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辺境の治癒士が竜姫と出会ったら ~癒しの魔法に女性たちはメロメロ!?~  作者: さとうはるか


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第五話 滅竜士の襲撃  1 プリシアとの模擬戦


 向きあった僕とプリシアは、互いを見つめた。

 プリシアも表情は真剣そのものだ。その唇が動いた。


「行きます! 竜閃光!」


 二本指をこちらに向ける。と、その指先から光線が発射された。


「旋気掌」


 僕は掌の中に気流の渦を作る。胸に向かって飛んでくる光線を、右手の最小限の面積で逸らした。

 続けて二発、三発を撃ってくるのを、左手の旋気掌も使いながら弾き飛ばす。


 以前よりプリシアの竜閃光は、威力が上がっている。けど、僕の方もそれを防御する技を身に着けたのだ。

 プリシアは竜閃光がきかないと見るや、両手を頭上に掲げた。


「竜光弾!」


 振り下ろされた手から、光の弾が幾つも発射される。

 光弾は直線ではなく、それぞれが複雑な軌道を描いて飛来してくる。


 これは旋気掌では難しい。そう判断した僕は、掌を外に向けて、両腕を外回りに旋回させた。


「双気旋」


 気流の渦が僕の前に広がり、縦横無尽に飛んでくる竜光弾を全て弾き飛ばす。

 この8の字に気流を作る防御技は、気流柔術の最も基本的な防御技だ。


 外側に飛び散った光弾が、地面に落ちると爆発する。

 軌道も読みづらく、着弾して威力を発揮する竜光弾はかなり厄介な技と言える。


 けどそれも防ぎきる僕に対し、プリシアは不意に両手を揃って前に出した。

 突然、その手の中に光りの棒が現れる。


「竜光槍!」


 伸びてきた光の槍が僕の胸を突きにくる。

 僕は腰に着けている亜次元ボールに触れて、木製の杖を取り出した。


「むっ!」


 伸縮自在で連続攻撃をしてくる竜光槍を、僕は杖で受流す。

 プリシアの槍は光熱線だから木製の杖も破壊する力があるが、杖にはない。

 まともに受ければ焼き切られる。だから僅かに触れるだけで受流す。


 槍を受けながら、その長さに添わせるように杖を持って間合いを詰める。

 一気に加速する僕の足は、気力の発力によって瞬時に爆発的な加速を生んでいる。僕は杖の突きを繰り出した。


「――!」


 急加速に驚くプリシアは、槍の流さが不利になると見るや長さを縮めた。


「竜光剣!」


 光の剣で、プリシアが僕の杖を防御する。と同時に、プリシアは後方に飛び退いた。それは一気に相当の距離を跳ぶ跳躍だ。訓練することで、人間状態でもプリシアは竜の力をかなり発揮できるようになってる。


