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辺境の治癒士が竜姫と出会ったら ~癒しの魔法に女性たちはメロメロ!?~  作者: さとうはるか


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第三十四話  飛竜武侠衆  1 プリシアvsウィリア


 笑うプリシアを、ウィリアは睨んだ。


「正気とは思えないね……あんた、あの男に騙されてるんだよ!」

「クィードは優しくて芯が強く、まっすぐに物事に向かい合える人。龍王に相応しい存在です」

「そんな奴、信用できるか!」


 ウィリア回転して身を翻すと、槍を繰りこんで突きを出す。

 プリシアはそれを竜光槍で、くるりと巻き取った。


「あなたがどう言おうと――」


 プリシアは槍を巻きとると、そのままウィリアの懐に入っていく。

 不意に竜光槍が長さを失い――竜光剣になった。


「な――」

「――わたしの気持ちは揺るがないのです!」


 プリシアは顔をぐっとウィリアに寄せ、すぐ傍まで迫る。

 極限まで近づかれたウィリアの顔に驚きが浮かぶ。


 焦って槍を使おうとするが――逆に長すぎる槍は、懐に入られるとなすすべがない。

 しかしプリシアは腰だめに竜光剣を構えると、ウィリアの胸に突きを出した。


「受けなさい、竜光突!」

「――ぐああぁぁぁっ!」


 ウィリアが衝撃に吹っ飛ばされる。プリシアはその姿に向かって言った。


「突き刺してはいませんわ――クィードが戦いを望まない、と言いましたから」

「なんだってぇ……」


 ウィリアは立ち上がると、プリシアを睨んだ。


「このアタシが――人間の男のために、手加減を受けただと……」

「そうです。これは――クィードの慈悲」


 プリシアがそう言い放つと、ウィリアは顔を憎しみに歪めた。


「認められるか、そんなこと……」


 顔を伏せて……肩を怒りに震わせている。

 ウィリアはそこから顔を上げると、怒号をあげた。


「認めてたまるかアァァァァァッ!!」


 ウィリアの全身が光を放ち、その光が大きくなる。

 やがてウィリアは、飛竜の姿をあらわにした。


「竜は竜の誇りを持って生きるもの! 人間に媚びて堕したお前など――竜姫と認めるに値しない!」


 ウィリアの化した飛竜は、その翼で突風を起こす。

 その突風がプリシアの髪をなびかせたが、プリシアは翼の盾を展開してその突風のなかに毅然と立っていた。


「どんな逆風も――わたしの心を動かすことはできません」


 プリシアは翼の盾を背中に回し、その翼をはためかせ空中に舞い上がった。

 飛竜のウィリアが、プリシアを追うように上空へと舞い上がる。


 飛竜には腕はなく、手が翼になっている。そのためか、ウィリアは直接にプリシアに牙を向けた。


 が、自在に空中を飛ぶプリシアは、飛竜の牙攻撃をなんなくかわす。


「愚かな。あなた方は飛行能力は高いが、戦闘に関する竜能はそうでもない。だからこそ、人間態の時に竜をも倒せる武技を身に着けたのでしょう? それなのに飛竜に戻って噛みつこうとするとは……あなたの武技が泣きますよ」


 空中で制止したプリシアは、冷静な眼で飛竜を見つめた。

 対峙するウィリアの飛竜が、それに向かって怒鳴り返す。


「黙れ! お前にアタシたちの武技の何が判る!」

「判りますわ。武技は過酷な訓練を自らに課して、ようやく身に着ける技。生まれながらに炎や光熱が扱える竜の竜能とは、根本的に異なります」

「だとしたら――」


 ウィリアが言いかけたその言葉を、プリシアが遮る。


「だからこそ、です。あなた方が自らに課した訓練が相当のものだということは、戦ってみて判りました。何故、それが判るようになったか――それはわたしが、人間の師について、武技を学んだからです」


