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辺境の治癒士が竜姫と出会ったら ~癒しの魔法に女性たちはメロメロ!?~  作者: さとうはるか


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3 物別れ


 眼鏡の元竜が――僕を凝視している。僕はこの機会に、彼に言った。


「やめてください、風龍王の一族よ。飛竜の隠れ里を襲ったのは、彼らじゃありません」

「……お前は誰だ?」


 眼鏡の元竜が、僕に問うた。


「僕はクィード・ロラン。……光龍騎士の両親を持つ者です」

「光龍騎士――光龍王の眷属か……」


 眼鏡の元竜は、驚きを抑えながらもそう口を開いた。

 ――と、周囲から兵士たちの呻き声が聞こえる。負傷者がかなりいるらしい。


「すいません、ちょっと失礼します。――範囲(エリア・)治癒(ヒール)!」


 僕はその周囲に治癒の光を広げた。


「おぉ……傷が治っていく――」

「あなた方は撤退してください。――戦って勝てる相手ではありません」


 ミシュレイが隊長に、そう声をかけた。ありがたい、話が早い。

 

「く……総員、撤退! ――あとは、任せましたぞ」


 隊長がそう号令をかけて、兵士たちは撤退していく。


「おい、ここまで来て逃げんのかよ!」

「チッ……やりがいがないねぇ」


 屈強な奴と、美女が面白くなさそうにこぼす。

 そこにプリシアが歩み出た。


「皆さま――わたしは光龍王レイミアードの娘、プリシアです」


 そう言うと、プリシアは抑えていた竜気を解放した。

 と、屈強な男と美女が驚きの顔を浮かべる。


「まさか……光龍の姫君?」

「わぁ、お姫様だあ!」


 美女が驚きの声を洩らすと、少女の元竜が声を無邪気なあげた。

 と、眼鏡の元竜が、少し礼をした後に口を開く。


「これは失礼した……私は風龍王が嫡子、ディードです」

「風龍王の――息子」


 つまり、次期龍王……か。

 ディードは顔を上げると、プリシアを凝視した。


 ――その眼には、親和性はない。むしろ冷たい光を帯びている。


「それで――どのような理由で、プリシア様は人間をお庇いなさるのですか? それに……どうやらお連れの者は、人間どものよう。どのようなおつもりか、お聞かせ願いたい」


 口調は丁寧だが――厳然とした意志。

 ディードは、物凄く堅固な人物と見た。


「お父様……いえ、我が父、光龍王レイミアードが襲撃を受けて行方不明になっています。その行方をともに探してくれているのが、この光龍騎士の子息たちです。この人たちは――わたしの仲間です」

「仲間――」


 ディードは嫌悪を露わにするように、眉根を寄せた。

 と、屈強な男が、声をあげる。


「人間を仲間にしてるなんて、信用できねえぜ! 俺は、そいつらが竜族を裏切った張本人だと思うぜ!」

「そんなバカな!」


 僕は抗議の声をあげた。

 しかしディードは、眼鏡の奥からこちらを見ている。


「なるほど……ダムゥの言うことにも一理ある」

「アタシもそう思うねぇ。竜の隠れ里は、竜しか知らない――。つまり竜の中に裏切り者がいるはずなんだ。人間と親しい光竜たちが、竜族の支配を目論んだ……なんて筋書きじゃないのかい?」


 美女が鋭い目つきで、僕らを見つめる。

 プリシアが声をあげた。


「違います! わたしたちの里も、人間の兵士に襲われて――」

「じゃあ、なんだって人間と一緒にいるのさ!」


 美女が一喝し、プリシアの言葉が遮られる。

 緑の髪を長く伸ばした美女は、プリシアを睨んだ。


「こいつが光龍王の姫だなんて話も――信用していいかどうか、判らないよ」

「なるほど……確かにウィリアの言う通りかもしれぬな」


 ディードが、ぼそりと呟いた。

 と、いきなりライラが声をあげる。


「さっきから聴いてりゃなんなんだぞ! プリシアが誠心誠意込めて話してるのに、まったく聞く耳を持ってないんだぞ! こんな奴らと話すだけ無駄なんだぞ」


 ライラが憤っている。気持ちは判るが――今は、マズい!


