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「今日はこれまで――ッ。もう少し体力をつけろよ加島ぁ~、ふぅ~……。明日は複数対1をやるから」「ハイ、はぁ……、はぁ……、はぁ……、ありがとうございます、師匠!」

 その言葉に頭をかく、汗を大量に流して輝く瞳にもなんともだ。少し恥ずかし気でそれは足早に出て行くから。正直、あまり見て欲しくない。

「ねぇ……、君は結構ドライな性格なのかなぁ?」

 出た瞬間のその言葉に。それは幾度目か出会う少女、そうだ、今この学園で最も増大している女たちだった。


「てっきりぃ、幼馴染の方へと執心かと思ったけれど~、そうでもないらしいし? ねぇじゃあ、ちょっとだけお話しない――?」

 その崩した制服の少女に笑いかけられるから。他にも結構いる、なんとなく嫌な雰囲気。

「あ、ソレって……そう思ってるんでしょー、まぁそういう事もあるけどね~……。でも……こういうの推奨してるしネぇ」

 強いの限定でサ。

 ねぇ良いじゃん良いじゃん。

 腕を引こうとするのだ、その光りに集まるようにソレらは群れている。まだ少数だがそれでもか「失せろ、生徒会の犬どもが――」


 辛い現実は。救済という物の欠如というのは必然を生み出す。

「あぁいうのがもう堂々といるからな、近づくなよ、取り込まれるぞ――」

「むしろだよ……。もう取り込まれてるんだよ、この世界はいつか向こうと同じになるんだ」

 俺が指をさした先は壁で仕切られてはいるが、同じ空気と同じ食事、そして同じ言語の異世界。娼館は多かったし街中でも声をかけられる、むしろ普通なんだ。普通。


 気にくわないのか、それに首を振ってその盛況な光の中へと帰っていく男。こんなに剣が必要とされるのは嬉しいが……、それが既に剣道からは遠く離れていっているのは。だが仕方ない、仕方がないから。

 そうだよなこの剣はでもゼッタイ……――。




「あぁ……、いってぇ――」「いつつツ……」

 朝、下で寝て起きて。言える事はそれだけだ、爺さんかと思うような呻きで目が覚める。比較的柔らかい和室などは当番制、それでやっとワラが敷かれ始めてるが、なかなかに辛い世界。


 ぼーっと手指で口をゆすぐ。歯磨き粉も節約、なんで歯ブラシ持ってなかったんだろうなって。そうして外へと出れば色んな奴とすれ違って、加島と落ち合って。待ったかと聞いてスマホの安全圏、和樹が遅れてきて笑い。

 桜色の少女だけはまだ結構パリっとしてるな、男二人はもう駄目だって。

 それはまるで寮のような。


「おーう、和樹さん和樹さん、ヤッてやりましたねーっ」「もっちろんよ、俺っちはスターになるんだからなぁ!」「和樹ーー、ナイスぅー!」

 好調で好評とばかりにウデを振るんだ、しかも複数相手に和樹がだ。まぁコイツは仲間が多かったからとは思うが、でも俺としてはなんだかいつの間にかと。

「いやーー、やっぱあの本は良かったらしいな~、はっは。噂になっちまってるよ照れるぜぇ。生徒会もお墨付きだわ~」

 当分のMVPよナンバー1。


「本? あぁおぃそれ俺のカード勝利のじゃねえかよ、俺の戦利品だなっ?」「いんや、俺の戦利品だな。良いじゃないかよ、どうせ取られるんだ。お前は雫ちゃんのせいで警戒されてるし浮いてるから意味ないってぇ」

 ぴきりと、事実だが、あぁそうだが「いや、そうだが一言言ってけよ和樹、大体お前は死ぬ可能性は低かったろうが!」

「馬鹿言えよぉ!? 俺だってなぁ、死に物狂いだったんだぞ、お前は尻をかけたけどカードもらえるから良いじゃんさ!?」

「それこそ馬鹿言え、俺の尻は高いんだよ、ほぼほぼ俺一人じゃねえかよ!?」

「ふッざけんなっ、俺はスライム帽で命削ったんだ、本気で髪まで抜けてんだよぉオっ!?」

 あ、ごめん。ごめん、すまん。


 これが後に問題を起こすんだが、まぁ今は靴を履いてだ。


「あぁなぁ、キミだったな……。ねぇ頼みがあるのだよ、キミは色々とする気なんだろう? その召喚術で」

 そのときサバっとした雰囲気の女教師が。

 珍しい事にこの学校には生徒会つきの教師というのがいた、それが彼女であると久しぶりに思い出す。あまり接点がない。

 確か名前は音田(おんだ) 沙慈華(さじか)。

 真ん中で分けられたそのなでらかな髪を直す仕草は大人で。スーツを着込み、前髪は長くて胸程にまで伸びている、そして後ろも長いな、腰まで来るその赤紫の毛。


 顔はあまり冗談が通じるようには見えない感じ、美しいのだが無関心、無感情。

 そうしてメガネを通した目は。

「それで、なのだよ。恐らくその依り代といった物が欲しいはずだ、召喚術も調べてあるんだ……。それは相当高価でアースラいう物を必要とする、そう調べたんだけれど……」何か違うかな?

