15
「召喚する、来いよ、もう一匹」
六芒星が地へと、天にまで描かれて召喚陣が変えてしまう、その女の奥は「ア、あぁぁ……、駄目。私、アナタで変わっていく、これが……私で―――」熱いカラダ。ネツにうなされ、私は男の熱いカードを握る、それは新しきケモノの姿だったから。
それは……聞いてません、私でも、だけど逆らえない。
姿は完全に犬。強靭な爪が生えて、眼光鋭く狩りをする本能を放ち、耳だって聴覚拡張されてヒトのそれとは全く別物に進化し。
「言ったよな……、俺はお前を強くするって、だったらまだだろう、剣を握れよ加島」
「勇……アナタ、信じられない――」
その黒髪の剣姫が動揺を隠せない。それは誰しもが思った事ではあったが、もう人ではないのだ。彼が望みそうして彼女が受け入れてしまった、そこまでして挑むのかと。
2人が導いたその姿には誰もが――「ナデナデしたい」「ナデナデしたい」「マジで撫で撫でぇェ――ッ」
理想の映像、非常に撫でるのに適した姿に男女ともに驚嘆。何より可愛く垂れてフリフリ、ドッグイヤーと尻尾が。もうかなりの強さと言える、なんかもう商売しながら各地を回って行きたい事しか思い浮かばない姿。わっちかな?わっちだよっっ。ただ……、めっちゃオッパイ。
Volumes(ヴォリューミーーーィズ――)。
そうしてその男の手にカード、渦巻く力を制御する物であり首輪と成す。手元に見えているカード表記は攻撃力2、防御力0、俊敏性2。
恐らく加点されているのだ、どれくらいの力かは分からないが。それでも……。
「フゥ……フゥ……、行け、召喚したっ……。お前は俺のモンスターとなる、強いモンスターユニットとして再誕させるぞ、加島ァっ!」
その言葉と共に黒の片翼がはばたき、カードを抱いて見せた。召喚なのだ。
このカードは恐らく戦う為のものだから。
「えと……、そうなんですか、勇さんすごく、、、えと、スゴイですね――」目線がな、目線がネ。
でもちょっと雰囲気に押し切られるしかない感じだ、自分でも制御不能のシッポが動き回ってもふもふ。そのスカートがちょっとあれだし。耳が妙に良くなってるし、これ……これは。
可愛いよな? 可愛いよなァ。アレはあかん―――ッッ。控え目な美少女であれはアカンてぇ……、すっごいカラダよな。あれはヤバいぞぉ、野生を足すのは卑怯やぞぉ、強すぎるってぇ! お、お 俺は黒髪で十分だし、構呂木 雫でぇ――― はい、パシャっとな。
カシャカシャカシャカシャカシャカシャ。
「で、でも、力は感じるのは……感じますね。じゃあこれなら行きます、行きますからっ、もう私……っ、でぇええイ!」
「こんな――、これでかかって来るの、本気なの……?」
恥ずかしいと思います私。唇を噛む、しかしすさまじい早さなのだ、あっという間に捉えられてすぐに逃げねば「でも確かに変身したこの子……、ク、動きは全く人にない、ここまでだと私でも」
ガキィぃいい!
思った以上に早いタイミングでの打突。獣となった彼女の力に驚嘆し、そして剣を翻してくるから慌てる雫。なんとか先にコッチが一閃。
逃げられた――明らかに違う、腕力にも直感にも響く力強さが残る。そうして何よりやっぱりスピード。それは全てに、ナチュラルで突き通されるような直進でも、フェイクですかして囲い込み、斜め移動で……そして狩る一撃を!
「早い……、滑らかさが半端じゃないの、こんなのがいる……っ」
「はぁ……はぁ……、ごめんね、こんなになっても使って。でも……、今は必要だから、リン、お願い!」
剣が弾ける、2人の剣筋は互角か。だったらば比較にならない程の強化だ、さっきまでとは気迫が違う。
剣を一閃するその犬耳の、そうして2連が連続で、幻想のツメを生やした足での一撃は強烈!
