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野山の向こうから体操着で走って来る姿にうなずく。大急ぎで走って来てもう息も絶え絶えに「俺も一緒に行くよ、ハァ……ハァ……、やっぱ2人だと心配だしさぁ? 2人だけって聞いて焦ったわ、他のは数十人なのにさぁ!?」でも間に合ったか~~っ?
汗だくでも親友の笑顔のその様子に「なんか嫌な事があったな?」「あ、分かるぅ? いやぁ~、ちょっとだけキツクてさぁ、ア、でも、逃げたワケちゃうで?別に逃げたわけじゃないんよぉ……。ただ単に仲間を思って、そう仲間ヨ仲間ぁっ」ハハハハハ――。
その感情のない天パ具合に2人して笑う、ナカマという言葉がここまで軽いとは。
あ、ご飯食べた~? いや、俺まだやね~ん。あ、あ、催促してる訳ちゃうからな?違うんやて、違う違うぅ。ふへへへ――。
「あぁ和樹ぃ? でも良いのか?怒られるぞ~~。確か外へは順番で、ちゃんと全員が出るって話だよなぁ?」その加島が肉を用意してやってるので俺が串を差すから。
「あぁ~、そうなんだけど、いやめっちゃ辛いわ……、あの生徒会長サマが本当にさぁ? 特に文系を罵倒しまくりよ、もう役に立たないなら腕立てでもしてろーって」
相当キレたらしい、無能を視界に入れるなと。
ひたすら肉体労働と、そうしてドンドンと私物も検閲されてゆき教科書の一冊ですらも持ち出されていったらしい。一気に空気が変わり。
「全員がなー……取り上げられたわ……、覚悟した方が良いぜ。それでもう厳重にされたのが体育館と図書館で、それとPCルームな。アレらもう即行で立ち入り禁止になったわ、大回り推奨!」
あ、ウメっ、じゅるる……ぷはぁぁ……。
汁と肉を食べながらほっこりと危機を話す和樹さん。
それは茶色に染めた短髪と中肉中背の、俺より少し低い170センチ。肌は白い方だろう、笑顔とそのおどけた人懐っこい目が特徴的で。結構本格なデカいイヤリングしてる。
一応だがこれでも成績は良くて。
それで機械類も完全に没収されて生徒会室も完全に封鎖だと、いつの間にか衛兵と呼ばれる選抜された者が立たされ何人かが必死に作業している。不穏な空気が流れ始めているらしい、教師を眼前で殴ったという報告もチラホラ。
「そんで俺らはずっとずぅっと田植えに練習よぉ~、もう昼飯も一切出てねえよ~」「一切ですか……、それは、一切?」
「うんそうよ~? あとは剣とか弓の練習よ、でも結構怖いのよな……、全員がビビってるわ。ただでも案外魔法はさっくり打てる感じみたいだ、面白いってぇ」「おぉ、へぇ~、それは興味あるな。ただ弓ってのはそんなのどこにあったんだよ、弓道部は廃部寸前だったろうに」
「生徒会、だろうな……。すっげぇ根回しだ、教師なんてアタフタしてるだけだもん。そこが問題よ、問題――」
昼として出された雑草に戦慄して逃げたらしい。それは今、急転直下で行われている地殻変動。
「ゴミ箱も回収だ、急げっ……、急げェ!」
生徒会とその手足となる者達が走り回っている。ゴミを一か所に集めて必死に手袋で漁っているから。現物もそうだがチョークの粉に画鋲の1つ、水道の蛇口までも。そうしてそこらにあったカバンも勝手に手当たり次第に――。
「おぃ、ふざけんなよっ!? それ俺の鞄だぞ、この盗人ォ!」「良いから黙ってろっ……、これは生徒会の命令だ!」「命令はもう出てるんだよ!」
それでも阻む生徒をぶん殴った、剥がす、エ、エ、ちょっと待ってぇ……!? それ私の化粧ポーチぃ! オィ人の下駄箱開けんなや、何やってんだ、何やって――!?
