第二十話 滅竜攻団の陰謀 1 黒仮面卿との対峙
地面に投げ出されたプリシアを助け起こす。プリシアは強気の顔で言った。
「大丈夫ですわ、不覚をとりました」
「僕もだよ。まったく――まだまだだね、僕ら」
僕がそう言って笑うと、プリシアも微笑む。
すると僕の攻撃で、内部にダメージを受けてるはずの鎖男チェインが、声をあげた。
「なんだか――仲がよさそうデ……ムカつくド!」
チェインが、鎖を数本飛ばして来る。
「竜光剣!」
その鎖をプリシアは、全部たたっ切った。
「来るのが判ってれば、どうという事ない攻撃ですわ」
「オデの鎖が……」
チェインが鎖が斬られたことに呆然としてる間、ミシュレイは絵札の男ディカードと交戦を続けていた。
「水は変幻自在――その形を自由に変えられる!」
カードに吸い込まれている二匹の竜が、急に網目状になって膨らんでいく。
「な――なんだと?」
「水刃球!」
水竜は水球へと変化し、カードの縁をはみ出る。と、その水流が、ディカードを襲った。
「ム――これほど使えるとは!」
襲い掛かる水の網を避けるため、ディカードが飛び退る。
ディカードの背後にカードが現れたかと思うと、ディカードはその中に消えた。
「――何処から現れる?」
僕らが油断なく周囲を見回していると、何処からともなく声が響き渡った。
「どうやらゲームの時間はお終いのようです」
「ゲームだと? 僕らはお前たちと遊ぶつもりはない!」
僕が怒鳴り返すと、ディカードの声が返ってきた。
「残念ですねぇ、ぼくはもう少し遊んでいたかったんですが――君たちは野放しするには、充分に危険と判断されました」
なんだこいつ? 誰が判断をしたって?
「危ない、クィード!」
プリシアの声がして、プリシアが竜光剣で僕の背後に迫った何かを斬った。
僕は驚いて振り返る。――それは、影だった。
「なんだ!?」
「――奴だ!」
ミシュレイが険しい顔で、声をあげた。
不意に僕らの前に、一枚の巨大なカードが現れる。
そのカードが開くと、中から――黒仮面卿が現れた。
「ジャルドー!」
ミシュレイが黒仮面卿を睨む。プリシアも険しい顔で、黒仮面を見ていた。
その黒仮面には、真っ黒な仮面に赤い吊り上がった眼だけが刻印されている
その眼が、ぼんやりと光った。
「シュラ……よもや、お前が生きていようとは思わなんだぞ」
黒仮面卿ジャルドーは、低い声でそう声を出した。
ミシュレイは、ぎり、と歯噛みをする。
「その名でボクを呼ぶな……。よくもボクに偽の記憶を植え付け、母さんの思い出を汚したな。絶対に許さないぞ、ジャルドー!」
「父親代わりにお前を育ててきたというのに」
黒仮面卿が掌を前にかざす。
すると、伸びてきた影が立ち上がり、ミシュレイに襲いかかった。
「クッ!」
ミシュレイが薙刀を振る。しかしその薙刀の刃は、向かって来た影を通過してしまった。
逆に向かって来た影はそのままミシュレイの首を掴み、地面から掲げるように締め上げた。
「ミシュレイ!」
「ぐぅ……う――」
ミシュレイが苦しんでいる。僕は動こうとしたが、それより早くそこに光線が走った。
「竜閃光!」
プリシアの放った光線が、ミシュレイの首を掴む影の腕を分断した。
さらにプリシアはそこに突っ込み、光の剣で影を斬る。
どさり、とミシュレイが地面に降りる。
首を押さえながら、ミシュレイが言った。
「すまない、プリシア」
「どうやら、わたしの方が相性がいいようですわ」
プリシアはさらに光の剣を、槍の形に変える。
光の槍を構えて、プリシアは声をあげた。
「竜光槍! ……黒仮面卿、お父様が何処にいるのか言いなさい!」
黒仮面卿は黙っている。
プリシアは黒仮面卿ジャルドーに襲いかかった。
「よくも村を襲い――わたしを傷つけましたね! 許しませんわ!」
「お前たち竜は害獣だ。害獣を駆除するのは、当然のことだ」
プリシアの光の槍の攻撃を、ジャルドーは影の剣で受ける。
と、その足元から影が伸びて、プリシアに掴みかかった。
影はプリシアの両腕を掴むと、その背後にまとわりつくようにまわりこむ。
腕を取られ、プリシアが動けなくなっている。
「プリシア!」
僕がそこに行こうとした瞬間、頭上から振って来る気配を感じ僕はかわした。
地面に轟音をたてて、極太の鎖が叩きつけられる。
「オデの鎖で……シバるぅウウウウッ!」
鎖の間から見える口を開け、チェインが大声をあげた。
鎖がさらにチェインの背後から飛んできて、僕に襲いかかる。
「小気旋!」
気流渦をつくってその攻撃を凌ぐが、影に捉えられて動けなくなったプリシアに、ジャルドーが迫っていた。
ジャルドーが影の剣を振り上げた時、その身体に水竜が襲い掛かる。
「水竜突閃破!」
「ムッ!」
ジャルドーがプリシアから影を戻し、水竜への防御へと使った。
影は両腕をクロスさせ、水竜の攻撃に耐えている。
「――なかなか状況が拮抗してますねぇ」
余裕ありげな声を出したのは、ディカードだ。
ディカードはブレッカーの柄による突きをかわす。と、ブレッカーはさらに後ろ回し蹴りを放った。
しかしその蹴りが当たった、と思った瞬間、ディカードの姿はない。
代わりにバラバラと数枚のカードが地面に落ちた。
「変わり身か!?」
「カードは、トリックが信条でしてね」
既に離れた場所に立つディカードが、カードを一枚投げる。
と、それはブレッカーが鞘から抜き切らない剣で防御する手前で、爆発を起こした。
「うわぁっ!」
「ククク……いかがです? カード爆弾の味は」
ディカードはカードの束を折り曲げると、そこから弾丸のようにカードを連射してきた。
「まずい!」
あれが全部爆発したら、ブレッカーが大変なことになる。
僕は駆け出して、両腕で∞の形に気流渦を作る。
「気流渦、無限の型!」
飛んできたカードが気流渦に巻き込まれ、その全てがディカードへと流し戻された。
「なんですって……?」
ディカードの目の前で、カードが連続爆発を起こす。
僕は爆発のダメージを負ったブレッカー訊いた。
「大丈夫ですか、ブレッカーさん!?」
「くそ……面目ねえな――」
見るとブレッカーの左の拳まで血まみれになってる。爆発を庇った時に、負傷したのだと悟った。




