第三十二話 新たな龍王具 1 決着、対レディアス戦
プリシアの呼びかけに、ミシュレイとライラは頷く。
ミシュレイは魔力、ライラは気力を高めてそれぞれの龍王具に力を込めた。
ミシュレイの角の冠、ライラの爪の剣が黄金の輝きを増す。
プリシアは翼の盾を前に出し、光り輝かせる。
「牙の鎧、判るでしょう? あなたの仲間はこっちよ!」
そう、プリシアが呼び掛けた時だった。
レディアスが、慄いたように後退する。
「なにっ!?」
突然、牙の鎧が光り出した。明らかに共鳴している。
レディアスが顔色を変えて声をあげた。
「やめろ、牙の鎧! 奴らになど呼応するな! お前の主人は私だ!」
「レディアス――龍王具を返してもらうぞ」
僕はレディアスを見つめ、声をあげた。
プリシアが、僕に呼びかける。
「クィード、お願いします!」
「判った、プリシア。――牙の鎧よ、僕の元へ来い!」
僕は手を向けて、僕の中にある竜核から竜気を最大発揮した。
僕の身体が黄金に光る。
三つの龍王具と、僕の全身の黄金の光に――牙の鎧が呼応した。
いきなり牙の鎧が姿を消し、指輪の状態になる。
「な――なにぃぃぃ!」
レディアスが声をあげるが、その動きは止まらない。
黄金の指輪はレディアスの指を離れると――僕の人差し指にスポンと嵌まった。
「牙の鎧……僕に応えてくれて、ありがとう」
僕は人差し指にはまった指輪を見て、微笑みとともに挨拶をした。
そしてその手を掲げる。
「行こう、牙の鎧! 装着せよ!」
僕の声に呼応して、指輪が光り、僕の身体を包む。
すると僕の身体は――牙の鎧をまとっていた。
「……これが――母さんの龍王具――」
僕はその鎧に触れた。
金属なのに――何か暖かな質感がある気がする。
牙の鎧は、レディアスが装着していたものから、少し様相が変わっていた。
多分、装着者の個性に合わせるんだろう。
「ぐ……きっさまぁ――」
レディアスが憎悪に満ちた目を僕に向ける。
僕はその眼を睨み返した。
「勝負だ――レディアス・カミュ」
僕は動くと、少し離れた場所に立つ。
「プリシア、僕に竜光砲を!」
「判りましたわ! ――竜光砲!」
極大の熱光線が僕に向かって飛んでくる。
僕は牙の鎧を展開した。
「牙の鎧、吸収だ!」
胸の牙が上下に開き、牙の鎧は竜光砲を吸収した。
どくん、とそれが僕の気力に変わっていく。
「うん……いい感じだ。行くぞ、レディアス!」
「舐めるな、このヒヨっこがっ!」
突進する僕に向かって、レディアスも突進してくる。
僕は内燃気渦を全開にして、拳を繰り出した。
対するレディアスも、拳を打ちこんでくる。
リーチに勝るレディアスの拳が、先に僕の胸に当たる。
が、牙の鎧がその威力を呑みこんでいる。
僕はレディアスの胸に、拳を打ちこんだ。
「砕花崩閃破ッ!」
極大の気力と極大の竜気を込めて、僕はレディアスの胸を打ち抜く。
僕の縦拳が当たった瞬間――レディアスの身体が凄まじい勢いで、吹っ飛んでいった。
レディアスの身体が、相当に飛ばされた後で、その勢いのまま何回転もする。
そしてその動きが止まった後――もう、レディアスは動かなくなった。
「終わった――」
僕は息をついた。と、我に返る。
「ジャック先生!」
僕は倒れているジャック・ドゥルーズの元に駆けよった。
「ジャック先生! 足が――」
「うむ……」
ジャックは青ざめた顔で、ただ頷く。
僕は少し離れた場所に落ちていたジャックの膝下を拾うと、それをジャックの足に戻そうとした。
「この状態で、治癒をかければ――」
そう言いかけると、ジャックが首を振る。
僕は改めて手にした膝下を見た。その切り口から――紫の病変が見える。
「これは……先生?」
「瘴毒症じゃ。膝から下は病変で、むしろいずれ斬らねば全身に瘴気毒がまわるところじゃった。ちょうどいい――このまま治してくれ」
「判りました――」
僕は膝から下が無くなった左足に、そのまま治癒魔法をかけた。
斬られた膝下が――そのまま治っていく。
「先生、もう脚は回復できませんが……」
「仕方あるまい。――しかし、最後の一撃は見事じゃった」
ジャックがそう言うのを聴いて、僕は思わず微笑んだ。
と、その僕に、ミシュレイの声が飛んでくる。
「クィード、ライラが!」
「――行ってやれ、クィード」
「はい、先生」
ジャックの治癒を終えた僕は、ミシュレイの元に駆け寄る。
ミシュレイが倒れたライラを支えていた。
「倒れたんだ――どうも、内部をやられたらしい」
「……ドグランダーに…腹パンもらったんだぞ……」
ライラはそう言うと、へへへ、と笑った。と、その口から血を吐き出す。
「まずい、内臓が破裂してるのかもしれない。治癒!」
「う……こんな死にそうな時でも――クィードの治癒が気持ちよすぎるんだぞ……」
ライラはそう言うと、うっすらと笑った。
が、そう言ったきり、眼を閉じて気を失う。なんてことだ。
ライラは重傷だったのに、駆け付けて龍王具の奪還を手伝ってくれたんだ。
やがてライラの荒い息が、静かなものへと変わる。
どうやら、一命はとりとめたようだった。
「よかった、これでもう大丈夫」
「うん。どうも、ライラとの戦いでドグランダーは死亡したらしい。ボクと戦ったラムーも……もう絶命してる」
「そう……か」
激戦だったんだな、と理解した。
「二人が無事でよかった……。今は何より、それがよかったよ」
「ライラはボクが見てるから大丈夫だ。他の連中をどうするかは――クィードに任す」
ミシュレイは、僕にそう眼を向けた。
僕は頷くと、立ち上がって全身の魔力を上げた。
「範囲治癒!」
これでディランやアイナがまだ生きてれば、治癒されるはずだ。
――そしてレディアスも。
僕は倒れているレディアスの元に歩み寄った。
意識を取り戻したレディアスが、僕を睨む。
「治癒したのか……愚かな。なんのつもりだ?」
「判ってます、レディアス・カミュ――生き残った二人の滅竜士を連れて、ここから立ち去ってください」
僕はレディアスを見つめた。レディアスも……僕を見つめている。
「後悔することになるぞ……」
レディアスはそう口を開くと、まだダメージの残る身体を起こした。
アイナを背負ったディランとともに、レディアスは去っていった。