「ぐぅうう!? そう……、そうね。やってくれる――」
ねぇ、2人でそう来るんだぁ。
それでも一歩も退く事はない彼女の、その雫の剣閃は何よりも勝利を求めて突き進み。犬の切り裂きを払った、足も手をも凶器とする戦いにもひるまないから。
連閃、相手の連打に対応しながら黄金の力が時折来てる、アレを受けてはならないという本能が。
「ハァ……ハァ……、構呂木 雫。アナタはもうここまで使いこなしてる、でもそれに今から私は勝たなければ、勇さんの夢の力を今、私が――」
黄金への返しは息を飲むほどに危険で、犬が総毛立ち、それでもかわして強烈な蹴りの、でもその始まりに――もう剣を差し込まれかけてる。慌てて退いた、そこに振り抜き、雫からの目が覚めるほどの縦一閃!
しかし獣もさる者だ、一歩たりとも後退せず柔軟な軸移動で見事回避を。そこへ顎へのヒジ、かち上げようとすると切り裂いた雫がさすがによろけるから。
でもカスったから……。
「今だ、今です、はぁあアアアアア!」そうしてそこに犬は飛び込むのだ、魔力を全開にして、筋肉が軋むほどの見事なまでの力を、そのコスト1。
「イきます! 切り裂け、リン・ラッシュ・バーストぉお!」
爆ぜる――剣と夢想なる爪の乱打撃、ケモノが切り開く剣の新境地。見えない牙が現出した、3閃4閃、8閃もが……その老犬のキバは想像よりも激しい。大口を開ける、獣たるチカラを目いっぱいに使ったその豪靭なる剣の一閃と、本能したたるキバの同時攻撃。
それは素早く、美しく。脚力を活かしての化け物じみた必殺を。
「オィ……なんだ今のは――」だがしかし、その剣豪は既に覚醒し始めている。
覚悟を決めた、その澄んだ動きは正に境界を超えた動きだった。時が止まる。黄金は例えどうあろうとすくまない、切り裂く殺意の中を一撃を通す、一撃だけを通す! 一撃を―――ッ!
「あぁ……、そんな、 ウぁアアア!?」「はぁ……はぁ……ハァ……――!?」
突き破る、突き破って見せる。
でも息がつまる、苦しい。剣を大地に突き刺した二人、カードがかき消されて。そして顔をにじられるから。その時やってきた者達に抑え込まれるんだ、見つかった。
堂々と邪魔して入るこの世界の住民たち、お目当てを見つけしたり顔で。
しかし、不思議な雰囲気だ、そこには倒れている少女と少年。そうして目当てのブレイブたるは剣を持ってボロボロの――。
「あぁ、えとぉ? とりあえず当学園に編入するのはぁ~……、うむ。そうだこのコウロ・ぎー、しずぅく、当初の予定通りこの方で良いのですね?」
ほら……誰か応えよ、早く――。
重い雰囲気の中に軽い口調、疲れ果てた少女のウデを容赦なくあげさせるから。少し名前は戸惑われるが、それにうなずいた雫は。
「では約束通りだナ、これからこの栄誉を与えましょうか。異民族への褒美ですよ……」
少女は操り人形のように、左手を粛々とその台へと乗せられて、カミの上へと圧され「今アナタはこの世界で英雄となれるのです、大層誇らしいだろう、異世界人の癖に、良かったですねぇ~」
そうしてその誓約の印を当てられてしまう、俺の幼馴染が。でも逃げられない、それがそのブレイブ(勇者)なる物が如何なるかを知る者はなくて、それでも少女は剣を。命を捧げ。
「では、コウロ・ギー・しずぅく。汝には責務がある、この世界を救う責任だ。それは王にゼッタイを誓う事であり、指導者たる貴族を守る責任、そうしてそうして宗教指導者たちと深く対話するという責任がッ!」
貴きを叫ぶたびに頭を打ち付けられる。それだけで良い、何故ならそれが全てだ、その者たちがこの世界において絶対であり人だからだ。
それらに代えはない。認めよ……、心に刻めよ。唱えられる言葉、刻まれていく文字。するとその署名に名前を書かされるんだ。自著はマズいね、あの自著は―――。
あぁ……、文字が迫ってくる、迫真の……、心の蔵へと迫る物を自分へ入れてしまうの、こんなに薄汚いのを私。
空に穿たれる光の柱。
震える手。そうして力がねじ伏せられ封じられて、彼女のそのブレイブでも反抗できない強いチカラが、打ち込まれてしまう鎖が。それは重い重いクサリだ、帝都から来た最強クラスの魔術師から抑えつけられ。ゆえも知らぬ国、そのものの重みを味わわされて一人の異界人は。
「ぐぅ……、うぅうウ!? 私の……ウデ、私の腕がぁああ――」「雫……雫ぅううう!」
「おぉぉ!? 聞いてはいたが、なんとすごい力だ」「ふふ、だが安心しろよ~、丁重に扱ってやる、勇者も……そしてあのゴミ共もなぁ。なんと自由なのだぞ、逃げる方法まであるぅ、我らは何せ道理をわきまえるゆえなぁ? ハハハ」
アハハハハハ!
