぞ……ぼっちゃま、こういった下位の物が戦いを決めるのです。真理は誰の手にも平等で、大きさだけではないのですよ。ならばカードを磨くのです、この今から行くレリックは月の」「分かっておる分かっておるぅ~……、五月蠅いな――」チっ……。
その少年の様子に頭をかくから。良いカードを相当数揃えるという意向は聞いていたが、彼自身のプレイの質はかなり不安な所がある。
それがただの召喚者というならばまだ良い。だが……、まぁともかく。彼は大きな大義を控えている。歩いてくその薄暗い中を、怨嗟と苦しみがこもるようなその洞窟。
「おぉ? あれがレリックかぁ? もしかしてそうなのか、ナァ……?」
少しだけ開けた空洞に出た、水の薄緑が反射している、揺らめく……顔をも照らす。その中で人が数名立ってて、そうしてソレらが囲むはほんのわずかな光は。正直どうスゴイかは分からないがな。これを集める事で変わるらしいという、授かる力は召喚術師を高みへといざなう。
「レリック――。格を上げるのだな、ならばとりあえずアイツらをなんとかしないとだなぁ? 何せ邪魔となるだろう、守護者は一気に狩るべしというに」
そこにいたキバを剥く獣人種たちを笑う。恐らく管理者にでも指名されていたのだろう、なんと小賢しいのか。ただもう虫の息であるしなぁ……。
「その前にか。よくやった……、約束通りである、褒美を遣わそう召喚ギルドの尖兵たちよ。『ヘゲナの右擦り指』よ、あとは私自らがやろうか」
この我の手ずからな――。クヒヒヒ。
「……――」静かにうなずく妙な気配の者たち。ただあの残された者達に同情はするから、儀式が始まる。夢を還すのだろうがな。
真っ暗闇は、そのまま全ては狂気へと還り。




