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「やぁやぁ、アール:ヴァレンティン、光栄ですよ~、アナタのような方にご参加いただき、さぞや今回の主賓たるあの勇なる者もお喜びです」

 そこは華やかな舞台、魔法の淡い光に揺れるステンドグラス、若くとも厳しくシツケられた所作と煌びやかな服。


 わぁ綺麗ぇ~、グラレス~、あなたなんて素敵なドレスで。あらあら……、でも魔物ですかぁ、私はあまりそういうのは怖くてねぇ。えぇでも、実はこれ北で飼育が進んでいるぅ……。


 デューク(公爵)、マーキス(辺境伯)、アール(伯爵)、ヴィスコンティー(子爵)、バロン(男爵)、それをも抜きにして幅広く。

 音楽を奏でている、食事も豪勢で誰も彼もが楽し気で、そうして何よりもその主賓を……。

「なぁ、それでだ、あの勇なる物はどう扱う……。大事だろうに、キミは今正に世界の正義を得たんだ……」

 笑う姿、それはあまりに大仰だとね。


「まぁでもよくやったよ、君の御父上は。何せどこまで教育を受けたかも分からない異世界からの物を前にして、上手くシテやったのだから」

「フフフ、ホントだ……、あ~んなギアスまでしてやったしな~。これで世界は安心だぁ~」

 まるで聞かせるように悠々と、その突っ立ったままの少女を見やって笑う。

 だが最大の懸案事項は過ぎたのだ。



 あのままもし勇者を秘匿されたまま外へと出られたら最悪だった、交渉すると、自らの足で王城でも目指されたらまずかったから。

 それすなわち王との交渉――並ぶという事、最悪王をも選ぶ。

 封建制、しかも千もの故郷を異にする者を従えて公に悪感情でも示されていれば最悪の状況と言えた。



「全部全部丸く収まったなっ。今からは民も一層敬意を払うだろうねぇ……全ては王の御業に他ならないからさ、なんせ『天爵』となったんだよ!」

 人からもらいうけた物を、受け取った爵位を人爵と言う。儒教の教えだがかなりこの世界では強いのだろう、だって「こらこら、あまり天爵などと口にしてはいけないぞ」

 そうだよな……、天爵とは品位、神が与えた生来の徳を表すがな。ただもはや我らは大公をも目指せるかもしれんのだ。


 そう、ただこの世界はファンタジーだ、炎を実現させ風を操るゆえ。


「だがそうしてこれからの政治への大いなる柱となるぞ……、戦いの主導権を取り戻したなぁっ!」

 それに対し顔には出さない。だがその通りなのだよ、今正にここでその謁見が行われているから。何よりもこの一大事に駆け付けて誰も彼もが目の前でひざまずく、その未来たちがな。

「そうかい……、分かった。まぁ良いだろうねぇ。僕から王への勅をお願いしても良いよ、だって確かにキミはかわいそうな部分があるね、何せキミは兄の国替えの犠牲となった」

「あ、ありがとうございます! そうです、そうなんですよっ、なんとお心の綺麗な方だぁ……っ。アルイザーク家の君よ、選帝侯の中でも筆頭たる王の申し子よ!?」


「では……っ、では私にも! あの勇なる物をなんとかお貸しいただきたい……是非にっ、なんとかお願いしますよ、大いなる子息たるアールにお願いしたいんだ!」

 私もだ、それはわたくしもですわ――! 是非是非一度ご相談を、アール!

「いやいや……、その前に私をアール(伯爵)と呼ぶのはやめてくれないか、だってそれはまるで……」

 ハ――。


 渇いた笑いと共に並べと。彼ら彼女らはそっちのけでひしめき合っている、私が疲れる前になんとか話をつけなくてはならないのだから。だが……。

「ですが見ましたかぁ~、あの子の……、勇なる物の姿をぉ」「えぇえぇ、今も端でうずくまっておりましてよ。ただでも顔を合わさなくて済むのが幸いかと……、フフフ」

 あんな辛気臭い黒一色のは。

「……――」黒めが、そうだ。さっきから誰もいない場所で一人佇んでいる。



 退屈過ぎるのよ。そうね、正確には見られているだけだわね……。そこそこの洋服で、それは自分の歓迎会なのだと聞いた。舞踏会を開くというから来たの。そうして待ってはいるが誰も来ない、異世界に来て一人で。

「あ、あの……? 私は……。私、これから何をすれば良いのでしょう、何をどうすれば」

 一人作業着でその給仕さんらしき者へと声をかけるものの、あからさまに無視をされてしまうのだから。ただただ自分の前には少しの軽食が並べられ、勇なる物、この学園に来たる。そう銘打たれたパーティーの用意があって。

 それは別室で。


 すぐ先ではまるで世界が違うかのように、かの選帝侯の子息という子が催すパーティーが催されている。

「なぁ~~?誰か向こうにも触れてやるべきではぁ~? フフフ」「でもドレスも持ってないのだろ~う、まさかまさかだ、あーんなみすぼらしい庶民には誰がっ」

「しかももう嫁入りが決まっていますからねぇ、まぁ~……、顔とカラダは見事ですが。ふん――価値はないですなぁ、本当に」

 豚を一つまみして、さぁワルツの練習を。その使い捨てとなった物を見やる、挺身姫(Devoter Princes)はアレで良い。助けさせてやれ。



 そうして音楽が一層響く、今や超星が降臨したのだ、王家筆頭は正にこの世の春。今まで自分たちの親がどれほど気を揉んでいたかを知っている、今こそが忙しい時、新しい外交の始まり。

 前を通り過ぎてく少年少女たちは楽しそうで、もう既に廊下にまで溢れてるの、彼らは嫌味な程にコチラと目を合わさないし。


「異世界ね……、そう……」

 そうかしら。


 微かな音楽の一人での舞踏会。初めてのドレスとガラスの靴を履いて黒髪、たった一人。さっきから座る事も見咎められてて食事に手をつけると怒られる、礼儀に反すると。

 つまむように私を彼らは。

「ハッハ、しかしだぞ、アレはどうやら神をも知らぬらしいですからなぁ、いやはや恐ろし~~ぃ。じゃあ何か? 人は一体何から生まれるのだ? だから異世界なのだと」

「神をも持たぬ虫けらだよっ、それが力だけを持つなど甚だ卑しいなァ」

「だがしかーし、この正しき姿になれた事を彼女は感謝すべきだろうねぇ!」

 ハハハ。フフフ。あ、閣下よ、ワインはいかがか……、我が領内特産のね。なんだぁ? こんな時まで商談かねぇ? ふっふー。


「でもナァ聞いて欲しいっ……どうやら違うんだ、妙な悪魔崇拝者らしいぞ! あ奴らは王にも服さず自分が属する貴族さえ不明瞭、あまつさえ神を複数も持つという!」

 えぇぇ!?か、神を複数もですかぁ……っ。その言葉に眉根を寄せて驚く面々、信じられないんだ、あり得ないから。


 笑い声と共に良い音楽が風に聞こえてくるの。

 ずっと外を見つめてる。

 あの竹刀を持った笑顔を思い出せるから、近かったあの日。



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