表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境の治癒士が竜姫と出会ったら ~癒しの魔法に女性たちはメロメロ!?~  作者: さとうはるか


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/74

4 菓子姫ビターフォーム


 ピンクの巻き髪はそのままに、『菓子姫』キャンディーヌは、すっかりその様相を変えていた。

 全身をピッタリと覆うダークブラウンのスーツは光沢を放ち、腕に黒のロング手袋、足にも黒のロングブーツを履いている。


 そしてキャンディーヌはにやりと笑うと、その手の中に何か出した。


「――剣? ……いや、ケーキナイフか!」


 右手に剣にも見える巨大なケーキナイフ。左手には農具の鋤にも見える、巨大なフォーク。

 キャンディーヌは残忍そうな笑みを浮かべた。


「ビターフォーム。こうなったら、もう甘くはないわよン」


 キャンディーヌが駆け寄って来る。かなりの速さだ!

 いきなり、ナイフで切り付けてくる。


 かわしたところに、フォークの突きが襲う。僕は後退しながら、手の中に杖を出した。


「オラオラオラ! ボーッとしてると、入刀するぞ!」


 ガラの悪いチンピラみたいな声を出して、キャンディーヌは猛烈な連続攻撃を仕掛けてきた。

 僕はそれを杖でいなしながら、レーナを目線で下がらせる。


 僕がキャンディーヌと戦っている間、プリシアはゲゾンを相手に苦戦していた。

 ゲゾンは虫捕り網を持って、プリシアに襲いかかっている。


 網の輪っかの部分で薙ぎ払う動きをしたと思うと、柄の方で突きを出す。その攻撃技は多彩で、プリシアは竜光剣でなんとかそれを凌いでいた。


 と、ゲゾンが声をあげる。


「シュラ! ボーッとしてないで、ガキを狙え!」


 声を上げられたシュラが我に返ったように、レーナを見る。

 そして掌を向けると、水流の攻撃を発射した。


「水流砲!」

「――くっ!」


 僕はそっちに飛び込んで、杖の両端を掴むように持ち、気流渦を展開した。


「大気旋!」


 なんとか水流攻撃を逸らす。と、よこからキャンディーヌがフォークを突き出してくる。


「アタシのことだけ見つめな!」


 いけない、躱しきれない! 

 ――そう思った瞬間、僕の身体が何かに押されて動いた。


 大きな影に押された。そう思って背中を見ると、一匹の竜がそこにいる。

 そんなに大きくない、体高は2,5mほどだ。


「もしかして……レーナちゃん?」

「うん」


 緑色の竜は、可愛い声で頷いた。あ、レーナだ。


「ギャハッハッハ! 醜い正体をさらしやがったね! ちょうどいい、そのガキ竜も串刺しにしてやるよ!」


 キャンディーヌが喜色満面で、そう声を上げる。

 が、それに対し、ゲゾンが口を開いた。


「おい……ガキの竜は生きたまま捕まえるのが、基本だろ」

「そんなこと、アタシが知るかぁっ!」


 キャンディーヌは明確に、レーナを斬りに来た。

 しかしその分、軌道ははっきりしてる。


「今だ!」


 僕はその攻撃線に入ると、杖を消して把気を伸ばした。

 ナイフを振り上げた腕を、把気が捉える。


「な――」

「気流柔術、十段投げ!」


 捉えた腕をその勢いのまま、宙に浮かせて地面に叩きつける。

 が、それで終わらず、また弧を描き、再度地面へ。

 それでも終わらず、また宙を舞い、地面に投げつける。


 僕はキャンディーヌを合計十回、地面に投げつけた。


「グ……」


 さすがのキャンデイーヌも小さく呻いて動かなくなった。


「菓子姫! チッ、やられやがって! シュラ、そっちをやれ!」

「判った――」


 今度はシュラが僕の前に立つ。

 が、僕は言った。


「僕は知ってるぞ。君は――竜の隠れ里の襲撃に参加していただろう?」

「な……なんで、そんな事を――」


 シュラが驚いた顔をしている。

 僕はさらに声を上げた。


「その時、君が見殺しにした女の子がいただろう。その子は、この子の妹だ! 君はこんな幼い、何の罪もない姉妹を殺すつもりなのか!」


 僕の言葉に、シュラが眼を見開く。


「ぼ……ボクは――」

「君は抵抗があると言っていた。当たり前だ。外見は人間に似ているけど、一方的に残酷な殺戮をしたのは人間の側だ! 君には、それが判ってるはずだ!」


 僕がそう言うと、シュラは驚愕の表情で唇を震わせた。


「な……なんで、そんな事まで知っている? 何処かで隠れて見ていたのか」

「隠れ里に行った時、この子たちの死んだ母親が、霊になって僕たちに伝えてくれたんだ。そしてこの子を助けてくれと頼まれた。子供を想う母親の気持ちは、竜でも人でも変わりはない! それなのに君は、まだ残酷な虐殺に手を貸すのか!?」


 僕の言葉に、シュラは絶句していた。

 そこに、ゲゾンの声が飛んでくる。


「シュラ! そいつの言葉に耳を貸すな! 竜を殲滅する――それがオレたちの使命だ!」

「そんなこと、させませんわ!」


 プリシアがゲゾンに、竜光槍を突き出す。

 ゲゾンがそれを虫捕り網でいなしてかわした。


 と、次の瞬間、突然、プリシアが身体を震わせた。


「アァッ!」


 ビクン、と身体が硬直する。と思った瞬間、プリシアは突然、地面に倒れた。


「プリシアっ!」


 何が起きた!? 僕はプリシアの元へ駆けつけようとする。

 しかしその眼の前に、何か黒いものが空中に漂っている。


 それは――巨大な蜂の大群だった。

 前に一度見た、キングスズメバチだ。一匹が5cmくらいはある。


「まさか……プリシアを刺したのか?」

「そうさ。すぐに毒がまわるぜ」


 ゲゾンが愉快そうに微笑みを浮かべる。

 と、地面に倒れたプリシアが、完全に白目を剥いて痙攣し始めた。

 その口の端から、白い泡がこぼれ落ちる。


「いけない! プリシア!」

「お前たちも、刺してやるぜ。行け、キングズズメバチ!」


 ゲゾンは僕たちに向かって指さした。キングスズメバチの群が、唸りを上げて向かって来る。

 僕はズズメバチの群とゲゾンが一直線上になる場所に移動する。ここからだ!


「気渦砲!」


 胸の前で両手で円を描く。気流は渦を巻きつつ、ゲゾンとスズメバチに発射された。気渦砲でスズメバチが散った後に、ゲゾンを狙う。

 ゲソンはそこから跳び退いて、気渦砲を避けた。


 けど、それでいい。

 気渦砲がズズメバチの群を散らすのを見て、僕はレーナに言った。


「レーナ、僕についてきて!」

「うん!」


 僕はズズメバチの群を割った気流の跡を追って、プリシアの傍に辿り着く。

 プリシアは完全に白目を剥いて、泡を吹いて痙攣している。


「ひどい事を……待ってて、プリシア!」


 僕は前に発射している気渦砲を、上空に向ける。

 そこから手の幅を広げ、気流の渦を大きくした。


「オォォォォ……」

 

 さらに僕は自分自身で回転し、倒れているプリシアとレーナを包んだ大きな竜巻を作った。


「気流竜巻!」


 僕とプリシア、竜の姿のレーナが、竜巻の眼の中で蜂から身を守っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