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辺境の治癒士が竜姫と出会ったら ~癒しの魔法に女性たちはメロメロ!?~  作者: さとうはるか


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4 封印を解く時


 気づいた時には――『風雅の』ディランがネフィーラの胸に刀を刺していた。


「ネフィーラぁっ!」


 僕は思わず声をあげる。


「――竜の分際で、人間の戦闘技術を学んだらしいが……」


 ふと、背後から『炎爆の』バルガスの声がする。

 僕は、嫌な予感を感じながら振り返る。」


「竜のやることは、全てお見通しなんだよっ!」


 左拳を剣で受けたプリシアが、バルガスの右の拳に胸を打ち抜かれる。


「キャァァッ――」


 プリシアが殴られて吹っ飛んでいく。その身体は崖の岩壁に当たって崩れ落ちた。


「プリシアぁッ!」

「雌竜のためによそ見かっ!」


 僕に向かってギルガインがノコギリ剣を振り下ろしてくる。

 慌てて翼盾で防御した瞬間、横蹴りを入れられた。


「グハァァァッ!」


 凄い衝撃だ。重い衝撃に飛ばされて、僕は膝をついた。


「……これまでじゃないですか? もう、いいでしょう」


 青い髪の『水禍の』シュラがそう呟く。

 これまで?


 胸を刺され、ネフィーラが倒れている。

 岩壁に衝突したプリシアが、動かない。


 みんな……やられちゃったの?

 僕らは――ここまでなの……?


「――クィード……」


 倒れているネフィーラが、声をあげた。

 絶望してる場合か! ネフィーラは――まだ諦めてない!


「ベルトを外せ……今が…その時だ――」


 ――!!!


「僕は――」


 憶い出した――出発前に、ネフィーラとかわした約束を。


“クィード、お前は十分に気流柔術を身に着けた”

“はい! ネフィーラのおかげだよ”


 そうだ……僕は、ネフィーラと約束した。


「クィード、お前はその弱体化(ウィーケンド)ベルトを着けていても、十分に戦えるだろう。逆に、気力を使えるようになったお前がベルトを外したら――その竜の力とあいまってとんでもないことになる」

「と、とんでもないこと――って?」

「判らん」


 ネフィーラは言った。


「正直、竜の底力が私には判らん。だからどうなるかは判らんが、相当に人間離れした強さになるはずだ。いいか、クィード――強大な力を持ちそれに溺れれば、いずれ自分の身を滅ぼす。だからお前は、基本的にはそのベルトを外すな」

「うん。判ったよ、ネフィーラ」


 僕の返事に、ネフィーラは微笑んだ。


“……お前はその優しさが、最大の特徴だ。お前なら、その力に溺れることはないと、私は信じてる。だから言うが――もし、自分の大事なものを守るために、どうしても必要な時は……そのベルトを外せ。ためらうな”


 ――そう言って、ネフィーラは力強く微笑んだんだ。


「ウオオォォォォォッ!」


 僕は叫びながら、ベルトを外し放り投げた。


「今さらベルトを外したくらいで、何が変わるってんだよ! おしまいだ、竜!」


 バルガスが炎の拳を倒れているプリシアに撃ちこもうとしている。

 僕の喉から、今まで出したことのないような咆哮が飛び出した。


「な――」


 拳を振り上げたバルガスに、僕はもう接近している。

 その顔を――思いっきり殴った。


「ぐおっ――!」


 バルガスが吹っ飛ぶ。しかし、バルガスは少し飛ばされた処で踏みとどまった。


「こ、この野郎! よくもやりやがったな!」


 そうだ。こいつらは一般兵士じゃない。実戦を摘んだ滅竜士だ。

 力任せの技で勝てる相手じゃない。


「コオオォォォォ……」


 僕は息吹を吐き出した。

 僕の身体の周囲に気流の渦が舞う。


 気流柔術には――当身…打撃がある。

 僕は左右の拳に、気流の渦を集めた。


「このオレを怒らせて――ただで済むと思うなよ!」


 それはこっちのセリフだ。


「……プリシアに手を出して――ただで済むと思うな!」


 炎の拳を掲げて突っ込んでくるバルガスに、僕は逆に急接近した。

 一気に懐に入ると、その水月に拳を打ち込む。


「旋気侵撃破!」


 打った拳を中心に、渦を巻く気力がバルガスの身体に衝撃を与える。

 と同時にそれは、僕の竜の身体速度を思い切り乗せた――恐ろしい破壊力の一撃だった。


「ゴ……アッ――」


 突然、何かに引っ張られるような勢いで、バルガスが後方に飛ぶ。

 その身体は凄まじい勢いで、岩壁に叩きつけられた。


「な……なんだと――」


 呆然とするディランの声をよそに、僕はプリシアの元に瞬時に駆け付けた。


「大丈夫、プリシア!」


 すぐに治癒魔法をかけた。


「あ……うン…」


 少し悶えて、プリシアが眼を覚ます。とりあえず、これで大丈夫だ。

 むしろ深手はネフィーラの方だ。


 僕は立ち上がって、ネフィーラとディランの方を見た。


「一体……何が――」

「許さないぞ、お前!」


 僕は怒りが爆発しそうな勢いで、ディランに急接近した。

 旋風を巻いてディランが後方に跳ぶ。かなりの反応速度だ。


 けど、逃がさない!


「気渦砲!」


 合わせた両手から、渦を巻く気力の砲撃を発射する。

 気力砲はディランの旋風を破壊し、ディランが地上に降りた。


「馬鹿な! 私の風を破壊するなど――」

「よくもネフィーラを傷つけたな!」


 僕はさらに気力の渦を発射し、ディランの身体を巻きこむ。

 その竜巻を、僕は上方に掲げた。


「う――うわぁっっ!」


 ディランの身体が空中に舞う。


「気流竜巻落し!」


 最大の威力を持って、僕は把気でディランを地面に叩きつけた。


「が……はぁ……」


 完全に白目を剥いたディランが、地面に倒れて小さく呻いた。


「ウ……ウソだろ――なんだ、こいつ……」


 青髪のシュラが、怯えた眼で僕を見る。

 その間に、僕はネフィーラに治癒魔法を施した。


「大丈夫、ネフィーラ?」

「ああ……大丈夫だ。クィード、ありがとう」


 しかしギルガインは、僕をまだ険しい目つきで睨んでいる。

 ギルガインは咆哮をあげると、ノコギリ剣を掲げ突っ込んできた。


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