2 ライラの寝相
僕の右側にいるプリシアが、切なそうな顔で喘ぎ声を洩らす。
「あっ……はン…んん――これ……感じます――」
そう喘ぐと、プリシアは裸身のまま、僕に抱きついてきた。
豊かな乳房が、僕の胸にあたって押し潰されて――はちきれそうになってる。
「プリシア、ちょっとくっつきすぎじゃ……」
「――ズルいぞ…」
不意に囁く声がして、左側にいるミシュレイがぐっと顔を寄せてきた。
眼鏡をかけてない瞳の、長い睫毛が凄く目立つ。
「あ――うン……ふぅン……」
すぐ傍で吐息を洩らすミシュレイの美しい姿に、僕はどぎまぎしながら治癒の光を出し続ける。
プリシアが声をあげた。
「なんだか、あったくて気持ちよくて……このまま寝入ってしまいそう…あ……」
「ボクも……このまま溶けてしまうかも……」
ミシュレイがそう囁いて、僕の首元に頭をもたせる。
「眠たくなったら寝てもいいよ。少ししたら、起こしてあげる」
「あン……あっ、うンン――」
「ああぁ……ふぅン、あ、あ、あ――」
二人の喘ぎ声が風呂場の中で共鳴して響きあう。
やがて二人が高まる声をあげて、僕に強くしがみついてきた。
「アッ、は――ンンンッ!」
「あぁぁんっ―――っく、ン、あぁぁぁ――」
ばしゃばしゃとお湯が揺れ、二人はくったりとしておとなしくなった。
弾むように、荒く吐息を吐いている。
「少しおやすみ」
もう、僕にもたれかかって動かなくなってる二人に、僕は囁いた。
* * * * *
翌朝、綺麗に選択された元の服が帰って来て、僕はそれに着替えた。
「あ……なんかちょっと修理されてるかも」
少し傷んだところのあった革製の弱体化ベルトが、新品みたいになってる。
「一日でやってくれたのか、ありがたいな」
僕は着替えて部屋を出ると、ちょうど部屋から出てきたミシュレイと出くわした。
「あ……」
眼鏡をかけたミシュレイが、僕に気付いて少し驚く。
ちょっと赤くなって、視線を逸らした。
「お、おはよう……」
「うん、おはよう」
僕は笑って、ミシュレイに挨拶する。
眼鏡の中から横目で僕を見ると、ミシュレイは微笑して僕の方を向いた。
「おはようございます」
プリシアも部屋から出てくる。爽やかな笑顔で挨拶するプリシアに、僕らも朝の挨拶を返した。
「ライラはどうしたかな?」
「まだ寝てるのかもしれませんわ」
「あまり朝食が遅くなっても、こちらに迷惑だろうから……起こした方がいいかもな」
ミシュレイの言葉に僕らは頷き、ライラの部屋に行くことにした。
「ライラ、入るぞ」
ミシュレイがノックしながら、ドアを開ける。
反応はない。皆で部屋に入ってみると――
「あ、やっぱりまだ寝てる」
「カーテンを開けますわ」
プリシアがカーテンを開けると、部屋に眩しい朝陽が差し込んだ。
見ると、ベッドの上にシーツの塊がある。
「う……ん…んがっ――」
いきなり寝言がしたかと思うと、シーツがバンと剥ぎ散らかされた。
寝相が悪いとは聞いていたが――
「あっ、わわわ!」
シーツの中のライラは――全裸だ!
眩しい朝陽のなかで、ライラの裸身がベッドの上であらわになる。
ライラは大きな胸を揺らしてベッドの上で転がり、その健康的な脚がシーツを蹴とばした。
「ちょっと! クィードは外で待っててくれ、起こすから」
「わ、判った。先に下に行ってる」
僕は慌てて部屋の外へ出て、先に一階に降りた。
「おはようございます、クィード様。よくおやすみになれましたかな?」
少しするとダールさんが現れて、僕にそう言った。
僕は笑って返す。
「凄く快適に過ごしました。ベルトも修理してもらって――ありがとうございます」
「いやいや、なにせこの街を救ってもらったのですからな、それくらいは」
ダールさんが微笑む中、階段を降りてくるライラの声が響いた。
「おはよー! だぞ!」
めっちゃ元気だ。僕は笑って、挨拶を返す。
なんで、この子は全裸で寝てたんだ? とか疑問に思ってると、ライラ本人が口にした。
「貸してもらったドレスを着てそのまま寝ようとしたら、なんだかベッドの中でくすぐったくなったんで、脱いで寝たんだぞ」
「あ……そうなの」
「お気に召しませんでしたか、申し訳ありません」
ダールさんが申し訳なさそうに頭を下げる。と、ライラは首をブンブン振った。
「あ、着心地は最高だったんだぞ。それに部屋も寒くなかったから、ぐっすり寝たんだぞ」
ライラはそう言って、にっかり笑った。
それから朝食をもらい、僕らは世話になったダールさんにお礼を言って、ホワンテッドを出た。
一日かけて、僕らはオーランドに戻ってきた。もう、夕方だ。
ギルドに行ってヒュドラ討伐の報告をしようと思い、まずギルドに行く。
ギルドに入ると、もう食堂は夕食をとる冒険者たちで賑わっていた。
やっぱり大きなギルドだな、と改めて思う。
「おい! ――ありゃあ、レイミアーズじゃねえのか!?」
「『ヒュドラ殺し』レイミーズだ!」
いきなり食堂が騒がしくなる。僕らは戸惑いながら奥へ進むと、次々と声がかけられた。
「よくやってくれた、レイミアーズ!」
「ダチの仇を……ありがとう!」
「このギルドの英雄だぞ、レイミアーズ!」
え……? なんか、凄い騒ぎになってる。
というか、なんでもうヒュドラ退治のことが知られてるんだろう?
僕は驚きながらも受付にいくと、受付嬢のサーラさんが喜色満面で出てきた。
「おかえりなさい、クィードさん! 皆さんのヒュドラ討伐の報告を聴いて、こちらのギルドでも歓声があがったんですよ」
「そ……そんなにですか」
僕は驚いた。サーラが頷く。
「はい。ここのギルドから挑戦しにいった冒険者で、返り討ちにあった人もいます。中には亡くなった方も……。あのヒュドラを討伐するのは、ここの皆さんの悲願だったんです」
「そうだったんですか――」
僕らはそんなことも知らず、なんとなく行っただけだけど……よかったな、人の役にたって。
「それではクエスト報酬の500万ワルドですが、どうなさいますか? 銀行に預けます?」
「はい。20万ワルドだけ現金でいただいて、後はそれでお願いします」
これで当座の四人の生活費もなんとかなるな……と、僕は息をついた。
その手続きを済ませて受付を離れると、不意に歩いて来る人物がいる。
ライラと戦ったベルドロだ。
「よう、お前たちヒュドラ討伐に成功したんだってな!」
ベルドロはそう言って、ライラに声をかける。ライラはまだ少し警戒してる。
と、ベルドロは深く頭を下げた。
「ありがとう……」
「え――?」
僕らはベルドロの態度の変貌ぶりに驚いていた。




