4 ブレッカーvsバースド
凄まじい勢いで爆発する連続攻撃に、ブレッカーはライラの手を引いた。
「ライラ、逃げるぞ」
「え!? 逃げるの師匠?」
「こんなん、つきあってられるか!」
そう言って手を引くブレッカーの移動速度は半端ではない。
ライラはそれに追いつくのがやっとだった。
「待て、逃げるな!」
背後からバースドの声が響き、火炎弾が追撃してくる。
「くそ……しつこい奴だな」
ブレッカーは忌々しそうに呟くと、ふと目の前に大きな石柱があるのに気が付いた。ライラの手を放し素早く石柱の背後に廻ると、ブレッカーは剣を完全に鞘から抜いた。
左手で逆手に持った剣を、くるりと手を返し順手に持ち直す。
と、ブレッカーは、左手一本で、その巨大石柱に向かって剣を振った。
「岩斬!」
一瞬、光が閃く。――と、ライラが見た瞬間、その石柱がぐらり、と斜めにずれた。
「え、岩を斬ったのか師匠!?」
「離れてろ」
ブレッカーはそう言うと、向かって来るバースドに向かって石柱を蹴り飛ばす。
「な――」
バースドが倒れてくる石柱に驚いて立ちどまると、その行く手が遮られた。
「なんだあいつ、ニンゲンのくせに滅茶苦茶しやがる! ……フン、しかし逆に面白ぇ」
バースドはそう言うと、にやりと笑みを浮かべた。
と、その姿が赤の身体、オレンジの毛並みを持つ竜へと変わる。
竜の姿になったバースドは、軽々と石柱を飛び越えて、ブレッカーたちの前へと現れた。
「おい、ニンゲン! なかなかやってくれるじゃねえか!」
「あ、あいつ――本当に竜だったんだ……」
ライラが呆然とする中、ブレッカーは空中の竜を睨んだ。
「どうして竜が俺を狙う? 俺は竜に恨まれる覚えはないが」
「三週間前、火竜の隠れ里が襲撃を受けて全滅した。そこの生き残りが言ったんだ。『この隠れ里の場所を知ってる人間は――ブレッカー・ストラグルだけだ』ってな!」
ライラはブレッカーを見る。
ブレッカーは何も言わない。
「師匠……本当なんだぞ?」
「それは――確かに事実だ。だが、その襲撃に俺は関与してない」
「じゃあ、他に知ってるニンゲンは?」
ブレッカーは首を振った。
「恐らく……いないだろうな」
「じゃあ、お前しかいないだろうがぁっ!」
竜がいきなり、口から業火を吐く。
その業火は凄まじい勢いで、ブレッカーを襲った。
「師匠!」
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
ブレッカーを追う僕らは迷宮の中を進むが、一向に追いつく気配がない。
「もしかして、別の場所へと行ってるのか――?」
そんな疑心暗鬼が生まれた時、ミシュレイが声をあげた。
「クィード、これは戦闘の跡だ!」
ミシュレイが地面を指さす。見ると、焼けた跡がある。
「あの竜、火竜ではなかったか?」
「そうですわ。火龍王の息子バースドと名乗ってましたから」
プリシアがその焼け焦げた匂いを嗅いでいる。
「微かに竜の香りがします。間違いありませんわ」
「竜の香りなんてあるんだ」
「人間にはちょっとかぎ分けられないかもですけど」
プリシアはにっこりと微笑する。
と、僕は状況を考えてみた。
「まずいぞ、もう戦闘状態に入ってる。それであのバースドという竜は、かなりの戦闘力がある感じがした」
「先を急ごう」
ミシュレイの言葉に頷いて、僕らは先を急ぐ。
と、巨大な石柱が倒れ、道を塞いでる場所に出くわした。
「この石柱の切り口――」
恐ろしいほど綺麗に、石柱が切れている。
「こんな事できるのは、ブレッカーさんだけだろう。ここで石柱を切って、足止めしようとした」
「この向うか」
ミシュレイがそう言って上を見上げた時、石柱の向うから爆音が聞こえてきた。
「――師匠!」
ライラの声もする。この向うで、事態は危機的なものになってる。
「みんな下がって! ――激水砲!」
ミシュレイが凄まじい水流を照射すると、石柱が真っ二つに折れた。
そこから僕らは、向う側へと行く。そこで見たのは――
「しっかりするんだぞ、師匠!」
倒れたブレッカーに取りすがって、声をあげるライラがいた。
その中で、ボロボロになってるブレッカーは声をあげる。
「よう、竜の大将。……少しは気が済んだかい?」
「なんだと――?」
見ると空中に、大きな赤い身体の竜が浮いている。
その赤い身体に、オレンジ色の毛並みを持つ竜が、地上に降り立った。
竜は身体を光らせると、少年――バースドの姿へと変わった。
「お前……今、わざと避けなかったな? どういうつもりだ?」
「そうでもしねえと……あんたが落ち着かないと思ってよ」
わざと攻撃を喰らった? バカな、それにしてはダメージが大きすぎる。
「しっかりしてください! 今、治癒します!」
僕は声をあげて、ブレッカーの元へと駆け付けた。
「待て……俺はあの竜と……」
「話は後にしてください! このままじゃ、貴方が死にます! 治癒!」
僕は治癒の光をブレッカーにあてた。
と、傍のライラがブルブルと震え出す。
「よくも師匠を……」
その声が怒りに震えていた。
「よくも師匠を、やってくれたんだぞっ!」
ライラは剣を持ってバースドへと飛びかかった。
その斬りつけを、バースドが火炎剣で防ぐ。
「ハン! 奴の弟子のお前も――同罪だ!」
「ふざけるな! 師匠の受けた痛みを味合わせてやるんだぞ!」
ライラの猛攻を、バースドが火炎剣で防ぐ。
僕は治癒を続けながら、声をあげた。
「プリシア、ミシュレイ、二人を止めるんだ!」
僕の声に二人は頷きあい、ミシュレイがライラの前に――プリシアがバースドの前に割って入った。
「邪魔するのか! 邪魔するなら――容赦しないんだぞ!」
ライラの斬りつけを、ミシュレイは薙刀で受ける。
「少しは頭を冷やしなさい!」
ミシュレイは水刃を飛ばす。ライラがそれを斬り伏せると、水が弾けて顔に当たった。
「うわっぷ! ムカつく攻撃だぞ!」
「おとなしくしなさい!」
一方では、プリシアの前にいるバースドが口を開く。
「ブレッカー・ストラグルを庇うということは……お前たちもオレの敵ってことでいいな?」
「よくありませんわ! いい加減にしてください!」




