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「はぁ……フゥ~……、怖かったぁ~~。いやーーまぁでも、金の事はなぁ? コッチ、しっかりしとかかなぁって? へへへ」

 天パめ、天パめが「でももう組の奴らまじで死にそうだったからさぁ、ホント感謝してよォお、なんやったら体でもええんやで、モテるかね?」「そうだな、そうだわ。いや、お前はホントありがたいわ和樹。フフフ」


 加島も笑った。勇気を持たねば進めない世界、今日も肉を求めて森ダンジョンへと潜る。

「あぁ……、えと? でもですね……、ここは少し虫さんと、あとゴブリンさんが……、あ、えぇ」ウ―――。うぅぅ。


 胸で抱いたその剣を抜くが、そこには戸惑うしかないか、女子は苦手な分野が多いような気がするな。襲ってくる化け物は総じて多くて小さいんだ。ワラワラざわざわと、ざわめく昆虫たち。

「あぁ、やっぱ爺さんの言ってた通りかよ。あんまり召喚術師には良い場所じゃないってな」

「そうですね大きいですね……、芋虫がゴロゴロと来てて――、お、おぉぉ……っ」

 緑の汁が飛んでますヨ――ッ。様相が違う、いっぱい飛んでるし数が多いんですぐに横から後ろから来ようとするんだよ。後衛ぎみの和樹をも飲み込もうとする虫の群れで、俺もだな、取り留めなく森を跋扈(ばっこ)する小さな脈動。


 だから最も後ろが上手く回転する事でヘイトを分散、ゆっくりと戦線を伸ばす事を言われてて。俺も戦う、蚊柱のような群れを斬って、そうして緑の血が大量に流れてはたき落され……。

「陣形の維持は難しいがな、それでも防御を固める……っ、抑えておいてくれスライム!」


 召喚したスライムは完全に壁として機能してるな、ここは虫が多い、だからこの防御力ならば簡単には押し通されない力で。

 期待するのは攻撃よりかは耐えてもらえるデコイに近いか、1/3の強み。

 自動ハエ叩きの如くぺしぺしと「スライム、結構良いな勇……、よし、俺もなんとかなって……っ」

 剣を振るう、小さいからむしろ手数勝負、右腕の練習とばかりに虫を蹴散らしてゆくから。手札は余ったら使う感じで、和樹なんかは基礎を教えるための相手でちょうど良いし。


「いけ、0マナ:【ショック】」1ダメージ。

 炎の一撃で飛んでる複数とデカいテントウムシを落とす、そうして足元の蛇よりデカいミミズを薙ぐから。食えるとか言われたその……。

「ちぃ!? でもこいつ等ってマジで意味なくな~い? なぁ勇? なんか肉とか取れないじゃんサぁ!」「あぁそうだよな……、ココは確かにあんま冒険者来ないらしい、だから逆に依頼が多いから――」

 食害が多くて駆除依頼が結構出る傾向があってだ、そうしてここらの実や草は売れる。しかも解体の必要もなくて魔石が儲かるし、一部は食えるし。


 ただ面倒なのは……。

「それでもゴブリンだけは、コイツは負債でしかないって事よ!」切り払う、買取価格100円~0円のそいつらは虫が戦っている間ずっと隙を狙ってきてウザいのなんの。操虫棍か何かかと。

「じゃあとりあえずだ、俺は1マナ:【眼前の憂鬱】1マナ回復し、そして次のドローを見やるから!」

 お、これは吹き飛ばしか~、必要だなぁ。よしよし、次に来るのを楽しみにしておく。そして噴射。軽いからよく飛ぶんだ、飛んでるのも落ちて非常に簡単に狩れた。そしてその小さな魔石を必死に拾って。


「ふぅぅ~……、終わりましたねぇ。でも良いと思いました……、和樹さんと私の前衛、後ろも2人だとありがたいです」

 太ももむずむず、体と髪を必死にはたく桜色に「あぁ、カードがかなり浮きそうだな、モンスターが安定しさえすればまだ手札3枚維持だし。ただ問題はなぁ……、スライム遅くて、探索なら1マナの価値があるかは分からん事かなぁ……」

 歩かせ……ノタくらせるとかなり遅いのだ、今は抱っこしてるが垂れてくるし重い。すると奪われて「ハァ……、ハァ……、いやぁ? だったらむしろ移動する時はこうよ、こうやってさ――」


 ポヨンと頭にのせる和樹、なんかアイスクリームのトッピングか、それがイキった東京夢の国ランドからの脱獄犯みたいに見えるが。

「じゃあ俺っちの代わりに後ろとか左右も見ててくれ、スライム!」「むも、むも!」

 なるほどと、うなずく。ただし「お前ハゲても知らねえぞ!?」「うわぁあアアアアア!?」慌てて頭のスライムをしばく様子、さてはお前の父ちゃんハゲだな?

 思わず思いっきり払ってしまい謝って撫でまわす和樹さんと、笑いながらスライムの使い方を思案する俺達。ちなみにコイツは魔石だ、朝にあの爺さんに見せたら彫刻家に任せなくて良いと言われ。


「ふむふむ……、この程度ならばワシに見せればいいナ。強いのも弱いのもな――」

 俺が今持ってるゴミみたいな赤い宝石を職人の目で見渡せば。ひょいと選んで目の前で握った「どうだ……? お前も幻想の命を理解していれば、これくらいはたやすいわナ」

 光る力。この時ばかりは和樹が加島を呼んだから。赤い魔石がゆっくりと生命へと変わる、神秘、淡く光りそれは太古から今へと渡るような……。

 繰り返し続く生の激しさと生き抜く優しさを再現して、炎が流れ水となる。命として凝固して……。

 あぁ~~……きれ~~……――。


「どうだナ……。ハァ……ハァ……、お前にも教えてやるが、ただ……最低5年はかかるナぁ」ふっふ。

 素人でも分かる、そのすごさを。スライムの事を熟知しているのだろう、生態やその強さと弱さ、習性までも。単純なスライムだからとは言えただ事ではない。何かが煌めいたのだ、手の内から漏れる温かい感触に自然と笑顔になる。


「なぁ、でも大丈夫か爺さん。あんま無理するなよ」

「あぁ……、構わんよ、今からお前を必ず1人前にする。これはナ、むしろお前にこそ覚悟を求めるのだ、多くを頼んだからナぁ」

 その眼はまだ死ねないと言っている、だが体は別だ「ワシも……、分かるじゃろうが平民出身だったしな。そうして失った……、全てをナ」

 あの日を忘れない。絶対に必ず取り戻さねばならない、悔やんだ歳月は年輪のように積まれて、それでもその芯たるを取り戻すために年輪を叩き割る。


 その温かい手に包まれ、幾つもの命と別れて握っただろう、何度も何度も挫折したろう手で、念を促されるんだ。

「覚えておけナ。握ったコブシはいつか必ずほどけてゆくぞ、だがな……、それを維持できるのは自らのみだワ。勇よ……、それには技術が必要になるゾ、早く見分けられるようになるんだ」

 そうしてそのカードは穿つ、敵を。


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