3 精霊島とエルフ
ミシュレイはレーナの言葉を聴きながら泣いていた。
が、その顔をはっきりあらわにすると、口を開いた。
「ボクの罪が許されないものであるのは判っている……飛竜たちからの、どんな処罰も受けるつもりだ。けど――少しだけ待ってほしい」
ミシュレイはそう言うと拳で涙をぬぐった。
「レーナの妹……リーナを見つけるまでは――ボクの処罰を待ってほしいんです。ボクには彼女を見つける責務がある。どうか、それまでは――」
ミシュレイはそう言うと、深く頭を下げた。
ディードもウィリアも、真剣な面持ちでそれを見ている。
と、不意にロメリが声をあげた。
「ねえ、もういいんじゃないかな?」
不意にあがったロメリの声に、皆が注目する。
「その人さあ……ウチたちの攻撃をわざと受けたんだよ。それで――一回、死にかけた。っていうか、そこのクィードが治癒しなかったら、絶対死んでた。……それが処罰ってことじゃあ、ダメ?」
ロメリの言葉に、ディードが眼を見張る。そして僕を見た。
僕は黙って頷く。
「そうか……判った。じゃあ、飛竜の長として、君に言おう」
ミシュレイが顔をあげる。
「飛竜は君を許す。もう罰は受けたものと見做す――それでいいか?」
ミシュレイは驚きの顔をみせた後、うつむいた。
「……ありがとうございます…そして――本当にごめんなさい」
「もう、いいよ、ミシュレイ」
レーナがミシュレイの傍に寄り添って、そう言った。
「妹を見つけてくれるんでしょ? 頼りにしてる」
「うん……必ず、見つけて――レーナの元に連れてくるよ」
ミシュレイはそう言って、レーナに頷いてみせた。
場が緊張がようやく解けた――と思った時、プリシアが声をあげる。
「さ、色々、難しい事情はありましたけど――今夜は竜と人間の、交流パーティーにしましょうよ!」
プリシアのその晴れやかな声に、僕も乗った。
「ようし! じゃあ、腕によりをかけて料理を作るよ! ミシュレイもライラも手伝って」
「うん……判った」
「なんでもやるんだぞ!」
それから僕らは席を立ち、料理の準備を始める。
10人分以上の料理の準備に、僕らは大忙しになった。
料理が出来上がり、テーブルにところ狭しと並べる。
「わ~、美味しそう!」
「いい匂いがするね!」
特にロメオとロメリがはしゃいでいる。楽しみにしてるようだ。
全員が席に着いたところで、パーティーの始まりになった。
と、不意にプリシアが口を開く。
「それじゃあ、パーティーの始まりに、クィードに挨拶をしてもらいましょう」
「え? 僕?」
僕は驚いて周りを見回すが、皆が、うんうんと頷いてる。
これ――断れないやつだ。
僕は一つ苦笑をすると、立ちあがった。
「それじゃあ……僕らは戦いの中で出会ったけど――決してそれは本来の姿ではなくて、人と竜とは仲良く暮らしていける。そういう存在だと思ってる。そしてそんな未来のために、僕らは出会ったんだと思ってる。――今日の出会いが、よき未来につながることを祈って――乾杯!」
「「「「乾杯!!!」」」」
それから僕らは、歓談しながら食事を楽しんだ。
しばらくすると、僕の隣にいるディードが訊ねてくる。
「それで――君たちは今後、どうするつもりなのだ?」
「僕たちは光龍王を探してるんだけど、四つの龍王具が教えるところでは、光龍王は精霊島にいるようなんだ」
「精霊島か――」
ディードは難しい顔をした。
と、少し離れた場所にいるたシュートが、口を開く。
「精霊島は東の沖にあると言われているが――辿り着けた者がいない島だぞ」
「え? 存在しないんですか?」
僕はシュートに驚いて訊いた。
「いや、精霊島には精霊神の守護者である長耳族――エルフが住んでいる。そのエルフが稀に交流に現れるので、精霊島が存在するのは間違いない。しかし、この大陸と精霊島を行き来できるのは、エルフだけだと言われてるんだ」
「それじゃあ、精霊島に行けないんだぞ」
話を聞いていたライラが、鶏肉にかぶりつきながら声をあげる。
ミシュレイも難しい表情になった。
「確かに『精霊島』という確信があるのに――そこに辿り着く術がないとは……」
「いや、大陸にいるエルフを探して、道案内を頼めばいいんだよ」
僕は考えてそう言った。
「ちょっと探しきれるかどうか判らないけど――やってみようよ」
「そうですわね。今までだって、何一つ確証などありませんでしたし」
プリシアがそう言って微笑んだ。
「よければ、だが――」
その時、ディードが不意に口を開いた。
「我々が飛んで、精霊島に連れて行く――というのは、どうかな?」
僕らは一斉に、驚きの顔になった。
「いいんですか!?」
「ああ。精霊島の周囲には、二十を超える大渦が発生していて、基本的に海路で行くのは不可能だ」
「そ……そうなんですか――」
僕は驚いた。ディードはさらに話を続ける。
「しかし空からも簡単ではない。精霊島は常に厚い雲に覆われていて、その中は稲妻が発生する雲流となっている。実は全て、島を守るための魔法なのだ」
「そんなところに――あなた方なら行けるんですか?」
「我らは稲妻に対して耐性を持っている。無論、君らはそれを持ってないから、そこを抜ける間は自分で守ってもらわねばならないが」
ディードはそう言った。けどその話を聞いて、僕は不安を一つ感じた。
「そんなに警戒が厳重だってことですよね……いきなり行って、エルフの人たちと話ができるんだろうか――」
「そこは――君たち次第だろう。我らは連れて行くことはできるが、我らとてエルフ族と交流があるわけではない。そこは力にはなれぬな」
ディードは真面目な顔でそう言った。
けど、僕は即断する。
「ディード、お願いします! それでも僕らを――精霊島に運んでください」
僕は頭を下げた。
「うん。承知した。我らが責任を持って、精霊島へ連れて行こう。――君は私の背に乗るがいい」
ディードがそう言うと、ウィリアはプリシアの方を向いた。
「お姫様は、自分で変身して飛ぶかい?」
「いえ……じつはわたしは、滅竜の呪いを受けていて、竜の姿を長時間維持できないんですの」
プリシアの言葉を聴くと、ウィリアは微笑んだ。
「じゃあ、姫さまはアタシが運ぶよ」
「なら、オレはライラを乗せるか」
ダムゥがそう言って、にやりと笑ってライラを見る。
ライラはにぃ、と笑ってダムゥに返した。
「よろしくお願い! なんだぞ」
「おう、まかせとけ!」
なんか二人は意気投合したらしい。――と、ロメリが口を開く。
「それじゃあ、ウチかロメオがお姉さんってことね? どうするロメオ?」
ロメリがロメオに訊ねると、うつむいていたロメオは口を開いた。
「あの……ボク、ここに残っちゃダメかな?」
「えぇ!? 何言い出してるの、ロメオ!?」
「ボク……その…シュートさんに魔法を教わってみたいんだ――」
ロメオがためらいがちにそう言うと、ロメリが声をあげた。
「あ~! ロメオってば、レーナと一緒にいたいんでしょ! それで魔法を教わるなんて言って!」
「そ、そんなんじゃないよ! いや、それもあるけど――魔法を教わりたいのは、本当なんだ! ねえ、ディード、ダメかな?」
ロメオは少し赤くなりながら、ディードの方をそっと見た。




