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「ア、あぁ、コウロ・じー? しずぅく? 良いですか、あの……アナタにはお話があります、早急にねぇ」
立った。あとの方は適当にと、その言葉になんとなく察する。大多数の聖職者が発ってしまうのだ、その震えたままの少女に。幼馴染を視界にいれながらも連れて行かれ。
「えぇ、良いですか――。この世界は今危機に瀕しています、アナタがこの世界へとやって来れたのは僥倖、正に理天の行いだ」
その言葉にも浮かないカオ。深く深く沈んだ表情、でも聖職者は幸せそうに手を取って、がっしりと「今から勇者となり我らの為に戦っていただきたいっ……。いま我らの戦いは苛烈を極めているんだ、王都はもちろんですが最前線も消耗の一途なのですっ!」「勇者よ、理を示したまえ! どうかどうか我らと共に!」
「あの……、でも皆が。私はまだ学生ですから……」
「そんな、ダメです……っ駄目ですよッ。アナタは知らないだろうが今こそジリ貧、ほとんどの国では民が脅かされている……! 王も心待ちにしておられるぞ、それにお友達の為にもなるのだからっ、これは正に仲間の為であり――」
熱く熱く語る神官。それでも私の剣は……「私は、世界を知りませんから。どうなっているかも全く分からないの、その為の剣は怖い……。あともう私はお約束できるとは思えないです」
「でもあなたは才能があったっ、それだけで良いんダ! 向こうの誰よりも強い。そして民を救うという事ぐらいは分かるハズ、異世界人であってもだ!」「ソレを存分に振るえば助かる場所がある、違いますかァ!? それに何より求めているのはこの国を統べる王であるのですよっ、しずぅくっ!」
その乗り出すのを教師たちが必死に止める、ただでも駄目だった、憤りに似た言葉も残らない。
ただただその目は―――。
「はぁ……はぁ……、ぐす、うぅぅ――」
夜風。
頬を伝う温い風。渡り廊下で晒され泣きはらしている、まさかこんな事になるだなんて……。
世界を超えた、そして明るい希望が射した。少女が必要としていた物が全て……、全て全てが「どうして……こうなって。どうしてなの、こんなはずじゃなかった」
臭いが違う大地が濡れる。自分は裏切られたのか……、それとも自分が愚かだったのか。
自分が離れてから変わってしまったのかもしれない、急に自信がなくなってしまったから、全部が全部、昔のことも二人のことも本当は一人で。
「世界を救う……、今の私じゃ……。ごめんなさい、この気持ちでは……」
その輝く力に惑う、闇の中。
ふとだがその時――見かけたのは影で、最悪の現実だった。彼だ、隣にいるのはそしてモンスター……。モンスターがいるんだ襲い掛かって来るから――。
「キャアアア!? 化け物ぉおオ―――」直後に悲鳴が切り裂いて、最悪のモンスターパレード、外から大量に入って来ている、ドンドンどんどんとゴブリンにスライムに奇妙な人型、ちょろちょろチョロチョロと潜っていってしまい。
「今そこにいるぞ……、1―3と1―4です、逃げて……っ、皆逃げてェ!」「ネェ廊下にいるよ、窓閉めて窓ぉお!」
あちこち響き渡る悲鳴、それらをスマホで照らして走って、私がやれる事を。もう少し頑丈なのがあれば……、竹刀でその緑のニンゲンを弾きながら走って、だが「オィお前も逃げろ雫ぅウ!?」「エ――」
闇に紛れて黒尽くめがやってきていたのだ、その手に構えるは槍。バレた瞬間に殴られ捕まれかける、必死に手で振り払って。
でも5人も6人も、いや7人もが一人の少女を囲んでしまい一気に――。
「ハァ……ハァ……なんなの、どうしたのかしら――」
逃げようとするが、その包囲網に唇を噛む。竹刀で構えるが「ぐぅ!? やっぱり……こんなのじゃ厳しい」
「あぁ雫が……、ちぃい!? 俺がアッチ行くしかないか……、アッチで良い。待ってろ、うぉおおオ!」
気にしながらも一方、必死に走って行くその現場へ、雫を襲っている奴らの元へと。それでもアッチコッチでSOSだ、恐らくはモンスター達が襲ってるだろうな、怒号。恐怖、苦しみ哀しみ。だが祈るしかない。
そうしてなんとか辿りつこうとするも異形が、ゴブリンが襲ってくるが、しかし俺は途中で拾ったモップで上手く突いてカチ上げる、雫が今やってるようにやはり突きで!
「アァ、いっッつぅゥ――」やはり右を治しておくべきだったか、それでも我慢するしかない。今はなんとか雫の元へと、あれは竹刀が正に折れたんだ、今にも捕らえられようとするところ。一人の黒尽くめを体当たり!
俺はそのまま囲まれに行き、その挟み撃ちでくるのを2人で目配せし「やれるな?」もう一本モップを投げて「え、えぇ。もちろん」
「おぃガキが、させるかよ、逃がすな逃がすなぁ!?」
だが連携プレイとでも言うのか2人でなら素早くて、全く同じ動きで角度同じ、回っての一撃、2撃、3撃4撃、手を休めない。
確実にしとめて見せるまで。そうして後ろから捕まえようとすればフォローに入って、折れた竹刀との2刀は鮮やかで。やった事ないはずなのに流石だよ。
そうして俺らは一点を見ている、その洞察力はほぼ同じで活路を。ただ……痛みがすごいのは「邪魔だ、このクソガキがぁ!」
槍で突いて来る、その直後ケリが入った、受けた右手が痛みの限界に達してしまう。それでもコッチも足を離さずに雫を逃す、その時間を。
そこへもう一人が槍を出すんだ、俺へと凶器での必殺が来るが、フォローで刃をずらす一閃少女。下から木製の部分をかち上げて直後に突き刺される竹刀。こじ開けてくれた間に俺はヘッドバッドを!