苦しむ彼女は何度ももんどりを打って転がる、灼熱のような腕の苦しみ。ヨダレを垂らす程の痛みと弛緩の震えが体を駆け抜け。
「ヨシヨシ、これで貴様の功績が王の誉れとなれる……、それで王の剣とまでなれるのだぞ、素晴らしいだろう、名誉だぞ!」「しかもお前にも自由が保障されているからなぁ? さぁドンドンと助けよ、ドンドンと薄汚い血を流し尽くせ! 自らの意志でっ……」
「はい……、はい、分かりました。ぐぅ……、うぅぅ」
私は言わされる。その絶望的な契約の重みと強さは無理だと、そう本能で察せれる物なのよ、痛みでうめき、心から大事な物がえぐられるのを感じながらも、あの痛みを「でもきっと……、きっとぉ――」痛みの中、手を伸ばす。
それを見ている事しかできなかった。この悔しさにそれは長らく流さなかった水が。仲間達が泣いている、光がそのまま収束し。
「グけぇぇえエーーー! コロス、コロス、絶対にコロスぅう!」
ばっさばっさと太い翼が。突然舞い降ったコトノハで誰もが武器を、焦り「殺せ……、さもなければ災害を起こすぞ、今こそソレを全て殺せぇええエ」
叫び散らかすレイヴン、その黒の鳥。神聖なる聖職者どもがビクンと跳ねた、恐れているんだ「なんですか……、この鳥は、見た事がない――」
どうやら新種か、それとも何かの希少種か。警戒を嘲笑い、そのままどこかに消えて行った、騒然とする現場で。それでも。
「フゥ……フゥ……、俺は……、必ずお前を助けに行くから、悪かったよ、悪かった。コウロ」
「ハァ……、ハァ……、はぁ……」
その言葉に、答えなかった。
でもどうしても幼馴染を取り戻すのだ、例え自分の人生の全てを使ってでもな。見送るしかない姿に、それは直ぐにでも門を出るから追ってって。
馬車なのだろう少し変わったウマが引くのに連行されて彼女は、その異界の太陽に目をかすませる。そしてその男達と数名が乗り込んで。
ねぇ勇……、その子はおかしいのよ、おかしいから――。バタン――。発車しまーーっす!
「ウオォオオ! やったーー! 貴族さまが勝ったぞーー!」勝ち誇った村人たちは道を開け放ち歓声を上げるから。
「然りだね。ではね……、構呂木 雫さん。さよならだけれども、だけどこれは勘違いしないで欲しい。だってアナタは一人ではないよ、勇者は一人じゃないんだ。アナタが生きて来た物はここに残っているから」
「ハイ……。分かってますから、会長」
白で全てを隠した会長がそのギアスを横目にし、笑う、仲間が笑う「必ず取り戻しましょう、一緒にね」
「雫……っ、雫たんっ、マジで気をしっかりね……しっかりだよッ! それはだって――アナタは大事だからだって!」
その天賦の才の少女に一粒の心を、強く強くうなずく。
勇者を、我らの星の英雄を取り戻す、そう誓って。
だが見送っている傍では既に動きだしているから、その黒き脈動は。




