6
そうしてその日もいつもと変わらないはずだった。
「よぉ、昨日のどうだったぁ?」「いや配信忘れててさぁ、切り抜き待ちよ、もう面倒~」
「あ、モフみちゃんモフみちゃん、どうだったぁ? 車は」「モフみはヤメて下さい、私は柿澤先生ですもん、せめて木美ですからぁ!」
若い担任の先生が揉めている、平和だ。ギャルと雫とが仲良さそうに話しをしてて、その時は一人で青い空を見てて。虫が一匹高速で突っ込んで来たなって、いや、虫じゃ……ない?
なんだ……、次々と黒い、いや虫が入って来るぞ。大量で雪崩れるような黒粒の何かがイナゴの大群のように。留める方法すら分からないがコーヒー豆、とかか?いや、何言って、いや――こんな降り積もらないのに圧死しそうな。
何をどう考えて。
その時右腕に痛みが走ったから。広がる……、まだ広がる。地獄のような痛み、駄目だ……広がり続けるのだ。
ゆ……、ユウ、大丈夫、ねぇ勇ゥ!?
何故近い、あれ……、どうなっている。オマエが俺の事をそんなに呼ぶなんて、何が――。
駄目……、何か嫌な予感がします、ダメ――ッ。
貴様を逃さない。
見つけた、見つけたぞ……。あぁ、そうなの……。私……あれは私、だから……――。理は戻らぬ、だが戻す……、貴様まさか。
ユメは、夢なの、邪悪は邪悪だけど。あれが夢に見えるか、もはやその。声の乱反射が――光り輝く、それが地獄の始まり。
全員が飲まれる。それは正に地獄へと導かれる光だった。
ウ……―――――――――――――
あぁ、なんだ……。
なんだよ。
ハァ……ハァ……今の、なんだったんだ。えぇ……? ちょっとぉ、何ヨ……。あぁ――頭イタ――。何があったの、ねぇ、誰かぁ~~? せんせーー……。
静かな部屋。教室だ、まだ教室だったんだ、あれって、全員がバラバラに、言っててだけど脱力で……――苦しくて。でも一人がヨロヨロと立ち上がる、めまい……、少しの嘔吐感。そしてそれでも必死に這いずって目の前をかき分け外を「え、 えぇ? 」
固まる、ただ固まる、訳が分からずもう一人が外を、外……「あ、嘘。 エ、 エぇぇェェェェェェエ―――」
突然ですが、こんにちわ、7000メートル級の山です。奥には縮尺で分かりにくいですが1万2000メートル級もあります、マヌカイ・マヌカイです、あと西洋風の城があったし妙な建物が見えるし……――。
あれ……、電車どこだ? ここ、何? なんのこと。コンビニ――コンビニはぁ。俺の家って。まるで見た事ないココ。
あと俺には見えた、小さな何かが動く。
あれ……、小さくないよねって、だって7000メートル級をバックにしてるから、恐竜のような何かがのっそりと直ぐそこで――1頭。
「なんだこれ、なんだ……」「キャアアア!? ウソ、うそ、何これ何これナニコレェ、どうしたのォ!?」
そこにはジュラシックパークもびっくりな映像が流れていた。戦っている。草原のような物がいっぱいに広がり、今まであった近隣住居も瓦屋根もボロボロのアパートも、大きな湖や目に付く線路も全てが消えていて。
異変を肌で感じて誰もが窓へ、そうして携帯のズームで見やる、色々と、見た事もない化け物が見えてて興味深い、ソレは人をも「全員出るなっ、全員中へ入りなさい――!」
すると空、コチラに不敵に笑った気がした。教師と生徒のいちゃつきすらも止まる固まる、口を開けて。
そうしてその大きな大きな爬虫類はまるでアピールするかのように飛んで来るんだ。
近づいて近づいて近づいて……極限に大きな陰影が。赤いウロコと強靭な翼と爪を持ち。
轟音を響かせて真っ直ぐに。
「ぶつかるぅうう!?」
去って行く。
ここに見届けたなり―――。あぁ見届けた……――見届けたぞ。我は関せず。それはならぬ。だがその理はこのままにあらず。いや、面白い。