携えていた剣を奪うんだ、そうして空いたところを目指し、この剣を渡しさえすればって
ずぶゥ「あぁ、アぐぅうう――!?」「勇――? 勇ーーーーーっ!?」
目を見開く。後ろから不意に斬りつけられて、ゴブリン、見えなかった、素手での対処はどうしようもなく。更に刺されている、刺されて……。
あぁ助けたいのに……後ろから槍が迫っている、残った4人は仲間を助け上げて「ふふふ、ざまぁないな。よしよし……、じゃあ大人しくしろォ?」
「イ、イヤぁアア!? 勇、勇………っ、ユウううううウ……!?」「さっさと連れてけよ、そうだこの異端者の女が。コイツだ恐らく間違いない!」「コウロ・ギーを持って行けよ、だがそうかこれが勇者か――」
うぅ……、黒尽くめどもに無理やり捕まれ動けない。マズイの、切り裂かれる制服、ブラジャーまでが落ちて、それでも私は必死に「フゥ……フゥ……、やめて……、うぐ、うぅぅ、勇がァ!? 今は勇がァ!?」
腕を後ろに拘束され、そのまま私は袋を被され……頭ごと……。
成す術なく血が飛び――「ヒィイイ――」だけれどもね、そこにはまた最悪の悪魔がいたから、翼を生やした悪魔がたたずんでいたんだから。
頭から真っ二つの状態で。人が落ち。
入って来ていたのだ、もう既に。なんで……。
「な、なんだ、コイツはどこから」「バッ、化け物ぉお――!? キメラでも紛れていただと」
「ハァ……ハァ……雫、剣をとれぇエ!」
俺は奪った剣を渡してやるんだよ。その剣を取るや否や……「は、せいやぁ!」
一人を突き殺し、すぐに距離を取るんだ。剣道らしい最小限の動き、そうして剣を翻して後ろを固める部隊に威嚇して見せる。それは初めてにしてはキマリすぎだろうに。
「ちぃいい!? 武器か……、まずいな。マズイマズイ、だが傷をつけるなという……」「し、しかし仕方ないだろう行くぞッ、その剣聖の女は最優先だが……はぁ……はぁ……、もう生きていればっ」
槍で廊下が埋まるほど、囲んできている、それは1メートル50センチもあり長大で。こっちの80センチ程度の剣では不足だ、ヤリは威嚇するように顔に向けられるがしかし。
「何故だ、こいつ、槍相手になんでこんな――」
あっさりと懐に入って来るから……速度が違う、これが少女な訳が、さっきまでと全然「ふぅ――」ザン――あっという間に一人。
「お、おぃ増援を呼べぇ! 他の場所のも全員だ、全員!」
指笛が響く。信じられない動き、たった80しかない西洋剣でも突っ込むなんて。突き出された槍の穂先を見事に逃げ切れば、横に行って裂く、二人がかりで逃げ場を埋めてもラグを突くしコロス! 殺すコロス殺す!
俺も一人を引き裂いて――!
「勇……、でもアナタその姿は――」
「あぁ……、これ。覚えてるか、俺達のもう一人の被害者だよ、なぁそうなんだな? やっぱりなんだよ。暴れたいって言ってたのはお前だな」
それは右ウデの亀裂のごとし傷口にそって、オレの肉を内から突き破って生えて出てきた鎌のような。
脈動して羽ばたく、受肉するツバサ、正に異形で闇のオーラがまといて。異世界という名の戦場に降り立ってしまった黒き呪霊刀。
その黒き右で一閃――。羽根を撒き散らしてそのヨロイすら真っ二つで斬り上げ「さぁ、暴れ時だぜ、ハァ……ハァ……、俺の剣道はもう普通じゃないんだ、じゃあ悪いがまともには戦えないよなァ――」
血が飛んだ。羽骨が広がりノビをするかのように、その生きた憎悪がまとわりついて肉を穢す。羽が殺す、見事に防具ごと貫いた。甲高い鋼と肉の音がまじりあって重厚な、ドサ――と肉の。
そうして動きも正にバケモノだ、存在しないレイヴン(黒カラス)が彼には宿って。異世界で羽をまき散らしその槍すらも2つにする、前から真っ二つで叩き割るから。
「勇……――、でもね、だけど少し中2過ぎるよ……」困惑。
その動きに自然とね、こんな地獄なのに笑っちゃう、血を飛ばし「でも私は剣聖だよ……、黄金の剣聖だもの。見てたよね、その力を見せてあげるから、これが私の本物、でやぁあア!」
黄金一閃、それだけで分からされるそんな化け物。剣を握らせては絶対にならなかった、その一刀は駄目だ。彼女の剣を邪魔するなかれ、それは掟に背く、それは勝利の光に背くから。
負けない……、この異世界でも、剣の道。
「増援は……、あれは5人かしら」その急いで走って来る増援までもをついでに退けるは、剣聖の、その流れるような動きとしなる剣筋で。
それに黒の力も脈動を続けた、自分を取り戻すべく高みにおいて見せる黒翼を、失われたあの年月をもう一度取り戻すように。
「はぁ……、はぁ……、彼らは本当にあの日を、あの日以上を――」
あっさりと8人をしとめ終わり、そうして駆けつけてくる量は多く、それでもあと5人もいて……。




