10
廊下。色々明日に控えこれからの儀式の事を聞かされているんだ、かなり気まずい雰囲気で。先程の暴徒化もそうだが明らかにこちらの世界とは違うという、そういう目は強く強く、深まっていて。
「そうなんですか。はい。では、儀式の詳細なことはそちらで何卒お願いします」
頭を下げる、繊維の音まで。あまりこの儀式を他人に見せる事はないしこれは一生の内でも特別。何よりも大人としての一歩でもあると理路整然と。しつこく。
恐縮の風が流れている、詳細を聞きたいがこれでは。しかし木美は「えと……、だけども、これだけでこの世界では大人なんですか」そう……ですかぁ……。「なんとか伸ばせませんか? 聞いた感じでは伸ばせそうですけど」
教師たちが頭をかく。すいません、それにこれはなぜ……。
ほぼ無言の足音が響いた。
そうして必死に熱気を冷まさせ歯磨きを指示して寝るしかない。だけど誰もがその夜に心浮かせ、さまざまな邂逅と過ごしていたんだ。
明日には第二の人生が始まるから。眠れぬ夜も、そしていつもと変わらない夜も、寂しい時間もが過ぎていく。
革命が音を立てて向こうからやってくる。
「そんなもん建前よ、一応って奴さぁ~~。ナァ? もう剣っぽいを振り回してれば剣士、違うならそう言えば良い、そんなもんだよぉ」
1000人が入る体育館、スキル表を前に朝早くからにぎわう、寝てないのもいるというしそれを自慢する声も。まずは説明会というか座談会か、紙に書かれた絵はとても簡素で。見やるに下級では非常に簡単なカテゴライズしかないらしい。まぁそういうモンかと。
「少し馬鹿にされてる気がするが、まぁそうだよな」……頭をかくんだ、今からその一番てっぺん目指すんだが、まぁ脳筋だわな。
例えばナイフで戦うとしても剣士と言い張るかモンクと言うかは自分次第、正直自己申告だしもらったスキルをどう使うかなんてどうでも良いと。ただ――。
「でもアンタらさ、戦う気しかないわけぇ~? なんだろなぁ……すっごい肉食だねぇ、へへヘ。こーんな戦士職なんて半分も見ないぜぇ?」あぁ死にてぇのか――。
その生徒たちの様子に少し顔が引きつってる地元のオッサンだ。体育館のツルツルにもめっちゃビビってるがな。ただ確かに分厚いのは逆の方で生産職だったし、しかし……、そっちにも剣士の項目があるのだが。後々聞いたがハズレ職という事の。
「それでまぁじゃあお待ちかねの? 上級職って奴だなぁ~、でもこいつらは結構な資格がいるんだわ、生半可な能力じゃ近寄れもしねえよぉ?」
これ上の方が良いのかって? 関係ねぇ関係ねぇ。
見やるそれはやはり偉大な絵を以て書かれており、賢者、大魔導士、巫女に聖女に、指導者に王で、聖騎士王に剣聖と、召喚術師や笑顔師。
どれもが地を裂いて或いは雷鳴を呼ぶ様子。他にもあるし当然だが芸術職や生産職もあってドレもこれもがその国にたった数名という。話を聞くと職の中身は大体は想像通りだったが、ただ……。
「なんか2つ同じようなのが並んでないか――」
確かにそうだ。2つ同じようなのが並んでるなと。ただその違いはあまり分からなかったから、恐らくはこの世界の流れに関係するのだろう。イマイチ掴めない流れ。
「この召喚術師と笑顔師ってのはなんか、一つなんですよねぇ? でも笑顔師って、何ヨ」
「あぁあぁ笑顔師ってぇのは、なんていうか、分からねえんだ――」
知らね――そんなの地元の人間でも見た事ないらしいな。ただそれ位が普通らしいと、都市以外に住んでると生涯に1度でも上級職を拝めればラッキーというから。人間SSR、正に字の如し。
「それでまぁ召喚術は結構見れる方の上級職だな~、何せ金が要るぅ。召喚術ってのはな、ある種の芸術の世界だからさ、まぁ……、うん」へへへ――ありゃ金持ちの遊びだなぁって。
召喚術、それは我々が思う所であれば実在とする精霊やモンスター、はたまた悪魔や天使にドラゴンまでを召喚して己が願いを遂行させる行為。
しかし実際は違うらしい。まずそもそもとして召喚をカードで行う事は非常に難しい事。だってそんな無理に閉じ込めた生き物が言う事を聞いてくれるわけもなく実際エネルギー自体も高位なのにどうするのか。
