第二十六話 新・攻魔四元将 1 新生・ギルガイン
水流の攻撃を耐えきった『氷華鬼』アイナは、氷の鎧を身にまとっていた。
その氷の鎧の兜には、一本の氷の角がそびえている。
「アイス・ドレス――どう、素敵でしょ?」
「……アイス・アーマーの間違いだろ」
ミシュレイは眉根を寄せて呟く。
と、アイナは微笑すると、その手に持つ扇子が氷の剣へと変貌した。
「美意識の違いね!」
「――気が合わないな!」
その氷の剣をミシュレイが薙刀で受け、二人は至近距離で睨みあった。
二人が戦闘を始めたことで、攻魔四元将が動き出す。
「クィード・ロラン! 先日のリベンジをさせてもらうぞ!」
旋風とともに、『風雅の』ディランが急接近してくる。
その風の前に飛び出した影がある。ライラだ。
「クィードの前に……あたしと戦うんだぞ!」
ライラが黄金剣を出して、いつの間にか抜き放たれていたデイランの刀を受け止めていた。
「君は……剣士ですか。面白い、君は私の相手をしてもらいましょう」
一層の突風が巻き起こり、ディランが一度間合いを切る。
「片刃で反りのある剣――妙な武器だぞ」
「刀、ですよ。この切れ味を味わってもらいましょう」
ディランはヒュンヒュンと、空で刀を翻す。
と、その振りと同時に、見えない風の刃が襲って来た。
ライラは黄金の『爪の剣』を翻し、風の刃を断ち切る。
「しかも魔法と剣技の使い手――なかなかだぞ」
「君もね。そしてその剣……相当の剣と見ました。君を倒した暁には、勝利の証にいただきましょう」
「寝言は寝てから言うんだぞ!」
ライラが撃侵する。凄まじい速さの攻撃だったが、ディランはそれをなんなくかわす。
さらに追撃で剣を振る――が、それもディランの目の前を通り過ぎる。
ライラの切り付けに対し、風をまとったディランは、瞬時にその場を移動しながら、ライラの攻撃を受け流していた。
攻撃疲れをしたライラが、足を止めて息をする。
「この受流される感じ――何処かで……」
「フフ……この風流渦による防御はね、君らの仲間、クィード・ロランにやられた後に、彼の技を私の風魔法でアレンジして生み出した技だ! 本来これは、クィード・ロランを倒すための技だったのだがね」
ディランは笑みを浮かべてそう告げる。ライラは納得した顔をした。
「そうか、道理で……だぞ。クィードにやられて、技が届かなかった、あの時の感じだぞ……」
「フフ、君もクィード・ロランと戦ったのか。あの柔術という技を、私は刀技に取り込んだのだ。次は君は、私に負ける番だ!」
そう言うとディランは、背中で突然、竜巻を起こした。
その爆発的な風圧で、一気にディランが攻めよって来る。
「覚悟しなさい!」
ディランは、ライラに向かって刀を突き出した。
その様子に、プリシアが危機感をあらわす。
「ライラ!」
「よそ見してる場合かよ――竜!」
怒鳴り声をあげて、『爆炎の』バルガスがプリシアに殴りかかる。
「竜光剣!」
プリシアの手の中に光剣が生まれ、バルガスの拳を受け止める。
その瞬間、凄まじい爆発を起こした。
「くぅっ!」
その爆発に、プリシアが吹っ飛ばされる。
僕は思わず叫んだ。
「プリシア!」
「女の心配をしてる場合か、クィード・ロラン!」
『鋼鉄の』ギルガインの声がして、鋼鉄の礫が大量に僕に飛来して来た。
「くっ、大旋気!」
気流渦を作って、礫を受け流す。その間に、ギルガインがノコギリ剣をふりかざして襲い掛かってきた。
「死ね! クィード!」
斬りかかってきた剣線を読んで、僕は僅かの見切りでかわす。
と、同時に、その攻撃の手を掴んで、ギルガインを投げる――
――つもりが、投げられない!?
「ハッ! いつまでもいいように投げられると思うなよ!」
踏みとどまったギルガインは、そこから横なぎにノコギリ剣を振ってきた。
避けられない!
「ムッ!」
僕は杖を手に出して、ノコギリ剣を受け止めた。
「そんな棒切れで、俺のチェンソードが防げるか!」
そういう名前だったのか、ノコギリ剣。と思うと、ノコギリの二枚刃が振動を起こし、杖を斬りにかかる。
「まずい!」
僕は跳び退こうとするが、ギルガインが逃がしてくれない。
僕の持つ杖が、真っ二つに斬られた。
「翼の盾!」
金の盾を展開して、ノコギリ剣を防ぐ。
「またそれか!」
ギルガインがノコギリ剣を盾に押し付けて、ギュインギュインと振動させてくる。しかし翼の盾は、そんなヤワじゃない。
「君の相手をしてる場合じゃない!」
「俺の相手をしろぉ!」
プリシアの元に駆けつけようとする僕の前に、ギルガインが立ちはだかる。
僕は翼の盾でノコギリ剣を逸らしながら、ギルガインの腹に当身を打ち込んだ。
「旋気内撃破!」
気流渦がギルガインの内部に浸透する――はずだった。
しかし打った箇所の身体が鋼鉄化し、僕の浸透撃を食い止めている。
「……お前に負けてから、俺は自分を鍛え直した。お前に投げられなかったのは、投げられる瞬間に自分を鋼鉄化して重量化したからだ」
翼の盾を押し込んでいるノコギリ剣が……重くなっている?
ノコギリ剣は翼の盾を斬ることはできない――が、その重量に、それを支えることができなくってきている!
「お前の真の力を見せろ、クィード・ロラン! お前の怪力は、俺の重量化をも超える力のはずだ。俺はお前の100%の力を受けた上で――お前を越える!」
ギルガインがノコギリ剣を押し込んでくる。ダメだ! 耐えきれない。押し潰される。
「くっ!」
僕は横に転がって脱出する。転がりながら、僕は弱体化ベルトを外した。
「どうやら、本気になったようだな、クィード・ロラン!」
「……ギルガイン――ミシュレイの話を冷静になって聴いてくれ! 君たちはジャルドーに騙されている!」
僕がそう声をあげると、ギルガインはにやりと笑った。
「そんなことは、もうどうだっていい……」
「なに!?」
「――お前と戦う…それが今の俺の全てだ。お前を倒したら……ジャルドーを叩きのめして、真実を白状させてやる」
ギルガインはンコギリ剣を肩に担いで、僕に向かって突進してきた。
「把気!」
把気を伸ばしてギルガインを捕らえようとするが、ギルガインは把気を切り裂いてしまう。
「ぬるいぞ、クィード!」
肩に担いだノコギリ剣がいつの間にか巨大になっている。
その長さは――3m以上はある。
身体よりはるかに長いノコギリ剣を、ギルガインが僕に斬り下ろして来る。
僕は後退してかわす。 その通り過ぎる風圧で、僕の前髪が揺らされた。
「ウオオォラッ!」
ブオン、と振った巨大ノコギリ剣を、すぐに逆の肩に担いで、また斬りかかって来る。デカい剣を扱っているのに、連続攻撃が可能なのか!
ギルガインはさらにノコギリ剣を担ぎざまに、自らを回転させてきた。




