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辺境の治癒士が竜姫と出会ったら ~癒しの魔法に女性たちはメロメロ!?~  作者: さとうはるか


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3 『砕鬼』レディアス


 僕はレディアスに、突きを放った。

 レディアスは薄く笑いながら、それをなんなくかわす。


 無論、それは予想済みの範囲だ。僕はかわされたところから、身を翻して後ろ回し蹴りを放った。


「旋風脚!」

「おっと!」


 しかしレディアスはそれもかわす。しかしそのかわした先に一条の光線が煌めいた。


「むっ!」


 レディアスは腕に気力をためて、その光線を防御する。

 その光線は、プリシアの竜閃光だった。


「竜の姫君か――手癖が悪いようだな!」


 レディアスは掌をプリシアに向けると、気光弾を連続で放つ。

 しかしプリシアも光の剣を創り出して、その光弾を斬り伏せた。

 レディアスが少し驚きの顔をみせる。


「器用な真似をするじゃないか、竜の分際で」

「あなたに侮られるいわれはありません!」


 プリシアが強い目つきでレディアスを睨むと、さらにその光の剣を大きくした。


「竜光剣――破断型!」


 身長の二倍はあろうかという光の剣を、プリシアが急進しながらレディアスに斬りかかる。

 レディアスはそれを後退してかわすが、その動きを予測していた僕はその背後に回り込んでいだ。


「渦打!」

「ムンッ!」


 僕の繰り出した突きを、レディアスが受ける。

 しかし脚を止めたレディアスに、プリシアの光大剣が襲い掛かった。


「剛光掌!」


 しかしレディアスは、片手の掌で竜大剣を受け止める。

 プリシアが押し込む光熱力を、ものともしていない。


「くっ……焼き切れないなんて――」

「私の気流剛術を――甘くみないことですね」


 フッ、とレディアスの姿が消えた。

 プリシアの懐に入りこんでいる――僕はそれを追って突きを放つ。


 しかしその突きは突如、身を翻したレディアスの後ろ回し蹴りによって防がれた。レディアスはそのまま回転して蹴り足を着地させると、逆脚で回し蹴りをプリシアに放つ。


 レディアスの脚がプリシアの頭部を捉える――かに見えた瞬間、レディアスの身体が吹っ飛ばされた。


「――ふっ……また邪魔ですか、先生」


 吹っ飛ばされた先で、レディアスは踏みとどまって笑っている。

 ジャックに掌打を入れて吹っ飛ばしたのは、ジャックだった。


「前に私とレフィーナの立ち合いの時も、そうやって邪魔しましたね――。私が勝っていたというのに」

「お前がレフィーナを殺すつもりだったからじゃ。お前は殺気でのみ戦う男じゃった」

「だって、姉弟子が『本気で来なさい』って言ったんですよ? ……敬意を払って本気でかかっただけですよ」


 レディアスはそう言って、軽くわらってみせる。

 ――僕は動揺した。


 母さんがレディアスと立ち合って……負けそうだった、ということか?

 剛術のレディアスと柔術の母さんの立ち合いは――剛術に軍配が上がったということ?


 ――だが、だとしたら判らないことがある。


「待ってください! レディアス・カミュ、あなたは母さんと一緒に、『本当の敵』との戦いに赴いたんじゃないんですか?」


 僕の言葉を聴いて、レディアスは笑った。


「ああ、行ったよ。――姉弟子を片付けるためにね」


 どくん、と心臓の音が聞こえた。

 この男は――母さんを殺したのか?


「私が加勢に行ったと勘違いしたみたいだが……そうじゃないんだな。私はある物が欲しかった。そして、君たちもそれを求めて私に会おうとしたんだろう?」


 この男は――まさか。


「いいだろう、見せてあげよう。私が姉弟子から奪った龍王具を」


 レディアスは微笑すると、左手を掲げてみせる。その人差し指に――金色の指輪がついている。


「さあ、見たまえ――これが『牙の鎧(ファング・アーマー)』だ!」


 金色の指輪が光ったと思うと、その光がレディアスの身体に移る。

 そしてその光が止んだ時――レディアスの身体は金色の鎧をまとっていた。


 胸に牙のレリーフがある。あれが……龍王の牙。

 そして感じた。レディアスの気力が、ぐんと跳ね上がったことを。


「お前は……母さんから、その鎧を奪ったのか!」


 僕は怒号をあげた。それに対し、レディアスは薄笑いで答える。


「そうだよ。レフィーナに戦いに参加するように誘われて――それを承諾したように見せかけて、私は不意を突いてレフィーナを襲ったのだ」

「……なんだ――って……」


 僕の全身に――怒りが満ちてきた。


「私は最初に大きな一撃を与え、その後の戦いに勝利した。そのおかげでレフィーナは『本当の敵』とかの戦いに、龍王具抜きで行ったのさ」


 レディアスは面白いことを話す口ぶりで、僕にそう語る。

 だが僕は――震えるほどに怒りがこみ上げるばかりだった。


「結果――姉弟子は戦いで帰らぬ人となった……。まあ、龍王具がないだけでやられてしまような実力でしかなかった――というだけの話だがね。君の母親なんて、それだけの存在だよ」


 そう薄笑いを浮かべるレディアスに対し、僕は憤りがもう抑えきれなかった。


「許さんっ! レディアス・カミュ!」


 僕は内燃気渦を爆発させ、レディアスに襲いかかった。

 ……しかし頭は冷静だ。普通に攻撃を仕掛けても、レディアスは必ずかわし、反撃してくる。


「砕花崩閃破!」


 鳩尾に突きを出す。

だが、その突きをレディアスが気流掌で受け止めた。これは予想済みだ。


 その腕を軽く押さえ『封じ手』を打つ。強く抑えるのではない。触れただけで、人間というのは動きが制限される。

 そこからさらに、突きを打った手を引いてもう一度突きを出す。


「砕花崩閃破・連!」


 もう一つの突きの防御に、レディアスは間に合わない。

 僕の突きがレディアスに当たる。


「ムンッ――」


 僕の突きがレディアスの身体に当たった――と思った瞬間。

 その威力は、『牙の鎧』に跳ね返された!


「な……なんだ!?」

「剛術に柔術の把気を加えた妙手――けど、残念だったね」


 そう言った瞬間、レディアスの掌打が僕の身体を襲う。

 ダメだ、防ぎきれない。僕は胸に衝撃を受けた。


「グアアァッ――」


 僕の身体が凄まじい衝撃とともに吹っ飛ばされる。

 プリシアの悲鳴が聞こえた。


「クィード! ――許しません! 極大竜光砲(メガ・ドラゴニック・バスター)!」


 両手を胸の前で合わせたプリシアが、凄まじい大きさの熱光線を発射する。

 この威力――山を削りとってもおかしくない威力だ。


「ほう……さすが、竜姫さま。凄まじい力をお持ちですね」


 しかしレディアスは動じた様子はない。どころか――その極大熱光線に向かって両腕を開いた。


 胸の『牙の鎧』から、牙のレリーフが飛び出してくる。

 その上下の牙の間に呑みこまれるように、極大竜光砲が吸い込まれていった。


「バ…バカな……」


 地面に転がった僕は、血を吐きながらその信じがたい光景を見た。


「どうです、素晴らしいでしょう? この『牙の鎧』は、エネルギー系の攻撃を吸収する力があるのですよ。そしてね――それを自分の気力として活用できるのです!」


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