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「勇……、ハァ……ハァ……、アナタはね、他の人たちを助けて。私はここの相手をするから――」
大丈夫かよ、そう言いかけて笑う。大丈夫じゃない理由がない、恐らく奴らは雫目当て、彼女が逃げればそのままついて来てしまう可能性。そうして彼女は今まさに。
「才能、恩寵、そして黄金……。だってこれが、本物の勇者だものね――」
彼女は苦し気に俺に笑い、そこにいた化物をも惨殺。
突きで突進しながら切り裂く姿は美しく、止められない、残酷で背筋が冷え渡るほどに無比。誰よりも血にまみれ、どこよりも勝利を振りかざす。
そうしてそのまま走って行くから、俺は急いでもう一人を探しながらもそのクラスを見て。
「ハァ……ハァ……、オィ大丈夫か、このクラスは大丈夫かぁ!?」
「ひぃ!? もうヤメてぇえエ!?」「また来た、もうヤメろぉお!?」
恐怖で怯える生徒たち、闇の中での血で、そのウデは正に異様で異形たる黒翼がはためき。制服は汚れて血を振りまきながらもそのモンスターを斬り殺していくから。
ひとまず何を言われても応えずモンスターを狩って行く事に、誰も彼もが足を震わせ、その勇をも恐れて……。
ふと入り口に影「オィ……っ、そこのキミは……っ、そこのは人間か! コッチなのかい、ナァ!?」
武器を持った同族が現れるから、弓を構えた「あぁ任せろっ……、山塔学園2年11っ、この階は俺がやる!」「安心したよ、じゃあ任せるからね、この階は任せたよっ、ありがとう!」
フシュ――! どすん!
男が弓を撃ち、少女が槍に見立てたモップで見事になぎ倒して持ってたカッターで喉を切り払った。なかなかに見事。するとアッチの別棟では男が相当な打撃の動き、恩寵が更に強くしたのだと分かる。何人かが戦いに入っている、動ける物は少ないが必死に……。
「うっし、もっと来いや、もっとだクソがぁア!?」しかして全てをクリアリングするのも一苦労だった。大きな学校で携帯も通じなくて隅から隅まで走り回らねばならない。
「でぃ、でぇやああ! ハァ……ハァ……なんとか、もう少しですっ」「最後まで行くよぉお!」
加島 虹炉が見事に切り裂く。いつしか1000人を大混乱に陥れた戦いは終局へと向かったのだ。だが――。
「ぐす……、うぅうぅ、もうイヤ、もう返してぇぇ……」「なんだよココ、本当に地獄に来た……地獄だ、イヤだ、もうイヤ――」
学校に刃物を持った不審者が15人侵入しました、彼らは教師を目の前で切り裂き、次々と友人たちを襲い、校舎で20人もの負傷者を出した模様です。
これをニュース風に見て欲しい、この現実よりヒドイ物が目の前に突き出され誰もが足がすくむ。目の前にはゴブリンの脳が、そうしてヒト型の無残な四肢が瞳が内臓、現地人もがいる。
悪意にさらされ、例え人ならざる恩寵があっても戦えたのはごく少数。
だがしかしそれも苦しみ始めるから「はぁ……はぁ……、うぅぅ……っ、いてぇ……、イタイんだ、腕がぁァ……」
グギギ、ぎぎぃぃイ―――「翼が……、だ、大丈夫なの勇……っ、勇ぅ!?」軋み悶える、止まらない。
廊下の壁へともたれるしかない、吐き出す呼吸も、ウデの進化が止まらず「いや……、いや、大丈夫だ雫、問題はない、本当だ――」ハァ……ハァ……、だから向こう行けよ雫。
その笑顔に雫が複雑な顔で返す。
その黒い羽根を纏う腕を食う、まるで浸食するように体までもを「分かって……いたの、ねぇアナタは分かって……っ」
「まぁ……、はぁ……はぁ……、コイツが俺を恨んでいる事もな、そうしてこの……、動かない腕が依り代になる事って――」ぐぅぅ……っ。
右があの転送時に異様に疼いたのは恐らくは魂が一緒に動いたからだろうと、それを追加で生き返らせたが、それも中途半端だったようだ。この分だと大した恩寵ではなかったはずか。
だがしかしソレは「あぁ……、ぐぅううウ!?」疼く、突き上げ続ける。痛みが増した瞬間に彼の様子が変わり始めたのよ。異形となり始める姿、止まらない。
その羽が伝えばその部位までもが硬質化していくから。イタイんだ……焼けつく程に痛そうで――苦しい。でも終わってしまうと冷たいから、ゾッとする、異様な程に。まるで変化した後は自分じゃないようで。
私の力が反応して――。
