2 『氷華鬼』アイナ
聖堂の広間で、『炎爆の』バルガスと『氷華鬼』アイナが対峙する。
二人は互いに見つめ合ったいたが、そこにゼーレ司教の声が飛んだ。
「それでは、聖堂を壊さぬ範疇で――互いに力比べをせい」
その声を聴き、バルガスがにやりと笑う。
「悪ィが……女だからって手加減はしねえぜ!」
バルガスは両拳をアイナに向けると、火炎弾の連続発射をおこなった。
「マシンガン・バースト!」
「フッ」
アイナは予想済み、と言わんばかりの笑みを浮かべると、胸元から水色の扇子を取り出した。
その扇子は広げると、いきなり1mもの大きさになる。アイナはその扇子で火炎弾をひらひらと弾いた。
「氷扇舞」
冷気が滞留しながら、火炎弾が全て弾かれる。
バルガスは笑みを浮かべた。
「おもしれぇ――」
足元が突然爆発したかと思うと、バルガスはその勢いでアイナに迫った。
その拳を振り上げ、バルガスはアイナに迫る。
「剣山氷!」
と、その軌道に地面から突然伸びてきた、鋭く尖った氷山が幾重にも出現する。
バルガスは拳で、その現れた氷山を叩き壊した。
「爆殺拳!」
炎が宿った拳で、バルガスはアイナを殴った。
爆炎とともにアイナだったものが爆散する。
「――威力だけは大したものね」
背後からの声に、バルガスが振り向く。と、その首元に鋭い氷の切先が届こうとしていた。
バルガスは瞬間、全身に爆炎を身にまとう。
その爆炎の勢いで、氷の剣が砕ける。
「へっ、そんなヤワな剣で、オレを刺せるかよ。氷の身代わりには騙されたがな」
バルガスがにやり、と笑う。
剣を砕かれたアイナが、それに微笑み返した。
その様子に、ゼーレ司教が声をあげる。
「よしよし、その辺でまあ、よかろう。どうだバルガス、新しいメンバーは?」
「いいんじゃねえの?」
バルガスはそう言うと、爆炎を解いて頭の後ろで両手を組んだ。
そしてアイナが声をあげる。
「――と、いうわけだから、よろしくね、皆さん」
アイナはそう言うと、ディランたちに艶然と微笑んだ。
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ウェストリアのサディールを出ると、僕たちは隣の市であるウディールを目指していた。
「なんだかいい陽気で、ピクニック日和なんだぞ」
妙にご機嫌でライラが先を歩いている。
ミシュレイが呆れるように言った。
「そんな呑気な気分か。もしかしたらボクたちには追手がかかってるかもしれないんだぞ」
「あ! 今、あたしの口真似をマネたぞ!」
「真似てない!」
ミシュレイが赤くなって言い返す。それを見たプリシアが、くすりと笑った。
「けど……色々あったけど、お父様の龍王具の継承者が三人も揃うなんて。心強いですわ」
「龍王具も機能してる。光龍王レイミアードは、何処かに健在だ。大丈夫、必ず見つかるよ」
僕がそう言うと、プリシアが頷いた。
と、ライラが口を開く。
「実はサディール以外の街に行くのって初めてなんだぞ」
「まあ、ちょっと前のわたしたちと一緒ですわ、ねえ、クィード」
プリシアの言葉に、僕は頷いた。
「そうだね。僕は山奥の村から出たことがなかった」
「え、そうなんだぞ? あたしより、田舎者なんだぞ」
「そうだよ。凄い田舎だった」
僕はそのあけすけな物言いに思わず笑った。
「だけど楽しかったな……村の生活。村の爺ちゃんや婆ちゃん、みんなが僕の家族で――野菜とか採れるとすぐに分けてくれた。――もうなんだか、随分、昔みたいだ」
まだ、ほんの数か月前のことなんだけど、僕の運命がこんなに大きく変わるなんて予想もしてなかった。
「けど今は、みんなが僕の家族みたいなものだ――と、僕は思ってる」
僕は皆にそう言うと、プリシア、ミシュレイ、ライラの三人が、驚いた顔をみせる。
「ん……なんか、おかしなこと言ったかな?」
僕はちょっと不安になって訊いてみる。
と、プリシアが微笑んだ。
「もうクィードってば……わたしは嬉しいですけど」
「いやまあ……うん、まあ――そうだな…ボクもそう思うよ」
眼鏡を押さえながら、何故か顔を赤くしたミシュレイがそう口にする。
と、ライラが駆け寄ってきて、僕を見つめた。
「師匠以外に家族みたいな人いなかっったから――嬉しいんだぞ」
そう言ってライラは、にーっと笑った。
やがて僕らはウディールにたどり着き、歩き詰めの身体を休めようと、とにかく宿屋に入った。
「すみません、四人、二部屋で泊まりたいんですが」
「あ~、今、シングルが一つとダブルが一つしか空いてないですね」
「じゃあ、その二部屋でいいです」
二つの部屋を案内されると、プリシアが言う。
「それじゃあ、わたしとクィードがシングルのお部屋ですね」
「当然のようにクィードと同室なんだな……」
ミシュレイが不満げにボソリと洩らす。
「それじゃあ、あたしはミシュレイと一緒なんだぞ! 誰かと一緒に寝るなんて、久しぶりなんだぞ」
妙に嬉しそうにライラがはしゃぐ。
隣町のことはまだこの街には伝わってないらしく、僕らは落ち着いて夕食を食べて就寝することにした。
「それじゃ、そろそろ寝ようか」
と言った後で、僕はこっそりミシュレイに訊く。
「ミシュレイ、紋章の方は大丈夫?」
「今のところ、な。もし痛むようだったら、そっちの部屋に行く。いいか?」
「もちろんだよ」
僕がそう言うと、ミシュレイは少し赤い顔で頷いた。
「それじゃあ、おやすみ」
そう言って、ミシュレイとライラが連れ立って隣室に行く。
僕とプリシアはシングルのベッドが置いてある部屋に入った。
「ちょっと狭いから――今日は僕は寝袋を敷いて寝るよ」
「また、そんなことを! もう、一緒に寝ましょうよ」
そう言って、プリシアは僕の腕をとる。
ちょっと! プリシアの柔らかい胸が……少しは気にしてほしいんだけどな。
と思ってるうちに、プリシアの身体が光り――あっという間に、タンクトップとショートパンツの薄着になった。
「ね、クィード、はやく寝ましょ」
「う、うん……」
プリシアに連れられながら、僕とプリシアはシングルのベッドに横になる。
なんか――プリシアとの距離が凄く近い。
「ちょっと……狭いね」
「ウフフ――そうですわね」
そう言って笑う、プリシアの長い睫毛が目立つ。
美しい金髪が白い肌を見せる胸元に、ふわりとかかっていた。
――と、その時、突然に部屋のドアが開いてミシュレイの声がした。
「――クィード! ライラが大変だ!」




