2 パーティー名登録
パーティー名登録に関しては、僕には一つ案があった。
「僕たちは光龍王にちなんで集まったメンバーだ。光龍王レイミアードの名前にちなんで、レイミアーズというのはどうかな?」
僕がそう言うと、プリシアが微笑んだ。
「すっごくいいと思いますわ。お父様もきっと草葉の陰で――」
「いや、まだ死んでないよ! プリシア!」
涙を拭くプリシアに、僕は声をあげた。
ミシュレイが微笑む。
「けど、いいんじゃないかな。レイミアーズ」
「あたしもいいと思うんだぞ」
ライラが賛成して、その場は決まった。
「じゃあ、パーティー名はレイミアーズでいこう」
ギルドに入り、受付に行く。と、サーラが僕らに言ってきた。
「あ、おかえりなさい。それで――クエスト受注の件ですけど、クィードさんたちのパーティー名が判らなくて――」
「あ、まだパーティー登録してなかったんですよ。パーティー名は、『レイミアーズ』で、お願いします」
「レイミアーズですね、かしこまりました」
サーラはそう言うと、にっこりと笑った。
パーティー登録を終えた僕らは、ギルドを出た。
「それじゃあ、クエストに行こう。『ヒュドラ退治』――場所は、ガラリナ山傍の街、ホワンテッド」
僕らはそうして荷馬車を走らせた。
一日かけて、僕らはホワンテッドに着く。
僕らはまず、事情を知ってると言うギルドの支部に赴いた。
ギルド支部では、そこのマスターのダールという男が事情を説明してくれた。
「ガラリナ山中にヒュドラがいたのですが――それがホワンテッドの街にしばしば現れるようになったのです。街にいる警備隊、冒険者では歯が立たず、皆、殺され喰われてしまいました……。耐えられなくなり、ギルド本部に連絡をし、広域クエストにしてもらったのです」
ダールは神妙な面持ちでそう説明した。
事態はかなり切迫してる――その印象がはっきりと伝わる。
ガラリナ山の地図を貰い、ある程度の山中の説明を受ける。
そしてヒュドラの棲み処と思しきポイントも教わった。
「――判りました。ガラリナ山中に出向いてみます。……三日たって戻らなかったら、ギルド本部へ連絡してください」
「よろしくお願いします」
頭を下げたダールに、僕たちは別れを告げてギルド支部を出た。
ガラリナ山傍まで行き、荷馬車で入れない所まで行くと僕らは歩きに変える。
「……険しい山だな」
岩肌があちこち覗いていて、切り立った崖が連なっている。
僕らはその山に分け入った。
歩きながら、僕はプリシアに訊く。
「プリシア、ヒュドラについて知ってることある?」
「――お父様から聴いていたのですけれど……」
プリシアは拳を唇にあてて、考えながら声を出す。
「ヒュドラは竜に近いが全く異なる生き物で、しかもその強さは竜に匹敵する――と」
「えぇ!? そんな奴を討伐に行くのかだぞ?」
ライラが声をあげる。
「しかし……街まで出てきて人を襲うというのであれば――捨て置けないな」
「こんな時こそ、滅竜攻団が来るべきなんだぞ!」
ライラは憤慨して言った。しかし僕らは既にダールから事情を聴いていた。
滅竜攻団に相談したところ、『竜でないものは、対象外』だという理由で討伐を断られたというのだ。
「なんか、カイザーボアの時の事、思い出すね」
「そうですわねぇ、あの時は美味しいかと思ったのに残念でした……」
プリシアがそう洩らすと、ライラが眼を剥いた。
ミシュレイが驚きの声で訊く。
「カイザーボアを――美味しいと思って食べた?」
「ええ。竜の時はよく食べてまして、生肉が最高なんですのよ! ……けど、人間態で食べたら、とてもまずかった」
「なあんだ、不味いのか。残念だぞ」
ライラが本当に残念そうに言う。……食べたかったのか?
そんな事を言いながら先へ進む。
「そろそろポイントだ。慎重に行こう」
僕の言葉に、皆が頷く。
――が、しばらくすると、ライラが声をあげた。
「ちょっと訊きたいんだけど――それは、わざとなのか、だぞ?」
質問の意味が判らずに、僕はライラに訊いた。
「わざとって――何が?」
「気配がダダ洩れだぞ。わざと出してるのか、だぞ?」
ライラの言葉に、僕は驚いた。
「気配がダダ洩れって――僕たちが?」
「プリシアはあまり感じないけど、ミシュレイとクィードは気配がダダ洩れだぞ。特にクィードはひどいぞ」
えぇっ!?
「えっ!? 僕って、気配ダダ洩れなの?」
「もう、気力が洩れすぎてて、このまま近づいたら、モンスターは逃げ出すんだぞ。狩りにならないんだぞ」
そ……そうなのか。
「いや……僕は弱体化ベルトで竜気を抑えてるから、気配なんてないと思ってた」
「竜気は抑えてるかもだけど、普通に気力の気配が洩れてるんだぞ。特にクィードは気力量が高いから、まったく隠しきれてないんだぞ」
ライラの言葉の後に、プリシアが口を開く。
「わたしはネフィーラから貰った竜気を抑えるブローチがあるから、判らないのね」
「多分、それは竜気を抑えるんじゃなくて、気配を消すブローチだぞ。猟師がつける奴だぞ」
ライラはプリシアに言う。
「気力の気配は消えてるけど、動く時の物音とか足音で判る気配は全く隠しきれてないぞ。みんなモンスター狩りしたことあるのかだぞ?」
「いや、実はほとんどしたことない」
「ボクもだ。擬竜は狩ったことがあるが、モンスター狩りは初めてだ」
僕に続いてミシュレイが答える。ライラはちょっと、にんまりした顔をした。
「フフン、あたしは師匠とよくモンスター狩りをしてたんだぞ。このなかじゃ、あたしが先輩だぞ?」
ククク――とライラが笑う。僕は笑いながら言った。
「それじゃあ先輩、僕らに気配の抑え方について、教えてもらえませんかね」
「お安い御用だぞ」
ライラはそう言うと、説明を始めた。
「まずみんな気力を高めてみるんだぞ」
ライラが気力を爆発呼吸によって高める。ライラの全身から、光が洩れ始めた。
僕らもそれに倣う。
「うん、高めるのはみんな普通にできてるぞ。今度はその高めた過程を逆戻しにして低めていく」
ライラが気力を低めていく。と、途中で止まる。
「本来の自分の気力量のところまで来たら、止まってしまう。けど、ここからまた意識して下げるんだぞ」
ライラの気力の気配が、さらに下がっていく。そしてやがて全く、気配を感じなくなった。
「これだけだぞ」
「む……難しいな」
こともなげにやっていたが、実は結構、高度な気力操作だった。
「そうか……ライラはブレッカーさんにこんなことまで教わってたんだね」
「冒険者としてモンスター狩りをしてたから、気配を消すのは必要な技だったんだぞ。モンスター相手以外にも、普段から気配は消しておいて、自分の強さは他人に悟らせちゃダメだってのが、師匠の教えだったんだぞ」
「なるほど――」
それであの時、向うの冒険者はライラの強さが判らなかったのか。
僕らは既に一回見ていたから、ライラの強さを知っていたが、なまじ気力を測れると、ライラの強さを見誤るだろう。
「うん。みんないい感じにできて来たぞ。これならモンスターに悟られないぞ」
「これで大丈夫ですかね、ライラ先生」
僕が少し茶化して言うと、ライラは嬉しそうに微笑んだ。