慌ただしい、本当に慌ただしいのだ。あちこちで争いじみた事が起こって行く、部屋から物がなくなる、椅子から机から仲間まで。隠そうとするヤツはキツイ懲罰で――。そうなると黙ってはいられないが、それは剣を持っていて。
「争う暇があるなら良いから働けぇ! 暴れる力があるなら今すぐにグラウンドを整備しろよ、あと何より土のうを積め! 特に懲罰者は容赦しないからなー!」「はぁ!? 何が懲罰だ、こんなのまかり通るか、もう警察呼ぶからな!」その繋がらない電話は。
「へ……、へへへ、何言ってんだ、なんも来ねぇわ、ほら見ろ、分かってねえのか。警察はもういねえんだよ、お前らにはもう何の権利がないっ!」
携帯を没収し、そのどこにも繋がれない画面を見せびらかして、もう一度言う、なんの権利もないって事だ。バキ――っと。
剣を向けられるとどうにもならない、それは同級生でも、そうして大人でも「それで魔法を使える者は全員が必ず教習を受けるように。男もだが女も当然徴兵とするゾ、最低ラインを超えなきゃ寝る時間もないと思えぇえ!」
そうしてその一室では作戦と命令が飛び交い、情報が錯綜し……。
「まずいね、マズイ。それでソッチはどうだった?」
「食材を売るという概念が薄いです……、ホントなにも無いの。生産して売る程のものは何処にもないのですね」「あぁ当然だろうな……、それを必要としているのは恐らく今のところ貴族と教会、あとギルドだけだものな。輸送は金銭感覚とあと賞味期限としても悪いんだ」
ここは農薬も進化しておらず防腐剤も存在しない。道には盗賊がいてモンスターまでもがいるし冷蔵技術は……まぁ、それはあるとしても。全てが高額で目が飛び出る世界で。
「ただありがたいのは様式は中世だがな、すでに近世に似ている事。技術は鈍足中の鈍足だが飢えは相当に回避されている気配だ、そう、それの主たる理由は」
魔法。
全てはこれに集約されている事。
「あの家なんかも全部魔法のようですね、中世は藁ぶきと聞いてたのにほとんどがレンガに似たものだったんですよ」「麦の生産力が高いというのもそれが理由だと推測できますね、だったら魔法が全てです、もしかしたら肉体労働の意味はないのかも――」
だからなんとか魔法の手ほどきを受ける為にギルドはもちろんだが村人にも頼みこんではいるが、だがしかしそれも金がかかる。そして。
「まぁ~それでぇ? 色々と派遣したけれどね……、いやホント無理無理、ほっとんどの村や町が無愛想で暴力的で無駄だったっての――ッ」
イライラを爽快にかき消すよう語尾を切り飛ばす、椅子へともたれる。
そうしてまともな金額でも相手をしてくれないし、言葉が完全に通じているが全くもってだ。よそ者という事もあるが、だがこの気配はやはり。
「締め出されてるんだろうねぇ。まぁ――、勝手に呼んでおいてアレだ、この仕打ちは」
「あの聖職者か王族どもか、このまま締め付けが続くならば必ず持たなくなるな」
「ただしギルドだけは全くの別組織なんですよねぇ? なんでこんな、追随するような真似を」「そりゃまぁ同調圧力でしょ。あとやっぱ格好? 言葉? 態度とか顔とか人種とか――話し方とかぁ?」
自分達は相当な異物だと認めざるをえない。今も聖職者たちがここに来て教えを広めると息まいているから、大声で叫んでいる。何度追い返しても来るし何より追い返すたびに村人からの信頼が落ちる気配。
「異世界では今一応、全員でやっとかき集めて5千ゴールドほど儲けましたけど、村人すら雇えませんね。食料もたった3キロだった、ただでも、肉は多いね……」
その言葉と共に、自分の前にあるうっすいスープを見やるのだ、少しだけすくって「これがそう……、すごく多いよ。ものすごい量と種類がある――」
「そうしてどうやら小麦っていうのは眼が飛び出る程の高級品らしい。面白い事にこの世界の住民は肉だけを食べる傾向が強い」「モンスターだね……、そうだ、このモンスターが肉の代わりになり。そうして不自然なほど大量発生するから、それに合わせて私達が知る配分ではなくなっているらしい」




