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例えば呪法や幻術、神聖術式、これらが全部ノーマル魔法とは違う、違うと断定できる理由がそこにはある。だって一つの理を分割しているから。
魔法とは何か、それは法律として定められる、その言語であり、それはまるで人が肉をつけて陸を歩き、酸素を吸って二酸化炭素を出す。手で道具を作る、いつしか決まった音で言葉を定め始める。
その手で六法全書を作る、従う、ただ言語以前に肉とホネとが存在していなければ法はない。
無から脊椎動物を生み出すか地球環境をも生み出すのか。世界の連綿たる混沌の理よ。
だがしかしだ、理という言語を用いれる種族は片手ほどしかいなくて、だぞ。これよりも劣る行為でしかないというのにニンゲン、その喉はその意志は――。
「それは世界の法、人間が生み出した歪んだ思想、思念、深く根底を蝕むような民の邪気を吸っていて、気が狂い、魔法、それはありとあらゆる苦しみにもがいて死ぬ――」
だから魔なのだと。
「そうそう、そうだよね~? そうしてね、しかして人だけが鋼を持つんだよ、それは勇気のシルシだから! 鋼だけは理なんだな、でも意固地で誰にも揺るがされない、でも美しい――。だから貴族たるは尊きをもって銀の鋼で光を照らさねばならないと、これが各国の厳命だし王からの指令でもあるよ!」
ひょこっと少年も加わっていた。二人は笑う、ツインテールを持った少女と、少しまだ幼過ぎるニキビ顔で金髪の少年が私へ。
でもアンタは昔から剣術どころか運動全般が苦手じゃないのよ。えへへ、でも恰好良いよねー?
「そう……なのね。剣だけが、切り開く――」
うなずく。そうして私も初めて握った時、感動した鋼を――そのしっかりと整った白銀を触るが、熱い。
人肌から吸いつき体と同じとなってそうして伝う先端は炎の熱さだったのよ、何せ炎を斬ったのだから。少し苦笑する、私は本当にそういう世界に来たんだって。
魔法を斬ったので独特の感触へと変化する鋼を楽しむ。
すると深刻な顔で彼女は「まぁ……あと何よりもねぇ、これ守らないとって、ビビってんのよ。呪われるじゃない? 戦場でまぁほら死ぬじゃないの? 兄弟・親戚とか巻き込んじゃってさぁ、いきなり大きいの撃たれると迷惑千万なのよね~、ホント」
大規模魔法、いっきまーす!で戦場を撃っちゃったら出陣してた貴族の子弟ごとぶっ殺す可能性が高まる、だからウソでもなんでも剣士のみが選出されるのだと。
そういう意味では魔法使いは駄目で使えないという風潮が強いらしい。
「キミには分からないだろうけど相当恨まれるからね? 貴族仲間を殺すとさ。だから仲良く殺さない程度に戦う為のルールだよね~、身代金とかもそうだしぃ……そういうデカい魔法使いがいる時は宣告するルールがあるんだよね~」
貴族の称号としても魔法うんぬんて言われると侮辱なんだ。
「あとそれで何より全員が魔対抗グレイスの重装備よ、魔法ってのはね? 庶民でも乞食でも使うから、だから徹底して守れるように作ってあるのよ、むしろそうなってこのハガネだけは聖域よね~」
胸へと供えられたその綺麗な宝石を見せて来るから。
「ふ……、うふふフ……、そ、そうなのね」
笑うしかない。思った以上に魔法のルールっていうのは暗黙だけれど明文的で切迫してて日常だって思った。あとまぁキミはヴァンパイア器官はないしぃ?