それは大体このニュアンスで分かるだろうか、犬猫の記憶量だけで約1TBはかかる。1枚のカードにそのほか人と変わらない37兆を超える細胞の臓器と魔力量、年数による個体差や意識や魂の情報をどうやって入れ込むのか。
「では、 準備は整いましたね?」
その聖職者が決まりという帽子をかぶるから、なんとなくポンチョを思わせる白の姿で。息を飲み込み。
「あの……、ですが子供たちの為にやはり待ってもらえませんか。もう少しだけで良いんで……っ」「申し訳ないが大体がもう15に近いのでしょう? それを子供扱いとは、些かぁ……」ふふふ。
その言葉に非常に悶々とする。彼らは何も知らない。ゆるりと会場を見ながらも聖職者が満足気だが、しかし不思議がったのは。
「ただ彼らは意気揚々ですな。どういった……、その、いえ。向上心があり過ぎるというか、勇者。時折聞こえますよねぇ」
その言葉に謙遜を送るが、むしろである。目を細めて人材難だとうなずくから。
「って事よ、高価な奴だと豪勢な家が3つほど買えちまう位さぁ。まぁ、その分だけ言う事はゼぇッタイによく聞くけどなぁ~」
召喚術師、別名リッチーだと。
その言葉に恐らく無理な部類らしいとは、これを目指すヤツは少ないだろうな。モンスターテイマーの方が遥かに使いやすい。コッチは酪農やモンスター除けにも流用されるのでかなりの数がいるらしい、しかも上級だとホントにドラゴンが飼える。
生徒の大体が上級職狙いを考えないとという使命感で。
その時聖職者が悠然と入って来て準備を始め出す、将来を考えるべき場面がいきなりやって来た。
へぇ……、じゃあオレはどうしよっかぁ? うんうん、ミツくんはどうしたい~、私らはどうしよっかぁ。あぁ~~マジなぁ、俺らどうしよっか茉奈ぁ。
あ――、うん、でもねミツ君ちょっと、良い事を……。
「お、おィ――、そこ、何をしている!?」
大声で叫んだ声に、時を止めるが、聖職者が無様なほど足を騒がせながら近寄って「なんと……汚らわしい、なんという事をォ!?」
深刻な顔をしてその聖職者が声を荒げているのだ。すぐに教職員がやってきて2人を抑えるから。
「あっ、アナタたち! いったい何したの、何をしたんですか――ッ」
「べ、別に……、なんもしてねぇよ、なぁ?」「ウソおっしゃいっ! 何をしたの……っ言いなさい!ホラ早く言うのよッ!」
その青筋立てた必死な顔に戸惑うばかり、少女の方はすこぶる嫌そうな顔で黙り。
「アナタ達……、ネェこれは大事なお客様の前って言ったわよねぇっ! なんでこう……、あの、はぁ……はぁ……」
すいませんすいません
「あの……っ、まだ子供なんです。口も悪くて何も分かってないんです、ホント……申し訳ない!」
「反省を……っ、次やるなら承知しませんからねッ、私達への最大の侮辱をしたんだぞ、認められる物ではないんだっ!」
その言葉に2人の生徒は即刻別室に連れて行かれようと「いや――、なんもしてねえよソイツら」なぁ?「うんうん、悪くないって~~。むしろなんでキレられなきゃなの、意味分かんないんですけどぉ」
その複数の言葉に戸惑う、そして強く掴まれてた彼がかなり不機嫌にして肩を振って逃れて「いやさ……っ、俺が指切ってたから彼女がさ」「う、うん……。私ミツくんの血を綺麗にしてあげて、それだけで」
「た、他人の血ですぞォ!? し、しっかりと教育しておくべき事だ、他人の血を口にするなど神が認めぬ行為だ! おろかなっ……、死にたいのか―――!?」
その言葉に眉根を上げる、あまりの動揺に誰もがおののいていた。大汗を流す聖職者たち、異様な雰囲気。他の聖職者がいさめてはいたが明らかにコチラの不行き届きという顔が滲んで。
オッサン達までもが。そうして一呼吸おいて。
「なーんかずっと嫌な雰囲気だよねぇ……、私らちゃんとやってけるのかな」
「あぁ……、少し考えるべきかもネ――」
それで呪文とやり方を教えてもらい、その儀式を執り行っていくから。予定通りに。普通は教会で行うがいかんせん多すぎるらしい、全校生徒と教師その他で1000人。
それは最初は恥ずかし気だったが「おぅ……っ? おぉォなんだよなんだ……、これすげぇえ!?」
終わった? なぁどうだった、どうだった――?! どうだったんよォ!?