 プリシアは静かにそう言った。


「あなただって判っているでしょう? 人間の武技の奥行きの深さ――その高みを。そしてそれに追いつこうと、励んできたのでは?」

「だぁまああれえぇぇぇっっ!」


 ウィリアは怒号をあげると、猛スピードでプリシアに襲いかかった。

 翼を前に回してその牙攻撃を受けるが、空中を相当に飛ばされる。


「……あくまで、戦うつもりですか?」

「お前みたいなお嬢さんに負けてちゃ――こっちの立つ瀬がないんだよ!」

「いいでしょう――」


 プリシアは空中で、静かに目を伏せた。


「……ならばその身で受けてみなさい。光龍王である父の力と、人間の師から教わった気力の使い方を融合させた――わたしの技を」


 プリシアは竜光剣も手から消し、両手を左右に広げた。

 それを胸の前で合わせ、縦に回転させる。


「極大・竜光砲(メガ・ドラゴニック・バスター)――ッ!!」


 プリシアの掌から、最大出力の光熱線が発射された。

 その光熱線は、飛竜の身体を優に包むほどに大きい。


「バカな……こんな威力の――」


 ウィリアが驚きの眼を見張った直後、その全身が光りに包まれた。

 光の流れの中で、飛竜の影だけが空中に留まる。


 が、その光線が止んだ後、飛竜の姿はほとんど真っ黒に焼かれていた。飛竜は力なく地面へと落下していく。

 衝撃音とともに飛竜は地面へ投げ出され、その姿はボロボロになったウィリアの姿へと変わった。


「……やりすぎてしまったかも。――クィードに怒られますわ」


 空中でプリシアは、そう呟いて両手で口を覆った。



△   △   △   △   △   △   △   △



 ライラは、屈強な男、ダムゥと戦いながら、その印象を少しずつ変えていた。


(こいつ……力任せに斧を振ってくるのかと思いきや――そうじゃないんだぞ)


 黄金剣で斬りかかるも、ダムゥは巨大な戦斧(せんぷ)の平らな側面部で、その攻撃を受け切る。


(斧が盾のように使われてる。……けど、こいつは防御をすると、すかさず反撃をしてくる)


 ダムゥは戦斧でライラの剣を受けると、すかさず蹴りを出してきた。

 ライラはその蹴りをかろうじて避ける。


(斧の攻撃に頼らず、色んな方法でこっちを崩しにくる。そして向うはむしろ守りの堅いタイプ。――厄介なんだぞ)


 ライラは連続攻撃を加えるが、ダムゥは巨大な斧を巧みに動かし、その連撃を全て防御する。と、その最後の攻撃が尽きた時、ダムゥの斧が急に側面のまま迫ってきた。


「な、なんだぞ――」


 ライラの視界が遮られる。と、急にライラは、腹部に衝撃を受けた。


「うぶぅっ!!!」


 腹にダムゥの拳がめり込んでいた。思わず息が詰まる。

 が、その機を逃さず、ダムゥは戦斧を思い切り振ってきた。


「くっ!」


 ライラは鈍痛を感じる腹を抑えながら、横に転がって戦斧を逃れた。

 ライラが避けた後の地面に、戦斧が突き刺さる。


「おら、どうよ!」


 そこからダムゥは、両手で次々と斧を振り下ろす。

 ライラは横に跳びながら、それをなんとかかわした。


「あんなの受けたら――薪割りにされるんだぞ」

「すばしっこいな、小娘! 負けを認めて降参したら――オレは許してやってもいいんだぜ? オレは器の大きな男なんでな!」


 ダムゥがそう言って、口に笑みを浮かべる。

 ライラは真顔で、口を開いた。


「器の大きい男――ってなんだぞ? ご飯を沢山食べるってことか?」

「違うわ! ……いや、違わねえけど、そういう意味じゃねえだろ!」

「難しくてよく判らないけど――あんたが強い男だってのは判ってるんだぞ」


 ライラの言葉に気をよくしてか、ダムゥはにんまりと笑った。


「まあ……それが判ってるなら、問題はない!」

「けど、降参はしないんだぞ。――だって、あたしの方が強いんだぞ」

「なに!?」

 

 眼を見開くダムゥに向かって、ライラは不敵な笑みを浮かべてみせた。


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