「さっきもバンバン斬れてたしさ? アンタほんと剣だけを使うと良いわよ、全員がホントは剣の授業が苦手だしさぁ? バケモノするぎるわ……、シズーク。私はカミンス・ラズライトっていうのよ」
「あぁ、えぇ、ありがとう。私は知ってるだろうけど、構呂木 雫。仲良くしてくれれば助かるわ」――ただ、手を出した所であっさりと無視して席を立つから、ただしね……、あの辺境伯だけは別だよって事は。
「ご、ごきげんよう、マーキス・デルブロア、お目にかかれて光栄よ」
その男へとしっかりと会釈するが、だが相手は無愛想なまま。そうして制服が違う、貴族相手なのに素通りしてしまうが恐らくは同級生。
だが頭は決して上げないで彼女は、彼は。
「アレは駄目よ……、あれは辺境伯の出だから空気読まない、あの人達だけはホント駄目――」
震えているのだ、他のも。
「やぁ、デルブロア、いや……マーキスか。マーキス:デルブロア? ご機嫌は」「ふん、そうだな……」
「ねぇ? 数少ないデュークの子息相手であれだもの、恐れ入るわよ。最高権力でもアレよ。辺境伯は伊達じゃない か」
「辺境伯? それってそんなに偉いのかしら……?」「そ、そりゃそうだよぉ、何せ軍事線に最も近いんだからねっ。誰もが恐れる……、この侯爵の箔号は例えデュークの子息関連でも欠番。王族の血を有する家でも配慮するんだよ!」
デューク:公爵、マーキス:侯爵・辺境伯、アール:伯爵、ヴィスコンティー:子爵、そうして一世代だけのバロン:男爵。序列そのまま、5等爵。
「覚えとくと良いわ。あのマーキスだけは魔法継承者が多いし、それで別称で魔大公と言われ――」
貴族の中でも異端中の異端。侯爵を名乗っている黒の辺境連盟というらしいの、王侯貴族はあまり黒を名乗る事はしないらしいけれども彼らだけはブラックライトニングを自称していた。
すると突然、その殊更に異様な雰囲気の中でソレが近づくのだから、コッチへ来る。私がさすがに……。
「フフ、貴様が勇者か……。我々の一番の属剣になるのか、頑張れよ――」「その言葉は聞き捨てならないねぇ、マーキス。おぃ出しゃばるなよと……、これは王家のブレイブだぞ。王がお認めにならなければ動きはしない!」
その目の前に立ちはだかるは王家一党、さすがに新参の私でも知っているのがすぐ割って入るから。あの2人は隅へと追いやられてて、私は意味も分からず。
「しかしのんびりとした貴様らでは分からんだろう? 最前線での流儀だよ。それはもしもだぞ、馬のフンが必要となればどうするかだ」
「うん、なんだとぉ? そんな物は今は関係がないだろうがっ」「いいや? 何せ答えは簡単だ、お前達は言われた通りに手ずから集める、それだけで良い。それが平和だ」
「な、何をォ――、貴様ァ、俺達に馬糞などを扱えと言うかよ、マーキスと言って調子に乗りやがってェ!」「王のご采配までバカにする気か……っ、大体魔物ならず他国にまで後れを取ってるのは貴公らの責任だろう!?」
「あぁ、思った以上に馬の調子がな、悪かったんだよ。すまないな―――。命令書には高貴な馬のフンというべきだったかな?」
黒き一派が笑うその姿に歯ぎしりする様子はそのまんま子供のようで、あんなにも取り繕おうとするのに今は。ただ私にもその飄々としたその雰囲気はあまりにも傲慢性を感じるもの。
特に最高位のデュークの連合ともなれば普通では、ただそこへ教師が来るから。さすがに彼もそのままではいられないが。
「フン――。じゃあ王太子殿下どの、俺らとは王城では会えないだろうし~、せいぜい今の内に仲良くしとけよ。さもないと辺境まで来る羽目になるぞ」
「正に馬のクソを献上する事になるなぁ? その意味が分からんかったらしいがな~」
軽い言葉を吐きながらも睨みつける眼力は、その赤の瞳を持った黒髪の狼を中心にして。すると不意に首輪を引いて、その怒りのイカヅチに手を焦がしながらもヤツは。
「俺の名はマルスフィカだよ。さっさと子供を作れよ、そうしてすぐに戦場に来い。分かったな雫――」
その冷たい感覚の青年をにらみ返す、だって彼からはまるで――。
すぐに払ったから。その冷徹な様子に唇を噛むの。
「私は馬糞じゃないのよ、アナタの為に用意されたわけでもない。のんびりと馬のお尻ばっかりを気にして、肝心の剣を見て来なかったのかしら?」
錆びてるのかもね。
それに嘆息。赤目がうっすらと笑ったが、それが挑発だと言うのも分かって。
ほら見たかよっ……勇者ですらもお前らを、騒いでいる声が聞こえるけれど、正直かなり不快で。すぐに私は道を変えたわ。