そうして自撮りでパシャっと!
一喜一憂した、何人もが、得た物は他人からは分からないが公言する者も少なからずいて。そうしてすぐに魔法が始まるのだ、信じられない表情を浮かべながらも誰もがスキルを受け取って行く。
注目株も何人もいるし。和樹も得たし、生徒会長もが。
そうして今、誰もが注目していた一人が立つんだ、彼女がついには歩を進め……。
「構呂木 雫。お前が剣に懸けた本気を見せてみろよ……」
幼馴染にうなずく。静かに。
場が一気に静かになり。
「ふー……―――――――」
――。
――――――。
――――――――――――。
「お、黄金の輝き……だと、溢れ……」「あ……あぁまさか―――本当の勇者が現れるなんてェ―――」
あぁこれが……、力なの。変な感じ、強くなれてる私……こんなに強くなっていく――。
渦巻く、飛び出す、膨れ上がる。気高き力、自分の中からざわめく、溢れ出るの止まらない。自分でも眼が開けられない程。
ゴごぉおオ オォオオオオオオオオオォオオ!外の森がざわめいた、神聖が揺らぐ。黄金が天をついて駆け抜けて世界が脈動した。風がすごくて何人かが飛ばされ、私が今まさにその竹刀を握るから。
その力の奔流を全て全て御するのだ、満面の笑みでの集約で集局、そうして完成。
ちょっと、写メはヤメなさい……っ、個人情報だって言われたでしょ! えぇ……でもあんまり綺麗だからサ―――。
そうだ美しい、美し過ぎる。
誰もが無言。あまりに美しいと人は言葉を失う。構呂木 雫は黄金を得たんだ、予想を裏切らない程の。そうして俺が歩いて行く、この右手に宿る覇気を掲げて。
「はぁ……はぁ……!?あの、お聞きしますがね、本当ですか? この少女と対になる男がいると」
「対に……、あ、あぁ……? 一応その……問題のあると言いますか、因縁の2人だとは。ただでも2人共すごく良い子なんですよ、ホント良い子で――」
「いえ……、いえそんなのは信じられない。この世界に黄金を宿したモノが2人現れる事はなかった、正確には……っ」
でももし本当ならば―――。
その言葉に神職が震える、ソッチの世界の者達がうなずきあうから。その彼の登壇だ、まずは軽く「俺は……、俺があの日奪われた命を、力を、あのヒナの命を取り戻させてくれっ、それだけで良いぞ!」「それだけって、 あなた何を――――― 」
女二人の顔が歪む。そのまま何もなく、光は霧散し――。
終わった………、そうだ、終わったんだよ。でもなんだ、少し揺れたか……。
「はァ……、はァ……、いったい……何を。もう回復してもアナタはぁァ――ッ」
震える声、そうだ、その通りだ加島。そうなんだ「俺はまだ諦めちゃいないんだ、お前を信じてるぞ。だってお前は言ったよな……、自分でってさ」
戦いは自分でやる物だぜ。剣ならなおさら。
その亀裂のような傷は今も残り続ける、取り返しはつかない。夢は夢のままだ。そうしてその時に彼女が選択したのは――。
「勇………、勇、アナタどうしてぇ――」「あのクソ野郎ぉぉオオオオオオオオオ!?」
一番の心残りはもう……、どうしても戻れないの。
静かにうなだれて、その手が震えていたのを何人かが見ていた、誰も声がかけられなかったが。ただその時も未だ森はくすぶっていて、その意味を知るのはずっと後で。




