33
「あぁ~~、疲れたぁ――。でもやっぱ空の真中天でも太陽が墜ちるってのはすごいな。異世界だ……、こんなに必死になって死にかけて1万円ないのも」
あぁ~~真上のあっか眩しぃ……。
「えぇ、そうですね……、やはり辛いですよね。ただもっと魔石が必要なんですもの」「なぁ? ホント馬鹿食いすんのなぁ、ソレさぁ。助かるし仕方ないとはいえ次200万だっけかぁ?」かーー……っ。
そうだ、今日一日でマナを2つも消費してしまった。これでは1万2千円の儲けも9000円にしかならない。1ヵ月休まず稼働でも3人で30万もなくて。
汗だくの、薄暗くて魔物がうろつく世界。
でも加島、よく分かったな、あのカードが力を強くするだけってさ。
えぇだって、勇さんの言葉ですもの……。言ってくれましたよね、カード表記は気をつけろって。だからあれは多分ですが攻撃力とは違うと――。
うなずく、なんとなく撫でたくなって変な間が、 二人で赤くなる。 ニヤニヤの和樹。
すると夕焼けにたくさんの光が舞うのだ、ぽつりぽつりと上がっていくから。それは俺達が見た事のないような光だった、純粋なる温かい力が大地から。
「綺麗だよな、こんな光は……」「これが異世界、かぁ……」
大きい光、目いっぱい手のひらを広げても漏れるほどの光が無数に、身近に飛んだ。そうしてそれは羽が生えているんだ、無垢な笑顔の少女が見えて、光の中。
手を伸ばしても逃げない、むしろ癒してくれようとするのか。夕焼けに照らされ燃えたぎる紅の空が、それがゆっくりと上書きされて息絶えていく中。
その輝く光玉だけは照らし続けてくれる、蒼と紫が映える別世界でも。
「大丈夫……? ねぇ大丈夫ぅ?」「君達は大変だねぇ、少し変わってるけども。でもだから女王さまが友好を結びたいってぇ」
フフフ。ふふふぅ。
ゆっくりと寄り添った、体が軽くなるから。無垢な笑顔で聞いて来るのだ、痛くはないかと。
それは綺麗で涙が出る程で、そして何かが懐かしい――。
「美しいな………」
そうして惹かれるまま指を、顔がぼろりと「おぃ、ダメだ!」
すぱぅ!「ちぃ――、な~んだ、先約がいたんだネ」「なんだよ、損したじゃないか――」
その黒の軌跡に舌打ちする、無邪気そうな少年はそう言って消えて行った。空気は変わらず、特に異変などもなし。風がひんやりとして。
「これが……、異世界か」
無性に暗い。3人はうなずく。
そうして近代的で無骨でホッとする学校に還るが。そこにはガヤガヤと大量の生徒たちで、見るからに疲れ果てているが動けないのだ。順番待ち。
いやぁ……もうさ、売ってるの欲しいけど、やっぱ金とかかかるわぁ……。桶一個で1万位よぉ。
うわ、たっか……。そりゃさぁ、うちらが持ってるのは売れるだろうけどな~。でもあれは理解されるのは少ないぞ、なぁ?
そう、ここでは全てが国産で職人が全部手作業で作ってる。そう思えばわかりやすいか、この世界には自動化できる施設は限られていて。
「なぁ、それで獲れたか弓道部、普通の鳥とかはいたろう」
その言葉に無言で難しそうな顔をする。正直この1000人近くいる学校を生き残らせるには相当な数がいるだろうに、暗いんだ、誰もが。
疲れ切った顔で剣やその他を返してる者達は。全員武器は必ず手放し、あと収穫物を献上させられ身体チェックをされるらしいが。
「あぁ、でもキミはまず回復を――、ネェ緊急班来て……っ、今からすぐ処置をしますから!」
和樹に場所取りをしてもらいながら加島と二人で回復を受ける俺らは、かなりの傷に特別な仕切りに入りながらも……。
「ナァお前さぁ、あんだけ勝ち組を豪語しといてさ、なんでこんな腰抜けなのよっ」「バカにしてたよなぁっ? 俺だけが世界救う系~とか、選ばれた~とか、俺らをさんざん凡人スキルだとか恥ずかしいとか言ってよォ!」
お、おぃヤメロって……、仲間だけに向かうとか馬鹿か――ッ。
喧嘩やいさかいがココに至っても多いな、生徒会に持ち物を全没収されたのも火種。
ただまぁ実際だが、たかだが良いスキルをもらったのでヒト型を真っ二つでズバァアアします、なんていうのは実際怖いかと。いつの間にか取り込まれたのがいるし。
「え? いや……、でもですねぇ。こんなの少しだけ振り落とすだけですよね、はい――」
静かに落とすその、人一倍重そうなズタ袋。物静かでその笑みも変わらない、どこにでもいそうな。
殺人気質の萌芽はふ――と膨らむのだ、それは何気ない黒髪の少年で目立ちもしない、騒ぎもしない彼。
横目で見ながら回復が終わった俺は籠をズリ落として、剣を返し……。
「あぁキミ達2人は良いよ~、キミ達の剣は良い、なんせ特別待遇だから~。特に加島 虹炉さん?だったっけかなぁ? 君は常に持っておきなさいと」
その言葉に少し戸惑うが、周りを見てささやかにも頷く。幾人かはもう校内でも剣を所持している姿、警備という点でも必要な事なのだろう。
そうして魔法禁止の張り紙が靴箱に堂々と。
ファンタジーだ。
墨でドドンと、校長の象に翼を生やすの禁止! ファンタジーだな……。指輪を指から切り取って災厄の象徴ごっこ厳禁! あぁ……、うん、離婚物語ぃ?
「えぇぇ、コッチの和樹さんはぁ? なんでなんで、2人だけって俺はぁ? 一緒に頑張った俺っちはァっ」「はて? キミは誰かな。あぁ~~深く私は存じ上げないですね、和キンさんは恐らく大して役立ってないだろうとしか」
和樹がヒドイ言い草に泣きそうになりしがみつくので「いやいや、和樹は頑張ったぞ。3人で一応やれるだけはやってきたんだ」だからほら、剣の代わりにスライムな……。
悔し気にスライムさんに泣きつく和樹、そうして袋から取り出す獲物の山は。必死に抱えてきてて肩を回し「コッチが食える分だよ。大ヘビとかの死体だ、俺らも食った。スライムも少し……、ココ、この部分だけは食えるらしいな、なんか貝みたいだって」それであとこっちがな――。
ゴトっと取り出したのは本当に、完全に人間の死体だ。
何チームかがもう既に持ち帰ったようで驚きは少ない様子。でも、触るのをかなり嫌がるが。ただそれがいつの間にか無くなっていたのは。