 けど僕も、その跳躍に追いつけるほどの発力を持っている。

 追いすがりながら、僕は杖で攻撃する。杖の攻撃は上下左右自在だ。


 次々に左右で展開する攻撃を、プリシアは飛ぶように後退しながら防御してる。

 と、右手の剣で杖を受けると同時に、左掌から光弾を発射してきた。


 僕はそれを身体を回転させて躱す。円転の動きは、気流柔術の基本だ。

 そして回転が終わると同時に、杖を片手で先端まで持つことで間合いを伸ばしてプリシアの小手を狙った。


「くっ!」


 小手を打たれたプリシアが、小さく呻く。その右手が離れたのを見て、僕は杖を引き戻して水月に突きを仕掛けた。


「竜光壁!」


 一気に大きな光の壁を展開し、プリシアが防御する。

 壁自体にも攻撃力がある。向かって来る壁に対し、僕は杖を持ったまま両手で大きな円を描いた。


「大気旋!」


 気流で大きな渦を作ると同時に、身体を左足を軸に回転させる。

 向かって来る壁を受け流しつつ、身体の旋回で後方に飛ばした。


 ガラ空きになったプリシアを、今度は僕が攻める。杖を敢えてボールに戻す。


「把気!」


 手から把気を伸ばして、プリシアの腕を捉えた。


「――!」


 プリシアの驚く顔を見ながら、僕はそれを引く。

 プリシアが抵抗する。これは意識よりも早い生理反射の反応で、プリシア自身も制御できない。熱いお湯に手を付けると思わず手を引っ込める――あれのようなものだ。


 腕を曲げて引っ込めようとする反応を追って、その拳を外側に折り込む。体術の小手返しを、把気で行うのだ。


「あっ!」


 腕からバランスを崩されて倒れそうになるプリシアは、敢えて自分から横回転して技を逃れた。しかもさらに竜光剣を作って、僕の胴逆払いに来る。その動きは相当に俊敏だ。

 が、僕はそれを読んで、逆に払おうとする腕をそっと抑える。そのまま勢いを敢えて止めずに、円転の動きで廻る。


 横祓いの動きを誘導するように導きながら、僕はプリシアを横回転させた。その動きにプリシアがたたらを踏んでるところに、喉元に腕を差し入れて後方に投げる。プリシアが地面に倒れた。

 最後に顎を掌で触れて、旋気掌の掌打をいつでも撃ちこめる姿勢をとった。


「それまで! ――二人とも、なかなかよかったぞ」

「や~ん、またクィードに負けましたわ!」


 倒れた状態にそう悔しがるプリシアに、僕は笑って手を差し伸べた。

 ちょっと拗ねた風に上目づかいで僕を見るが、僕の手を握る。僕はプリシアを引いて起こしてやった。


「けど、小手を打った後にまだ反撃があるのは驚いたよ。凄く強くなった」

「うふふ……クィードにそう言ってもらえると嬉しいですわ」


 プリシアが嬉しそうに微笑む。さっきまでの真剣な顔とはうってかわった可憐さだ。

 そんなプリシアに見惚れてると、傍で審判をしてたネフィーラが口を開いた。 


「二人とも二ヶ月で、相当に成長した。Bランク冒険者と戦ってもヒケは取らないだろう。けど奢るなよ。上にはまだ上がいる。どんな強敵がお前たちを襲うとも限らん」


 ネフィーラの真剣な顔に、僕らは頷いた。ネフィーラはさらに続ける。


「お前たちはまだ修行を始めたばかりで伸びしろがある。まだまだ成長するし、もし実戦でピンチになったら、その場で自分を成長させて危機を乗り越えろ」

「はい、判りました!」


 僕は元気よく返事をした。ネフィ-ラが頷く。


「よし……ひとます修行はここで終わりだ。明日から、お前たちは旅に出なさい」

「ネフィーラ……」


 僕は一抹の寂しさを感じた。

 ネフィーラと一緒に暮らして修行をしたこの二ヶ月間――とても楽しかった。

 それが終わってしまうのが寂しい。


「私は旅支度に必要なものや、今日のご馳走を買って来るから、お前たちは汗を流して準備しとくといい」

「うん、判ったよ」


 ネフィーラもちょっと寂しそうな笑顔を見せると、馬車で出て行った。


「それじゃあ――僕らはお風呂入れようか」

「たまにはクィードが先に入ってください。いつも、一番後だから」

「そう? そうか……じゃあ、記念の一番風呂貰おうかな」


 僕は笑って、風呂の水くみをする。

 余談だけどネフィーラの家には井戸があって、水は豊富に利用できるんだ。

 だから飲み水にも風呂にも困ったことはないが、これから行く旅先ではどうなるか判らない。


 そう考えると、一番風呂を楽しむ贅沢なんて中々、これからないかも…

 そんな事を思いながら、僕は綺麗な一番風呂に入った。


「お湯加減はどうですか?」


 外にいるプリシアが訊いてくる。


「うん、ちょうどいいよ。最高の気分」

「それはよかったですわ」


 プリシアの弾んだ声が聞こえた。

 プリシアとは何度も手合わせしてるけど、僕もプリシアも段々に強くなっていったんだ。その実感がある。僕一人じゃあ、こんなに頑張れなかったかもしれない。プリシアがいてよかったな――


「ね、プリシアがいて、本当によかったよ。僕一人じゃ、修行も大変だったと思うんだ」


 僕はお風呂の気持ちよさを堪能しながら、外にいるプリシアにそう話しかけた。

 が、何の反応もない。あ、なんだ。お風呂はちょうどよかったから、炊き場からは離れてたのか。一人で話しかけて、バカみたい。


 ――と、突然、風呂場の扉が開いた。

 そこには……すっかり全裸のプリシアが立っていた。


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