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辺境の治癒士が竜姫と出会ったら ~癒しの魔法に女性たちはメロメロ!?~  作者: さとうはるか


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3 修行の成果


 上がったジャックの左手を見て、僕はここが勝負時と見た。

 敢えて左腕で防ぎやすい箇所に打撃を打ちこむ。


 これは防がれた、のではなく防御を誘ったのだ。狙いは上がった左腕の下!


「砕花崩閃破!」


 左の脇腹に拳を打ちこむ。当たった!

 いや――当てられた!?


「まさか……腹で拳を――殴った?」


 硬化してる腹が、僕の拳を砕きにかかる。


「ぐぅっ――」


 手首が折れそうになり、僕は拳を引く。

 離脱――いや、ここで引いちゃダメだ!


「爆進脚!」


 踵から気流渦を突進力に変え、ジャックの膝横を蹴る。

 ジャックが足を上げ、蹴りを足の骨の厚い箇所で受けた。


「オオオオォォッッ!!」


 受けられたところから、僕はさらに気力を爆発させ、蹴り足を押し込んだ。


「ムッ!」


 ジャックが後方へ跳ぶ。僕は蹴り足をそのまま前にさらに踏み込んで、追撃をする。


「砕花崩閃破!」


 渾身の一撃を放った。それをジャックが、両手を合わせた気流渦で受ける。

 ジャックの気流旋と、僕の気流旋は逆方向に廻っている。


「ウオォォォッ――反転!」


 僕は気流渦の周りを、竜気を使って逆転させる。と、抵抗が抜けて、そのまま前に僕は踏み込んだ。

 ジャックの腕の上をすり抜けて、僕の拳が当たる。


「ダアアアァッ!」


 そのまま竜気を含んだ気流渦が、ジャックの胸に撃ち込まれた。


「むぅ……」


 僅かに後退したジャックが唸る。

 と、その口の端から血が洩れた。


「――大丈夫ですか、先生!」


 僕は気力を解いて、先生に駆け寄った。


「うむ……大事ないわ。しかし気流渦の向きを逆転させるとはの――そんな事ができようとは思わなんだわ」

「なんだか、竜気を使うとできそうな気がして――無我夢中でした」


 ジャックは血を垂らした口ににやりと笑みを浮かべると言った。


「それこそ、お前にしか出来ぬ戦い方じゃ。短い期間で、よくここまで剛術を習得したな」

「先生、ありがとうございます!」


 僕はジャックに頭を下げた。

 と、僕の目の前の先生の身体がぐらりと揺らぐ。


「先生!」


 僕は慌てて顔を上げて、ジャックの身体を受け止めた。


「先生、ダメージですか!? 今、治癒します!」

「うむ、そうしてくれ。しかし……実はよろけたのは、もっと根本的な問題じゃ。お前の攻撃のせいではない」


 ジャックは地面に座ると、治癒を受けながら僕に言った。


「実は左足が、もうきかなくての」

「え? けど、先生はさっき完全に動いてましたが――」

「短時間なら、内燃気渦で動かすことができるが、長時間歩くのはしんどいのじゃ。お前と戦うために、儂も気力を使い過ぎた。脚にきたわい」


 ジャックはそう言うと、軽く笑ってみせた。

 そうだったのか……今まで、稽古をつけてくれた時、そんなそぶりは全くなく、気付くことすらできなかった。


「さて、娘どもはどうかのう」


 ジャックはそう呟いて、プリシアたちの練習してる場へと向かった。僕も後についていく。

 そこではプリシアとミシュレイ、ライラによる三つ巴戦が行われていた。


「――ヤアッッ!」


 プリシアが気合とともに、大刀を振る。

 ライラはそれをかわすと、すぐさま踏み込んで短刀を突き出した。


「竜光壁!」


 丸い光の壁が現れ、短刀を防ぐ。ライラはそこから、素早い連続攻撃に出た。


「ダダダダァッ!」


 しかしその素早く多元な攻撃の前に、丸い光の壁がピンポイントで現れては防ぐ。プリシアは眼を光らせるだけで、その竜光壁を作っているのだった。


 と、少し離れたところからミシュレイが声をあげる。


「水竜突閃破!」


 三匹の水竜が、プリシアとライラに襲いかかる。

 あの技を二人にぶつける気なのか、ミシュレイ!?


 驚く僕をよそに、プリシアは大刀で円を描いた。


「竜光円!」


 光の円は三匹の水竜が激突して、なおもそれを防いでる。

 と、脇からライラが飛び出して、ミシュレイに向かった。


「ヤアアァッ!」


 向かって来るライラに、ミシュレイは手にした杖を突き出した。

 ライラが僅かな見切りでそれをかわすと、頬の横を杖がすり抜ける。


 と、ライラは短刀を突き出す。ミシュレイは突き出した杖の手の内を変えるだけで、杖の角度を変化させ、短刀の攻撃を防ぐ。


 さらに短刀を突き出すライラに対し、ミシュレイは横に廻りこみながら杖でライラの手を押さえる。攻撃のいなし方が上手い。


が、感心してる間もなく、残されたプリシアが声をあげた。


「竜光砲(ドラゴニック・バスター)!」


 竜光円から巨大な光線が発射された。

 この威力のものを――本気で撃つのか、プリシア!


「ム!」


 ミシュレイが光線に気付いて、足元からジェット気流を出して離脱する。

 けどライラは向かって来る光線を睨みつけた。


「ハアアァァァ……ハアァッ!」


 ライラは向かってくる光線に、短刀を一直線に斬り下ろした。

 短刀が光線を斬り割り、ライラの身体の直撃を免れる。


 気力を乗せることで、短刀でも凄まじい威力の攻撃を出せているのだ。

 僕は三人の実力アップに、少なからず驚いた。


「よし! そこまでじゃ!」


 ジャックの声に、三人は戦いを中断した。

 ライラがこちらに向かいながら、プリシアに言う。


「プリシアの最後の攻撃、シャレになんないんだぞ」

「それでも防いでたじゃありませんか。ミシュレイはなんなくかわしましたし」


 プリシアが笑いながらそう言うと、ミシュレイが声を上げた。


「ジェット移動のコツを掴んだからね。けど、ライラの攻撃が読みづらくて、かわしにくくなった」

「そんな事言っても、一発も当たってないんだぞ」


 ライラは不服そうだ。そんなことを言いながら、三人はジャックの下にやってきた。


「三人とも、己の戦い方の見直しができたようじゃな」

「うん! もっと強くなりたいんだぞ」


 ライラがそう声をあげて、ジャックは微笑んだ。


「攻撃の単純さは減り、攻撃が多元で多彩になった。お前さんは、もう少し相手を読むことを研究するがいい。短い武器んいなることで、かなり相手の攻撃を読むようにはなったが、まだ機を読んでおらん」

「機ってなんだぞ?」


 ライラの問いに、ジャックは眼を向けた。


「機とは即ち、気。攻撃をしようとする相手の起こりの気を瞬間を捉えるのじゃ。人は攻撃する時が一番無防備な時。そこを――」


 話している最中のジャックが不意に黙り――周囲の気配を伺った。


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