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「ふふ、今、複製するとまずいけれど、良いか。ヘェぇックスッ! 1真理【ライトニング・ボルト】で4点への+5を」
大きい。
俺の全力でも届かないだろうか、俺は0/4だぞ。和樹が固唾をのんで。正直、人が跡形もなくというのはこういう物かという。9は避けれるの範囲ではない、飲み込むほどで大きさと速さであって。
威圧も。
2枚の増幅カードからの力の流れ……弾けて、目の前には光るだけのチカラが溢れる、今のオレには分不相応過ぎる電撃、力の波が。
今、放たれて。
「くそ――、だったらば、0コスト【切迫】シールド+2! 能力を発揮するために1ディスカードののち1枚ドローだっ、そのディスカードの対象は【誤算】を!」
すると【誤算】は破棄ではなく力を持って発動するんだ。シールド2&【ショック】同等の1ダメージ、かち合わせ勢いを殺し「ほぉ、なるほど。コンボね。ぐじジ――こんな所でうろつく割にやる」
そのハエの目が妙にざわめいた、そうしてもう一枚を引く、それは「【お守り程度の幸せェ】!」
5点分を手札からひねりだしたんだ、和樹さんが震える足でうなずく。ついでに【お守り程度の幸せ】も複製だぜ。
そうして俺は秘刀を出して、複製したシールドとともに解法を。
「レイヴン・アナセマ(黒鳥の凶兆)――」
解放される呪符は形を変えて包帯の様に空中でまとい、残った4点打撃、それを見事に切ってみせて「へぇ、やっぱりすごいわね。その呪いは、かなり強いの」
恐らくそういうタイプの武器武装を持ってると軽減は可能なんだろうが「うぐぅうう!? 腕がぁァア」
「フフフ、呪いって感じ。良い匂い……」
焼け焦げた、笑いながらヤツは今も砲撃を繰り返して来ている、和樹が背負って逃げてくれるが、モンスター召喚なんてある程度2の次であり召喚自体もあまり行わない。
だがヘックスだけは確実に殺しに来てて、あとコッチは毒の瘴気がさっきから焦燥を焦がして、焼いて。削られて。
カードを引けば使い、カードを引けば使い、あは、当たっちゃったー……。
【ショック】のおかわりが「あ、クソ、これ避けれないやつかよ――」
あっちぃ!? 焼かれて和樹。魔法かヘックスかを見抜けないと大変な事になりかねないな、背中を打たれて倒れたのを魔法でもう一撃。これは厳しい、なんとかしないとで。黒翼で斬るが腕がな……沼の瘴気で。
「うぐぅ――。一応でもコンボあるしな、2シールドがだぶつくからって【お守り程度の幸せ】切らなくて良かったよ、【切迫】は1枚ディスカード条件でネックだったからな」
カードを掲げる、今の俺の火力では相殺までいかないんだ、だから、よし、シールド+2が複製した。舌打ち。ただなぁこのシールドが毒を防がないんだよなぁ……。これさえ軽減すればなんとかなるんだが、あの2/2が憎い。非常に。
「なんとかしたいけどさ、はぁ……、はぁ……、手段がねえよ」「そうです、だからここは私が、なんとか私が斬り抜けないといけないのに、ぐぅ!?」
遠いエウリュノモスを必死に追い、そうして逃げられるだけのこの。
スライム娘も奮闘するが辿り着くのが難しい、必死にスカートを舞わせて毒沼をかける。
だから俺はカードに意識を集中させる、独特の気配がしてるから。魔法とヘックス、魔法は避けるのが良い、避けるしかない「慌てるな、心を落ち着かせてないと自ら死地へ飛び込むぞ。妙な光が一瞬だけ見えるんだ、ヘックス以外は避けるだけ――」
