2 ライラvsドグランダー
黄金剣を手から弾き飛ばされ、レイラは思わず声をあげた。
その声を聴いて、ドグランダーは凶悪な笑みを浮かべる。
「お終いだな、小娘よ!」
ドグランダーの右手の剣が振りかかって来る。ライラはとっさに、腰に差していた木製の小刀を出してその剣を弾いた。
「往生際が悪いわ!」
右の背中から伸びた腕のが持つ剣が、襲い掛かってくる。
ライラは左に回り込んだ。
(あたしを追って、右に移動してくる――)
右背中の剣は、ライラを追って右に振って来る。
ライラはその横ぶりの剣を、小刀で上に弾いた。
(ここなら奴の左側の剣はまだ届かない)
見ると、弾き飛ばされた黄金剣は、まだ空中を舞っている。
(向かって来い!)
黄金剣が回転力を増しながら、急に軌道を変えてライラの方に向かって来る。
しかしドグランダーからは背中、黄金剣が空中で軌道を変えたのは見ていない。
「あがくか、小娘!」
ドグランダーの左手の剣が、がら空きになったライラの胴を狙った。
ライラは敢えて踏み込む。
「なにっ!」
ドグランダーの剣の手元近くが、ライラの胴に当たる。そこでは切れない。
敢えて間合いを潰して、ドグランダーの剣の斬り間を避けたのだった。
「ヤアァァッッ!」
木製の小刀に気力を乗せると、至近距離になったドグランダーにライラは小刀を突き出した。
ドグランダーは後退して間合いを切ろうとする。その瞬間だった。
「な……ぬぃぃぃっ!」
左背中の剣を持つ手が、手首から切り飛ばされていた。
仮現質で作った手は、腕から離れ、その持っている剣が宙を舞う。
手首を切り飛ばした黄金剣は、回転しながらライラの手中に戻ってきた。
「なんだと……その剣、空中にあって操れるのか?」
「そうなんだぞ」
ライラは息をついた。不意打ちで、四本の剣を、三本にできた。
ドグランダーは、にやりと笑う。
「面白いのう、小娘! まだまだ奥の手があるとは――しかし、そんな飛び道具、ネタが割れてしまえば二度とは喰らわんぞ!」
ドグランダーはそう叫ぶと、再び攻撃してくる。
今までもそうだったが、ドグランダーは四本の剣を波状に攻撃してきて、一本四本目の剣を防いだ時には、一本目の剣が体勢を立て直して再び攻撃してくる。
その切れ目のない終わりなき攻撃で、ライラは防戦一方になっていたのだった。
(けど、これで三本になった。少しは隙ができるはずだぞ)
ライラは剣を構える――が、三本になってもドグランダーの波状攻撃地獄は継ぎ目がない。
「どうした、どうした! 一本少なくなったんだぞ、反撃をしてみせんか!」
そう言いながらも、ドグランダーはまったく反撃の余地など与えない攻撃をちし続けている。
「く……」
ライラは防御しながら歯噛みをした。
が、ふと先ほどのやりとりの事を思い浮かべた。
(剣で防御するから、相手もまだ剣の間合いにいて攻撃ができるんだぞ。さっきは一瞬、小刀の間合いになった)
ライラはドグランダーを睨む。
(巨漢の持つ長剣――近間に入れば、逆に攻撃しにくいはずだぞ)
ライラは黄金剣で、左から振ってきたドグランダーの剣を受け止める。
と、同時に手元まで引きつけ、その刃筋に沿って黄金剣を移動させた。
「黄金剣――小刀化!」
「なにっ!?」
黄金剣がいきなり短くなり、ドグランダーの顔に驚きが浮かぶ。
間合いを至近距離まで詰めたライラは、小刀になった黄金剣をドグランダーへと突き出そうとした。
「至近距離の間合いの対応ができんとでも思ったか!」
右の背中の腕が、手首を柔らかく使いライラを剣で突き刺そうとしている。
しかしその腕が使えることは、予想済みだった。
ライラはドグランダーの右腕を左手で抑えると、小刀を持った右手を開いた。
と、小刀はライラを狙って来る右背中の腕へと飛んでいく。
ライラに剣が到達する前に、黄金小刀が右背中の手首を切り飛ばした。
「なにぃぃぃ!」
驚くドグランダーに、ライラは懐に直していた木製の小刀を取り出し逆手でドグランダーの胸に刺す。
「ヤァァァッッ!!」
「グォホッ!」
気力で白く光る木製の小刀は、ドグランダーの着ている鎧を貫き、ドグランダーの胸に刺さった。
「小娘ぇっっ!」
ドグランダーは剣を持つ右手で、ライラの腹部にパンチを撃ち込んだ。
凄まじい衝撃がライラの腹部を襲い、ライラは思わず呻く。
「ぐあぁっっっ!!!」
吹っ飛ばされる。あまりの衝撃と苦痛に意識を失いそうになるが、ライラは掌を掲げて黄金剣を空中から呼び戻した。
「う……ぐぇ……」
腹部の衝撃が大きすぎて、気持ち悪くて吐きそうになる。
が、それをライラは堪えた。
「く……小刀にもなるだと――。しかし小娘、敢えて近間を選んだその胆力は褒めてやろう。しかし――」
斬り飛ばした背中の腕の手が復活する。
「この手は魔力で創り出した手。復活が可能なのだ!」
そう言うとドグランダーは、墜ちた剣を拾うために右へ走った。
(剣を持たせるな!)
気持ち悪さで遠のきそうな意識を振り絞って、ライラはその剣に向かったドグランダーに襲いかかる。
「黄金剣、長剣!」
黄金剣の長さを戻し、ライラは真っすぐに黄金剣を振った。
「鋭気斬貫波!」
まっすぐに振った黄金剣から、気力のカーテンが鋭く走る。
その黄金のカーテンがドグランダーに襲いかかり、剣を拾い上げる前にドグランダーは踏みとどまった。
と、次の瞬間にはライラが踏み込んできている。
ドグランダーは自分の二本の腕と剣で、防御しようとした。
「行くぞ! 重気爆砕破!」
ライラの渾身の一撃が、ドグランダーに襲いかかる。
その黄金剣に乗った気力量を感じて、ドグランダーは両手の剣を十字にして黄金剣を受け止めた。
「オオオオォォォ―――」
ドグランダーが気力を高めて、黄金剣を弾き返そうとする。
しかしライラは、さらに気力を上げて黄金剣を押し込んだ。
「イヤアアァァァッッ!」
ライラの身体が、オレンジ色にスパークした。
その眩い光とともに、黄金剣が十字剣を斬り割る。
「ぐあぁ―――」
「ダァァッ!」
気合とともに、ライラは黄金剣を振り切った。
ドグランダーの身体に、黄金の線が左肩から腰まで走る。
と、ともにドグランダーの身体が、後方へと倒れていった。
「ハァハァハァ……」
ライラは息をついて、倒れたドグランダーを見た。
完全に身体を斬り割られたドグランダーは、地面に大の字になっている。
「あたしの……勝ちなんだぞ――」




