表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
35/37

第34話 仮説

 翌朝。


 私はギルドで朝ごはんを食べていた。


 パン。


 スープ。


 そしてクロ。


「クロは食べないの?」


「猫だからな」


「そうだった」


「今さらか」


 クロが呆れた顔をする。


 その時だった。


「おはようございます」


 聞き覚えのある声。


 私は振り向いた。


「あ」


 アルヴェインだった。


 クロが即座に嫌な顔をする。


「帰れ」


「挨拶くらい受けてください」


「帰れ」


 即答だった。


---


 アルヴェインは気にした様子もなく席へ座る。


 周囲の冒険者たちは少し距離を取っている。


 王都の大魔術師。


 それだけで緊張するらしい。


「リリアさん」


「はい」


「少し話をしませんか」


 私はパンを飲み込んだ。


「いいですよ」


「よくねぇ」


 クロが言う。


---


 結局。


 私たちはギルドの隅の席へ移動した。


 アルヴェインは紙を広げる。


 そこには。


 今まで私が関わった出来事が並んでいた。


 魔力結晶。


 遺跡装置。


 暴走馬車。


 地下水脈。


「まとめてたんですか?」


「はい」


 怖い。


---


 アルヴェインは静かに言った。


「私は最初、幸運だと思っていました」


 紙を指差す。


「しかし違う」


「違うんですか?」


「幸運なら説明できない」


 クロが黙って聞いている。


「成功率ゼロの事象が」


 一枚。


「成立する」


 また一枚。


「失敗しても結果だけが残る」


 さらに一枚。


「そして代償が別の場所へ移る」


 静かな声だった。


 でも。


 ギルドの空気が少し重くなる。


---


「仮説があります」


 アルヴェインは言った。


「仮説?」


「はい」


 私は首をかしげた。


 難しい話の予感がする。


「君の力は成功ではない」


 一拍。


「破綻回避です」


 私はきょとんとした。


「はたん?」


「世界が壊れる未来を避けている」


 アルヴェインは言う。


「そのために結果を書き換える」


---


 クロの目が細くなる。


「……そこまで辿り着いたか」


 アルヴェインはクロを見る。


「あなたは最初から知っていたのですか」


「答える義理はねぇ」


「でしょうね」


 なぜか会話が成立している。


 私だけ置いていかれている。


---


「つまり」


 私は考えた。


「世界が親切ってこと?」


 沈黙。


 クロが顔を覆う。


 アルヴェインも初めて少し困った顔をした。


「そういう話ではありません」


「違うの?」


「違います」


---


 その時だった。


 ギルドの入り口が勢いよく開いた。


「助けてくれ!」


 冒険者が飛び込んでくる。


 息を切らしていた。


「森の監視塔が崩れた!」


 ギルド内がざわつく。


「怪我人は!?」


「まだ分からねぇ!」


 ヴァルドが立ち上がる。


「救助隊を出す!」


---


 私は思わず立ち上がった。


「行きます!」


「待て」


 クロが言う。


「嫌な予感しかしねぇ」


「でも困ってる人がいるよ!」


 私は答えた。


「助けなきゃ!」


 クロは大きなため息をつく。


「だからそれが怖ぇんだよ」


---


 アルヴェインは静かにその様子を見ていた。


 そして小さくつぶやく。


「観測の機会ですね」


 その言葉を聞いたクロの目が鋭くなる。


 だが。


 リリアは気づかない。


 ただ困っている人を助けたいと思っただけだ。


 その願いが。


 どんな結果を呼ぶのかも知らずに。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