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人々を割って深刻な顔で近づいてくる少年は私へとヒザをつき「もう良いんじゃないか……? 彼女は異世界から来たお客さんだろう、だったらそれ相応の待遇があるはず。それは彼女が例え貴族ではなくてもだぞ」
それに女達がざわめくのが耳につくわ、それが第一印象で。ただでも必要な教育だという声が幾つも上がってて、でも……。
「まぁそうだね……、そうだ。ただ僕もあまりさ、言われると困るんだよ、傷つくんだ。何せ私だって権威を持ち合わせないからな、父は一代限りのバロンだぞ」
つまり格無し。子供には自分が持つ一個下の階級を与えるというから。正確にはこれも土地が関係してて。
しかしそういう割に妙な雰囲気……、彼の周りからはね、妙な気配がただよってるのよ。ただ者じゃないと。
するとコチラにひざまずくそれは見つめるのだ、その顔は比類なき。
「まぁ、それに確かに……。キミはいささか頑固過ぎるのではないかな、レイディ・コウロ。全員が国を思っているんだよ、それはき」「あとね……コウロと呼ばないで欲しいわ……、はぁ……はぁ……何度も言うけれども、アナタ達にその名で呼ぶ資格はないわ――」
睨む。ただその黄金を持つ者はあまりの美しさで、声が出ない程だった。
少しうなずく私は何故。
それは190センチもあり恵まれた体躯なのに幼そうな顔なのがすごく、妙な気持ちになる。すこぶる美しい、端正な金髪。
青の瞳でこの男だけは良い匂いが漂う、そうして制服も少々変わっているから。
「なんだ……、フフフ。レイディは思った以上に貴族に向いているかもしれない。その芯の強さは正に高貴だな、レイディ・コウロよ」
王子、あの選帝侯の筆頭とか言われた男の子よりも遥かに。
その笑顔と共に差し出す手を、黒髪が跳ねのけるから。オンナ達が唇を噛むんだ。
「なんだよお前、スカしてよぉ……。平民の癖によくもまぁ、何をはしゃいでいるのかよっ」「そうだぞヴィスコンティーだぞォ? オマエ……僕がそうだという事はお父様はアールだっ、2つも離れていたら1ひねりだろうがよッ……」
「うんまぁ……、そうだな、そうだね。ただキミ達のような者は見過ごせない。彼女は勇者である前にレイディだ、僕は守るぞ」
「なーーにがレイディだよ、俺らと女は何が違うって言うんだよぉ!?」「そうだそうだ! まぁ……でもオ? 家督相続なんていう、そういう努力には向かないらしいがなぁ?」
男達が笑ってる、それには一部苦々しい顔だが「確かにそれには相応のしきたりがあるな。ただ彼女の意向を一度でも聞いたかい? 彼女は家督からは自由であるはずだ。ならばレイディで良いよ、それに何よりこの学園では爵位は禁止だったはずです」
ねぇ先輩?「ホラホラ……、この学園のしきたりに明らかに反しているように見えるが――?」
「あぁそうだな、そうだ。 この愚か者がぁア! ココはカインブラ学園だぞ、それは王が下にいかに高めれるか問われる場所、それは自分自身がだッ。王へと還元せよ王の前では平等たれ……っ、それが基本だったろうが、この下級生どもがぁっ!?」
ここは上級生が下級生をほぼ見る事になってるらしいのよ。基本的にそこには階級が問われないし、そこは厳しくしてるのは事実らしいの。家督的にも貴族的にも暴力は厳禁であり逆らう術はあまりない。
渋々ながらもそれは、同じ平民とされる上級生に頭を垂れ、イメージと違う姿も見せるその学校は。
ただでも――「ちっ……、上級生頼みかよ」「卑怯者が。でもだ……、お前は別だよ、この平民のすかし野郎がヨ――!」目を切ってしまった彼を狙い一撃を――。
「きゃあアアアアア!?」
その動きに驚いたのは他でもない、少し頼りないのは見た目通りかも。私がその彼の体を抑えるから、必死に滅茶苦茶デカいのを。
「あぁ……、フフ、困ったよなぁ……、ホント。悪いけれど少し遠慮願いたいなぁ――」イタタタ。
その端正な顔を腫らして困るみじめな姿に酷く感嘆してしまうから私「じゃあ何故出てきたの?」「えぇ……? ヒドイな、格好良く見せる為さ。ただ問題になったな……困った、これでは家督として反撃せざるを得ないがぁ……」うーん――。
穏便に済ませるには決闘するしかないとか、ぶつぶつと。でもこういってはなんだけれどね、この人もあまり詳しくなさそう。
ただし、勝てないと顔に書いてあるの、その情けない感じは「はぁぁ………。それなら私が戦ってあげるわ……、しょうがないのでしょう。決闘は良いのでしょう、全く……」「おぉ……? でも君はコウロと呼んだ僕を庇って戦ってまでくれるのか、フフフ」勝機を得たな。
見てくれよ皆! 馴れ初めになるかもしれないぞ!