7つの理、ここに見届け飛んでいく。
「全員……全員がダメです、良いから見ないでェエ! 確認とれるまでは何もしてはいけませんよ、窓も閉めてェ!」
シャっと気休めの。出遅れでモフみ、担任の言葉があっても誰も彼もがパニックだ、突然の訳の分からない現状、そして……。
そうして動かない。ときおり何度も何度も大人が見回りに来るが、妙に静かで気配が……。
「なんだココ、やっぱおかしくないかっ……」「いや、そりゃおかしいでしょ、これ……――、これがおかしくない訳無いって……」
あれなんだ……。カシャ――おぃヤメロ、今気づいてたぞ。え、へ? いやそんな訳が――。はぁ……はぁ……。
当然だが見ている。見るなと言われようがこんなすんごいの誰もが見ない訳がない。さっきからネットが繋がらないし、電話もだ。でももう2時間経っててその悲鳴にも飽きてきたし。
「やっぱおかしいよなぁ、アレどうするぅ?」「分かってるって、いや……どうするか考えてんだよぉ、おかしいに決まってるしなって」
「いや違うんだって……、ナァ太陽ってさ、動くよな? でもココの動いてないぞ、さっきから同じじゃないのか」
ハァ? なんだ、くっだんね……、そんなの見間違いの――。その見上げた空は突然サっと、煙が入ったのだ。
まるで糸かそれとも滲むボールペンの線かという黒が、青空に差して垂らされて煙幕がジワっと広がる、墨汁が水に広まったような。
黒が青を侵食して群青と化すため空が強化されて昼らしくなり、しかも濃い所と薄い所が見えるのだ、まるで普通の青空のようで。中央から濃いのが広がってってそうこうしてると太陽が陰る。
圧倒的で辛辣なほどの異世界だな。
これをもし陰謀論者系コミュニティの天動説者が見てたら大興奮だったろう、事実そのまま濃紺を重ね、重ねて紅くなる。そのまま夜へと落ちてくから、世界は真中点に太陽を抱いたまま赤く沈む……闇へと堕落する。その姿を見るのだから。
真上から照らしてきて、焼けるような赤い人影を映し出してそれは。
「先生! 先生方、どうでしたかっ、あの町では何がどうなって!?」「手掛かりは……っ、何か行政との連絡は! 他の住人の方はどうです、同じような現象のヒトなど何か――」
教師たちが複数外へ行っていたらしい。だがその様子は大人とは思えない、真っ白に干上がった肌で微かに震え、言葉もたどたどしくて。夕日の中ボソボソと。
「いや、 いや、 あのね……はぁ……はぁ……、何を言ってもね、通じなかったの……」「え? 何を言って?」「あ、やはり外国ですか、外国なんですか、そうなんだぁ!?」
「そ、そうですね、いやでも違う……。ン、んぅゥ……――。だって……言葉は通じるんだヨ、でも違うんだよっ、全っ然違うんだよアレはさァっ」「でもどうにかしないとだぞ……どうにかだ……っ、はぁ……はぁ……!?あんなの駄目だ、なんでだ、常識がおかしくなるゥウ――」
「先生方落ち着いてッ! 何があったのだけを」「はぁ……はぁ……!? あの、そ、そうですね。とりあえず、あの……、町も人もね、警官と言われる人もね、何もかも、それで……、服装なんかも完全に変で中世でね、感覚も、そして」
魔法があった
「あれは魔法ヨ……、ハァ……ハァ……確実に魔法なのよ――」
その言葉に半信半疑だったが、残念ながらそれはおおよそ現実となるから。
夜が覆ったそこは、ヤミが暴力的に奪い取った世界。
犬のようないななきと聞いた事ないのが混じる闇夜。
異様な雰囲気に全員が恐れおののいていて。こんなに夜とは五月蠅くて不穏だったか――必死に身を寄せ合おうとしていた所、村では火が焚かれ。