 うなずくがまた面倒なことを頼んで来そうで嫌な顔をしてしまう。この情報速度、そのバイタリティーの高さに心で笑い、そして舌打ち。


 昨日の本も特急で会長さんが飛んで来たしな。

「あぁ、それで……? 何をして欲しいわけですか?」

「そうだね、とりあえず技術の蓄積こそが大事だろう。そう思わないか? だったらなのだよ、我々に任せて欲しい、ギルド辺りに関わる気だろうが待って欲しい。今正に当校の真価を問われているのだ」

 そのYesとNoのない言葉。でも確かにそうか……、この世界にはアカデミーは無さそうだ。正確にはほんの一握りの人間だけに開かれている、ここでこの場を失えばもう学び直す事は難しいか。

 ただ……、それで恐らくだが、これは俺が今から積み立ててたので買い取ろうとしてるのを読んでの事だろうな。ただギルドではないし相当な熟練がいるとは知らないだろうし。


「いいえ……、それでだ? 君への利益なのだよ。何せ必ず成功するんだ、だって美術教師がいる、そうしてマニアもだよ? 今まで私達は何千何万という美術を知り探求し、そして極めて来たんだよ、もう今のこの世界の比じゃないほどの――」

 その言葉に、「確かに、一理ありますね」技術としては遥かに上だ、既にルネッサンスを経験し、日本でもすさまじい力の蓄積と発展を遂げた美術史。あの漫画やアニメなどはもう生き生きと命を吹き込まれている。


 その時カレが現れた、ほぼ知らないが恐らくは美術部の教師か。少しボロくて汚いのが。

「あ、あぁ……、必ず、成功させるよ、開発を任せてくれてありがとう。キミが戦えるよう死ぬ気でやってみせようか……我々はねぇ、既に研究を重ね始めているから安心してくれぇ」

「あぁ――、フフ。どこでやらせた? まぁぁ……こんな糞をナ」

 そう言うと投げ放つのだ。その美しく仕上げられた美の一品を、現代の力まで駆使した革新の1手を「基礎がないナ。魂が乗る物は安くはない、命を削れ……死ぬまでやれ、ナゼ眠った、ナゼ飯を食べたァ? そんな事で目を離した隙にっ……、全てが剥がれ落ちるのだッ!」


 その言葉に彼らは落胆を隠せない。当然か、用いた色とりどりの技法はこの世界より遥かに知っているのに、芸術を分かった技術なのに、全く劣ると言われたのだから。

 それは欲目ではないかと言われたが、恐らく真実だと――。


「召喚か……、召喚、ふぅ……、ふぅ……、それは本当にヤバいんだなァ……。いやでも、私はしっかりやったよ……っ、やったんだよ、本当なんだよ、それでそんな――おかしいだろう」

 しっくりこないのだろうが、ただその続く泣き言を隣の音田 沙慈華が首を振って、さっさと戻れと冷徹にして来るから。


 それは車一台を自分一人の手で生み出す、指先で、その鋭敏な感覚で、時には血でニクで心にヤミを抱える事で。それが召喚だ。


 俺はまたあの高価な材料を仕入れてなんとかせねばならないだろう。

「あぁ……うん、そうか……、で、でもね、必ず君に間に合わせる、待っててくれ、待っててくれよ……待っててくれェ――!」これで負けるはずがないんだ。負けてるはずがないんだよぉおお!?

 信じなければならないが、正直だいぶとキツイだろう。性格も悪そうだし。あの素材を買い求めるのは命を削るという事、せっかくクモの爺さんに積み立ててたのも剥がしてしまった。



「だがしかしだな……、なんとかして使うしかないのが俺らだわ」

 俺はその不合格と言われたものを握る。カードを掲げた、するとそのカードへと依り代が入り込み……。

「リン、あなた――」それは大地の召喚陣から湧いてくる、地中の時からもう必死に飛び上がり、こんな忙しい召喚あるのかと。肉球踊りさく裂で犬は今、カマキリになりました。

 そうして飛びだしたんだ懐かしい香りにもう、わぉん!? ワォオオン! ダッダ、ダッダと駆けてくるから。

「懐かしいねぇ~、リン、リンぅぅ――。ごめんね………、でもまた一緒に少しだけは……っ」

 まさか異世界に来て家族が増えるだなんて思っていなかった、必死に駆け寄って来る老犬は。抱きしめる、必死にベロベロして撫でてもらい、すり寄っている犬。なかなか良い毛並みだ。


「フフフっ。くすぐったいよぉ、じゃあですね、はーーい、こっちがアナタのご主人様ですよ、リン」

「あぁ……、なんかピンとするな、俺の時は。おーヨシヨシ、こいつ思ったより凛々しい顔をするわ、リン~」

 兵隊さんごっこでもしているのだろうか、ワうっとばかりにこちらにその身を反るほど敬礼だ。ただし、舐めるのは我慢できない、顔を撫でると指をペロペロ・テヘペーロ。


 ただ老犬なのは仕方ないかな、体なのか魂なのかがかなり弱っているのが見えてだ。

 それでも彼女だけは別なのだろう、恐らくはエネルギー供給源として成立して。

「時折そういうのもさ、いるけど珍しいとさ……。あの爺さんですらそう言ったんだ、ただ性能は言わずもがなで賢い」

 そのゴブリンを引き倒した、かの飼い犬は忠実で素直。


「リン、よくやったよ~」

 わぉんわぉぉンっ。

 は、は、はうぅん!

 ヤル気は十分、使えそうだ。


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