その言葉に初めて気づく。少し睨むが彼はそれでも嬉し気でしゃくに障るの。
ただその男の剣を抜いて見せるから、その姿にはさすがに殴った相手が驚くのよ。上級生は薄ら笑いで、決闘を申し込むと言って正式に。そうしてしかし彼がそれを塞いでしまい……。
「面白いな……、オマエ……。でもじゃあ……」
アゴを撫でてくる、彼は美しいとも呼べる仕草で堂々とし「貴族になれない者同士、どうだろう。僕との逃避行はヤレルだろう? ナァ、お前は自由の剣を捨てたくないと言うなら考えるよ、例え王や世界を敵にしても良い、自由を貫いて見せようか」
それは滅多に見ない、少女への勧誘は。口説いた様子にたくさんの女達は眉根を上げてるし歯ぎしりしてて。
全員が大汗かいて。
「私、弱い男は範疇外なの……」「フフ――、なんだよその顔、綺麗じゃないか……。僕は仲良くはしたいな……って、それだけだぞ」「逃避行、それが仲良いなの、アナタには……――」
そうだと。さすがに髪の毛を撫でたから私「変な人……」
そうしてその剣を突っ返してから歩いて行く、なんとなく走った。彼はその後ろ姿を見送り影へと。
あぁ……イタタタ。妙な事をしでかしたか、僕もな。
「そうよ、そうね? ねぇ……、アナタ良いのシュトルツァ? そんな事したら大問題に巻き込まれますわよ、この学園では一応隠し通すのでしょうが」
その言葉に頭を撫でてくる、その幼馴染の眼は、それはもう彼では手の届かない「ねぇ、分かってるのかしら……? あの子はアノ皇帝さまのお妃なのだから、ソレで良いのかと言ってるのですよ――」
その冷淡な言葉に眉根を上げた。それだけで彼は。
「ねぇ……、もう一度言うわよ。私も報告せねばならなくなるわよシュッツ。せめて女遊びだけにしなさい、どうせアナタは……、まぁ、長くはね……、ふ、ふフフ」
まぁでもあの女を奪ってみせての、その捨て方も見ものですわよね。
アナタが女にしたと、そう言ったらどういう目をするかしらぁ――アレは。
「そうかい……、そう。冷淡だな。僕はでもね……、キミとだけは特別だと思ってたよ。結婚しよう……、今からでもさ」
「いやよ、アナタのような人間、私ならば決して近づかないわ、フフフ――。アナタの正体を知ったらさぞや驚く、普通の貴族なら決して」
その言葉に鋭い目をする。幾つかの事実、そしてそれに連なる屈辱。それでもキミは……、君とは結婚を約束したじゃないか。その言葉に深窓なる令嬢セシリアが嫌そうに払いのけるから。
「でも、どうするつもりなの。もし私みたいに本気で気に入ったのなら、止めはしないのですがね」
「ふぅむ……、どうしよっかな~~」
軽く幼い言葉を吐き出すので髪を払う。嫌な雰囲気だ。