「おうおう、小娘。話しても無駄だってとこだけは、意見が一致したな。人間にも話の判る奴がいたぜ」


 そう言って、屈強な男――ダムゥがにやりと笑う。

 それに続けて、美女――ウィリアが口を開く。


「同感だ。アタシはその姫様ヅラしてる奴を叩きのめして、正体を吐かせる方がいいと思うね」

「待ってくれ! 僕たちは戦うつもりはない!」


 僕がそう叫ぶと、ディードが冷たい視線ともに僕に言葉を返した。


「その言葉――殺された隠れ里の我が同胞も、言ったであろう。しかし、それを無視して仲間を殺したのは……お前たち人間の方だ」


 僕は――言葉を失った。

 言い返すことができない。たとえ滅竜攻団のやったことだとしても――それが人間の側の一方的な殺戮であることに変わりはない。


 仲間を殺されて、彼らが復讐心を持つのは当然だ……


「あそこには、アタシの親類も友人もいた……それが全員殺されたんだ。アタシは必ず仇をとる――あんたたちは竜のスパイだろ!? アタシが正体を暴いてやるよ!」


 ウィリアがそう言うなり、プリシアに向かって槍を突き出した。


「『翼の盾』!」


 プリシアが翼の盾を展開して、その槍を防ぐ。

 ディードが眼鏡の奥の眼を見開いた。


「その気配――まさか龍王具?」

「そうですわ! これはお父様から人間へ送られた絆の証。竜と人間との、友情の証ですわ!」


 プリシアの声に合わせて、僕らはそれぞれ持つ龍王具を展開した。

 ライラが爪の剣を出し、ミシュレイが角の冠を着ける。そして僕は牙の鎧を身に着けた。


「龍王具だがなんだか知らないけど――アタシの槍の前に立ったことを後悔しな!」


 ウィリアは翼の盾をめった刺しにするが、翼の盾はビクともしない。

 しかしプリシアが憤りの声をあげた。


「この判らず屋! それならば――光龍王の力を思い知りなさい!」


 プリシアが翼の盾を背中に回し翼に変える。プリシアは空中へ舞い上がった。


「槍の勝負がお好きなようですね! ――竜光槍!」


 プリシアは手の中に光の槍を創り出す。そして空中からウィリアに向かって槍の攻撃をし始めた。


「おっ! どうやらやる気になったみてぇじゃねえか! オレはその黄金の剣が気になるぜ。そんな見た目ピカピカの剣が、本当に斬れるのかい?」

「だったら……試してみるんだぞ!」


 ライラが黄金剣を持ってダムゥに突っ込む。

 ダムゥの持つ戦斧と黄金剣がぶつかり合い、火花を散らした。


「いいねえ! 面白ぇ! ちったぁ、やるじゃなねえか、小娘」

「また小娘呼ばわりだぞ。小娘じゃなくて、ライラだぞ!」


 ライラとダムゥが、そこで戦闘を始めた。


「くっ――なんてことだ。僕たちは戦ってる場合じゃないのに」

「私は君に興味があるな、少年。――クィード・ロラン、と名乗ったか?」


 ディードが僕へ眼を向ける。


「そうだ。僕らは戦うつもりはない、と言ってるのに!」

「君以外はそうでもなさそうだぞ? しかし……私の見たところ、君が一番の獲物だ」


 ディードはそう言うと、両手を前に出した。その手の中に、長い棒が現れる。


 ヒュンヒュンと風を切りながら棒を振り回すと、ディードが最後は棒を脇に挟んでピタリ、と構えをとった。


「我々、飛竜は、人間態の時は武技を磨く。それは人間の武技に勝るとも劣らないと自負している。――我ら五人は、その飛竜の中でも特に武技に優れた者の集まり――飛竜武侠衆だ」


 ディードは眼鏡の中から、鋭い眼差しを僕に向けた。


「さあ、君の力を見せてもらおうか」


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