その黒翼でヘックスだけを弱化させるしかない、だがしかし痛み、熱い熱い波が何度も頬をかすめコメカミを傷める呪い。焦げ臭い匂いと充満する毒のなんか――ドブ掃除でドロドロの時のようなコールタールの臭い、この世界のカードは忍耐も必要か。
「ただ、ダメージ貯金が増えるこのコンボだけは嫌がるな、0コスト【切迫】そして【誤算】の破棄ぃ!」「ちぃい、面倒ね……。この程度のヘックス相手に私が真理計算をしないとなんて」
「相手のヘックスは平均して0コストでダメージ2で、俺のカード力を上回る、でもこのコンボだけはシールド2とダメージ1、合計3が使える俺は」
ただし、追放なので次は薄い。
青の真理0:【誤算】チャントタイム0:ダメージ1を与える。あなたの手札からこのカードがディスカードされた場合、ソレは代わりに追放となる。このカードが追放されたとき相手に1点ダメージを与えて良い、そして更にランダムであなたのデッキから1枚を追放する。
モンスター心象が集まり始めたのでやっと使えるコンボが。このカードはチャントタイム0もきちんと作用するし結構癖が強いが、ただ何気に青の行動を象徴してる気がするな。
俺のカードはもう、誰かを信じてじっと耐える為だけにあるから。
「はぁ……はぁ……、これはある程度確か、攻撃力と防御力には相関性があるんだ。数字が離れれば離れるほど対処法が芽生える。これはヘックス戦でも同じはず」
かなり強い一撃が目の前、黒翼を鼓舞するんだ、はためいて。
乱高下する力を上手く使わねばならない。
なんとか押して引いて、加島も必死だし、相手を追いやりながらしっかりとエウリュノモスの退路調整をしなければならないから。手に汗握り。
「でやぁあ! あぁやっと、見えました、道が」そうしてやっと端へ追いつめてあと30mほどになって「クソ――、チャントタイム布告、また沼かよォ!?」
ヤツはもう一度沼を起動し、真理1+X「Xは1追加で、毒を受けるたびに私達は強くなれるわ」
なんて面倒な奴だよ、沼地での戦いはこうなるのか。更に直径50メートルもの沼地が出現する予告、しかも範囲は重ならないらしくあふれ出すようコッチへ増えて来るし。
「ど、どうする、これ」
「難しいな、俺は数歩って感じっぽいぜ」
さっきからのこの腕が限界まで来てる、毒が怖いんだ。正確には俺の魂が震え上がって手を震えさせる、亀裂。裂けそうで。
それは悪い精霊が仕掛けるカードと毒を使った相乗的な魔法戦という物。
1分程度でしか来ない火力だが、このゲームを上手く使ってると思うよ、大して血や汗を流さず、自分だけが入れる城を成せば一方的に有利になれるというのも。
「おぃおぃ、森がなんか、崩れてないか……っ」
毒の要素が強まって来てて、大汗が出る。木が大声で鳴いて折れた。
両者ドロー「あーぁ、【毒沼】、チャントタイム1。次に打つならXは0で良いわ~」眉根を上げ、見せつけるだけのカード、まだまだ増やしていくつもりだ、このままだと逃げ場すらなくなるし更に相手が遠くなる。
あと羽が、もう限界か――。ガリガリと削られてヒットポイントと共に攻撃力までが低下してってるんだ。湯気が出る程に俺は、もう。
「へぇ――」
構えを変えたの。なんとなくだが察せられる。私はそういうのは一切分からないけれども。
「フゥゥ……じゃあ効率よく、斬る――」「ヘックス――確かに根性というか、ザ・カードでも珍しいその数字が乱高下するだけはあるわ。でも追いやられてるのは事実で、0真理【ショック】よ、ダメージ2!」
まだ、ヤツは少しだけ保って来ると。だったら更なる絶望を。
「悪いけどさ、俺、やめるよ」
「オマエ……? 和樹なにを」
