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そのまま森へと近づく二人。歩きながらも加島にいつでも逃げるように伝えようとするが。
そうしてたくさんの人が出てくるのだ、明らかにこれは――。
「勇さんこれは……っ、やはり危ないんじゃ、こんなに――!?」「良いんだ加島。なぁ……、アンタ、俺のウデが目的だな、その眼線はごまかせないんだよ」
その言葉にほくそ笑む浮浪者、でもその眼は正にどこも見てなどいないようで。だってその黒目が別々なんだよ、珍しい。左右ではなく上下に目が開いている。
上と下の黒目が、そうしてそのぎょろりとした目の動きで、それでもその物欲はオレへと、この呪いの元凶へ真っ直ぐ――。
「そうじゃぁ……、ノコノコとナぁ。でも見えるかよ若僧、これがお前がやっとる危ない事じゃよ。何せお前は今からこの量の、チカラである『何か』を取り込むゆえナ――」
その通り過ぎる影、透明な人影は恐らくは人であって人ではない、力。
取り込まれた物たち。何にかは分からないが。それはまるで行き場のない奔流でありながらも、それが残った意識とは言いたくないが、でもだけど……地獄をくぐり抜けた記憶を吐露するように。
叫ぶ……、もがく。苦しみ続ける。燃えるから。
「聞くがナ、オヌシ……、まさか師匠もおらぬのか? ならばワシが基本を教示してやろうか、ナァ若造よ……」フゥ……フゥ……、しかしてだ、その覚悟があるのなら、な――。
言葉にもそぞろになってしまう。
踏み入れる度にドンドンと寒くなっていく、森というよりかは、煉獄。そうしてゆっくりとだがその影にはマズイものが紛れ始めるのだ、このままいけば恐らくは巨大な穴が開く。現出してはならない何かが出てくるから。
そうしてひらりと浮浪者に開かれるその汚い密室は。「第一層じゃよ」
……ただ、それはあまりな場所なので万が一を頼む事で加島を回避させた、そしてキツイ臭いの中に一人で入って。
「ウ―――――」そこは正に畜生の住処だった、ただ広くて確かに召喚の道具があるようで。
「ほれ……、お前は舐められて当然じゃナ。なんせ仕事道具すらもっておらん、ザ・カード(The Card)は遊びではないナ」
名前がシンプル過ぎだが、恐らくだがコイツ以外には存在しないのではないのか、訳としては【そのカード】ではなく【唯一指し示されるべき、絶対的なカードという名の存在】だろう。
「ではではまずは手始めにナ、これが真理の入れ物だぞ……。召喚術の初歩じゃなぁ? ここに我らの力を入れておけるんだよ、これと心象風景を組み合わせる。召喚士ゆえ数少なく、そうして偉大で貴重な仕事道具だぞ若造よ」
「へぇ~……」「へぇ~じゃないぞ。画期的と言えるのだ」「分からんが、すごいんだな」
その心象風景とはカードのよう、そうしてもう一つのそれは入れ物だった、今はなんだか透明な液体が入っており。
その『真理』一つにつきある程度の行動ができる。特殊能力からカードの召喚、呪文まで、それがこの真理を世界に称える事で行えるという。
まぁマナ・タップだと。
「お前が見とるこれが最高グレードでナぁ、なんと時間経過で回復できる代物じゃ、メチャクチャ高級なんだが――」
エネルギー・マナ・真理、そこにもランクがあると。1回使い切りの破棄型での最低グレードや。魔石とか魔力でのみ回復する一般グレード、そうして自動で自然と回復される最高グレードとがあって。順にランクが上がっていく、ただその額。
「この最高級のはやれんなぁ……、何せ200万ゴールドもするしワシも使わねばならん~~」
脳内変換、大体200万円くらいだ。1マナ200万!?