でもそれでも笑うから。あの時のように。
ナァ、気にすんなって。俺は……大丈夫だ「はぁ……はぁ……、なんでもないんだ、お前には関係ないんだ」
自嘲しながらも、瞳に見える光の加護は。それに引き換え黒翼の剣は、異世界で得た姿は異様であり。何せ呪いなのだから。だがしかし十分だろうよ、剣は振るえているし血に染まったのも同じ、幼馴染2人は。
「なぁ……っ、実はオレ、諦めてないんだぞ。お前をこの状態からでも倒せるから、雫」
「勇……、本当に? それは本当で……」
あぁ、そうだ
この女を……、殺せ。殺さねばならない。
この男を殺せ……殺すんだヨ。さもなければどうなるか――。
はぁ……、はぁ……、でもね、そうなの。私も分かってた、分かってたのにこんな……。
この剣を放したくなかった。
彼がどのような事をするか分かってたのに、その黄金は美しくて愛おしくて――。
「やはり……そうなんですね、勇、雫、そして私は……」
「がァアア!? ぐぅぅ」広がっていく黒き翼。血を流し、それはまるででも。
すると靴音がして剣を即座に。
「構呂木 雫さん……。ちょっとだけ良いですか、お話を」
その緊急時の時の言葉に、雫は迎え入れるのだ。そこに入って来たのは少女、たった一人の少女だったから。剣を持って。
「残念ですが……、今から私があの人の無念を晴らします。その場所も譲ってもらいますから、この第一の弟子である私へ……、この、加島 虹炉へと――」
「弟子……――。冗談がキツいよ、本当にキツイ――」
薄く笑いながら黒髪少女の眼が細まる、剣を抜いた。何せ目の前の桜色の彼女がすぐに真剣だと分かったから。あと、ナゼ――。
勇をゆっくりと寝かせる。
でもだってですよ……、こんなのありませんよ「だったらアナタには私が勝たねばならないじゃないですか、運命は本当はこの私達だったはずだから――」
「ねぇ……っ、そんなのどうでも良いから本気で行くよ、初めての時とは違うからね――」
月の闇夜、二人で決闘へともつれ込む。学校の渡り廊下で決闘とはなんとも空気はないが、それでもその剣は本物、そして思いも本物。スカートが揺れる、構えて二人。
「一気に行く――!」
強者たる雫の閃光の一撃!
だがあっさりいなした、そして力を外へと向かわせ逆に下からの一撃を!
「ぐ――!?」「構呂木 雫。アナタは元の世界に戻って欲しい、勇を置いてです。ソレで良いんだ、それが良い」「それはどういう意味……、あなた……何を」
その眼は底知れない何かを持っている。そして何よりすさまじい剣戟だった、今まで積み上げた物でもいなせない程に。
右からの黄金一閃、しかし読まれている、柄だけでかち上げられて。斬撃!
「そうですよね……、私もそうなんですよ……ハァ……ハァ……、納得いかないんです。今のアナタでは私には勝てないのに――」
加島がその力を為す、それは常人には不可視の力。そうして――。
「ふぐぅゥ――!? ガハ」「勇者は、私で良いんですよね? あなたからは取り返します、取り返しますから――」
そこに更に何閃もの、何十閃と撃つが止まらない。それが止められないのだ。
「うぅぅ、受けれない。これはどういった力で――」
何度か剣そのものは受けたが全くもって耐えきれない、その構呂木 雫の剣は正に尋常ではなく、加島 虹炉の剣を弾いて内側へと――。
「きゃあア!? うぅぅ……うぐ、勝てない……、なぜ、どうして? 私は向こうで選ばれてるはずなのに」
このままでは――。
唇を噛み、また不可視で無影の一刀を。影が揺らぐ。だがしかしそれに一回転、勢いをつけて黄金ぶっぱで圧す雫は、うごめく質量のある影と嗚咽を吐き出し、その逃げるソレを。
ソレは……。
「なんだったの……、あの力は……ハァ……ハァ……、まぁ、どうでも良いのだけれど」
「でもあの呪いはイケナイ、いけないんですよ……ぐぅぅ、力を渡してしまっては」
唇を噛む。しかし退却するしかないだろうか、最低限はやれた。でもおかしいのだおかしい。なぜこの世界は――。
「然りだよ……。しかしまぁ大変な世界に来てしまったねぇ――」
その異形たちを見やる。
雫、虹炉、そうして気を失っていた勇。亀裂から漏れる力はしかし容赦がない、だがそれでも雫は、それは2人で切り開く事でしか生き残れないと。
この異世界は。
その為の2人で、そして……。頬へと伝う感触。