防具を脱ぎ捨てる姿、その靴まで捨てて、ただもし、これで仕留められなければ終わりだぞ、和樹。頼んだ。握ったカードを抱いて切り札を。
「やっぱさ……、防御力とシールドは違うよなって。1コスト【堅牢剣者】攻撃力+1、防御力+2の加護を与えるぜ!」「なぁなぁナァ、なんでこれ1枚なん~? ぜぅぇったいプレミしとるよなぁ?オマエぇ――」
なっがいカオしやがって……、笑う、俺それなら死なんで済んだんちゃうん? 五月蠅いな、そうだな。2枚あれば勝ち確だったよな、でも重いんだよマジでさぁ。はぁ……、はぁ……、命懸け。ただ……降りてくるから、カードにも描かれている犬が守護する姿が。
複製無しか、俺がその【ショック】を引き受けるよ。
ラスト1枚0マナ。これで4ターンは持つんだ、まぁ、そんなに甘くはないはずだが。
「じゃあ……スーパー和樹さんだ、行くぜぇえ! おーーぃ、スライムーーッ!」
ずぶりっと、やだ、一歩目で帰りたい――。普通の人が溶けて2分で死ぬってんだ、尋常じゃない。でも悪いな、俺も勝たなきゃだ、迷惑かけたくねぇ。さすがにマズいという顔をするエウリュノモスが、彼女は弱い。
「そろそろ疲れて来てるよな、魔法と、あと逃げる体力とでさ」
びしゃびしゃと毒を飛ばしながら走ってくる彼を口惜し気に見てるな、目の前のスライム娘が勢いを増したからだ。仕掛けて来た、命懸けだろうと。
「死んでは駄目なのよ~?」手札2枚、真理0。
1枚は毒沼だ、そうしてなんとなくそのスライム娘の方を優先する、恐らくだけれども私を狙っている目が。
でも……思った以上に直ぐなのね、複眼が後ろの男を映すのよ、ヘックスを握り締める。汗が滴る。1撃くらいは当たるのだろうか、痛いのはごめんなのよ。けれどもどうなるか、1分は長い……。
毒の回りは遅いわ、毒って弱いのかしらねぇ。
逃げていて私、必死に「さっさとくたばりなさいよ、スライムめが――」何故当たらない、ナゼ。認めたくはないけれども私の魔法もいまいちかも。スライム娘が抜けて抜けて、毒をかぶっても抜けて。
「はぁ……、はぁ……、もう動かないで! 通して下さいっ……通して!」
その深く突き刺したウサギを、剣ごと沼へ抑え込んで、切り取った。
そうしてすると十分近づいて2人の人間、半径50メートルなら毒沼であっても12秒くらいで、逃げるエウリュノモスが迷っていて「加島のスライムを離脱させるッ!」驚くんだよ、そんな事が可能なのか。まさか何か――「でもだな、戻すんだよな……」
え!? そう、このフェイクに引っかかると思ったよ。なんせスライムのダメージは未知数だからな、加島のダメージはその鎧とスライムが受けてるよ。だから【地獄に降る春】の対象で迷い迷って……そこへ和樹さんがタックルだ、しかしそこへマズい事に「ドローっ! 消えなさいよ、【ショーーック】!」
白骨の心象がカードを砕き炎が走る、至近距離だとぶっ飛ばされてしまい。残りHPはもう。
「フヒヒヒ、甘かったわねぇ、これで時が」「逃さねえよ――」そこに見えたのは、ナゼ? あぁまさか本気で呪いごと来たのかしら。
「ひ――!?」それはそのまま、ドサ――、 どどど……「がはぁ……、 あぁ……?」自分の、胴体を見つめている、うんまぁ、それよりも、面白いのはコッチね。
「迷わず斬ってからそんな顔するなんてね? 面白い わ ょ 」せせら笑う、木々や沼へと響く声。ヒヒヒひ―――。
そうしてすぐに毒沼と共に消えて行き、サレンダー無しか……。冥界の住人だからか、それとも。死体と共に残ったその光るカードセットの得も言えぬほどの哀しみの虹。