さすがに驚かずにいられないが、いや、まぁ確かに意匠はこらされておりヴィンテージで500万とか言われてもおかしくはない物だがな。
するともう一つを渡してくれて「じゃあこのな……、よっせと。魔石で回復するのをやろうか、2つナ。何せお主は今は2が限界じゃろう……ふっフ」
見透かすような目。
まぁ、なんとかなったな。自分が持てる真理の限界はとある能力を参照されるらしいと「この真理とはナ……、世界の真相へと手を伸ばす物だ。そしてこれがなければ何者にもなれんゾ、所詮心象風景は心の中にしかないナ、ただニンゲンは特殊ゆえ6つ以上は持てんからなぁ」
「あぁじゃあ、貴族だとスターターキットのカード無しで1200万円っていうか、異世界のカードはやっぱ違うな」
そうして例え回復タイプを――魔石回復だろうが真理の自動回復だろうが、戦闘では順番待ちになるらしい事、要は2マナ使った後は空いててもターンで1しか回復しない。それで1回復に必要とする時間は2分程度という。
「へぇ~~、あと……手札は1分で1枚回復なのか、へぇ……呪文の名前はヘックスで、モンスター、あとクリエイションが……?」「それは設置型の有形術式じゃナ、こいつは難しいよ。生きておらんが生きておる」
多分アーティファクトかエンチャントか。動く奴がいると見た。
「ふんふん――、でもコストは6以上があるって、だったらそれならマナの方が貴重かぁ……」
面白いな、面白い。手番とかがないライブ感とか、あとマナがないカードがかなりある、用はマナを必要とするカードってのはかなり重要なんだ「なぁ分かったよ。それでこの世界のレアカードっていうのはどんなもんなんだ?」
「レアカード、か……。ふ……フフフ。そんなもんを手に入れる召喚士はおらんナ、簡単なもんなどはないよ……っ」
レアリティがないのか? いや――。そうしてその飾ってある木工の置物のような物を指すから、それはカードの元であり一つでなんと300万円もするというから「まさか……っ、ウソだろう!? これを1枚に必要とすると――、とんでもなく容赦のないぞ。そりゃあ誰もが忌避するわ」
「あぁ何せカミでできとるからなぁ……」ふふふ。
俺の様子をじっと伺っているが、なんとなくだが1枚のカードに頭がおかしくなる雰囲気が伝わってくるよ。少し俺でも震えて来てる。
それで見れなかったが売っているカードも大体目安を教えてくれるようで、それも一枚でクソ高いよ。魂の器になる素体も高額で、1体のモンスターで車一台を買うくらいのイメージになる。本気かと俺は……。
「あぁ、本気だ……、本気だとも、ヒッヒ。ただオマエ何故か驚かんなぁ、若造ヨ、その腕と関係あるのかぁい?」
興味深そうで。何せ召喚の定義を知っている者自体が少ない世界。それでも大体のルールを教えていても何も驚かないし間違えないナ。
カードから心象風景を召喚する方法を教えながらも、その呪いを見つめていて……。
「じゃがなぁ若造ヨ、これは当然だがな……。ロストすれば戻らないんぞい、全てにロストがあるナぁ」
「やっぱ命のやり取りなのか、そうだよな……」
異世界だ。札束で殴られる程度ならば難易度ハチミツの世界観、ただ、そう言った目は深くて、負けるだけがロストではないよ――「召喚とは唯一、命以外をロストするんじゃ」
その時、何だろうか初めてうなずくんだ、俺は、眼が変わった――「でももう2度はないんだよ、俺に2度はないんだ」
「ふふフフ、知っておるのか、その痛みを、愚かな――。実に愚かか」
笑い、笑って。そうしてその紙の束を移譲して来るから「くれるのか、爺さん」「一度組んでみろ」
うなずくが。
だが……、暖かい、なんだろうか、紙とは思えない程にアツいんだ。
それを組むときにはデッキ枚数はあまり関係ないらしい、ただ最低枚数ないと魔力として不完全になると。それが個人差があるが大体15枚で、力が上がるごとに変わる。あと同じのは3枚までで。そうして組んで見せた物を見やるその眼は。
「なるほど……、なかなかか、コレはなかなかと言えるゾ……ヒッヒっヒ。簡単に試験を突破しよったナ、だが若いかぁ~~?これは。そうして忘れるなよ……、大事な事だナ。このカードはお前に付き従い、絶対に守るがソレは必ずお前を孤独にする」
それには、意味が分からない。正直この時にこの言葉はかなり難しいと思えたんだ。ヤツの業とも言え。
だがそうして満足してかそのカードの束からある程度を抜いたのを渡してくるのだ、まだ早いと。
うなずく「あぁ、じゃあ試しに一度勝負しようか、爺さん」
「ヤメておけ……」
「なんでだ、教えてくれるんじゃないのか。俺は今からでも戦わないといけない、少しでも実戦がしたいんだよ」
「もうやっておる……」その言葉と同時、くぐもった声が外で、何かが――「ぐぅぅ!? うぐ、これは……一体なんです、何が降って来て――」それは無垢なほどに白い、真っ白の人形。それに絡めとられて苦しめられる加島の姿を映す、影。
「大丈夫か加島!? おぃなんだ突然……、もうやってるってまさか――」「ナァ――、ロストはもうないと言ったよなぁ若造ヨ。だがその少女がいて、そうしてもうカードを取ってしまった。ナァ、ならばカードを取れよ……、既に戦端は開かれておるんだよ、フフフ!」
そうかぁ、お主はたった手札3枚かァ……?
その5枚をずらっと並べてくる相手に対して、自分にはたったの3枚しか持ちえない事に気づく。
しまった、気づかなかった。まさか――。
「手札と真理の総数など誰も教えんよ……。ザ・カードには相手の了承すら必要ない、戦う前に自らで察する力を持てないのはナぁ、こうなるのだァ」
気づけば既に一枚発動しており、爺の背後のカードにはコスト2と、そうしてモンスター名が書かれてある。だが何より違ったのはカードゲームに入った瞬間のこの男の気配だった、これ程に熱い――。




