第34話 仮説
翌朝。
私はギルドで朝ごはんを食べていた。
パン。
スープ。
そしてクロ。
「クロは食べないの?」
「猫だからな」
「そうだった」
「今さらか」
クロが呆れた顔をする。
その時だった。
「おはようございます」
聞き覚えのある声。
私は振り向いた。
「あ」
アルヴェインだった。
クロが即座に嫌な顔をする。
「帰れ」
「挨拶くらい受けてください」
「帰れ」
即答だった。
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アルヴェインは気にした様子もなく席へ座る。
周囲の冒険者たちは少し距離を取っている。
王都の大魔術師。
それだけで緊張するらしい。
「リリアさん」
「はい」
「少し話をしませんか」
私はパンを飲み込んだ。
「いいですよ」
「よくねぇ」
クロが言う。
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結局。
私たちはギルドの隅の席へ移動した。
アルヴェインは紙を広げる。
そこには。
今まで私が関わった出来事が並んでいた。
魔力結晶。
遺跡装置。
暴走馬車。
地下水脈。
「まとめてたんですか?」
「はい」
怖い。
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アルヴェインは静かに言った。
「私は最初、幸運だと思っていました」
紙を指差す。
「しかし違う」
「違うんですか?」
「幸運なら説明できない」
クロが黙って聞いている。
「成功率ゼロの事象が」
一枚。
「成立する」
また一枚。
「失敗しても結果だけが残る」
さらに一枚。
「そして代償が別の場所へ移る」
静かな声だった。
でも。
ギルドの空気が少し重くなる。
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「仮説があります」
アルヴェインは言った。
「仮説?」
「はい」
私は首をかしげた。
難しい話の予感がする。
「君の力は成功ではない」
一拍。
「破綻回避です」
私はきょとんとした。
「はたん?」
「世界が壊れる未来を避けている」
アルヴェインは言う。
「そのために結果を書き換える」
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クロの目が細くなる。
「……そこまで辿り着いたか」
アルヴェインはクロを見る。
「あなたは最初から知っていたのですか」
「答える義理はねぇ」
「でしょうね」
なぜか会話が成立している。
私だけ置いていかれている。
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「つまり」
私は考えた。
「世界が親切ってこと?」
沈黙。
クロが顔を覆う。
アルヴェインも初めて少し困った顔をした。
「そういう話ではありません」
「違うの?」
「違います」
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その時だった。
ギルドの入り口が勢いよく開いた。
「助けてくれ!」
冒険者が飛び込んでくる。
息を切らしていた。
「森の監視塔が崩れた!」
ギルド内がざわつく。
「怪我人は!?」
「まだ分からねぇ!」
ヴァルドが立ち上がる。
「救助隊を出す!」
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私は思わず立ち上がった。
「行きます!」
「待て」
クロが言う。
「嫌な予感しかしねぇ」
「でも困ってる人がいるよ!」
私は答えた。
「助けなきゃ!」
クロは大きなため息をつく。
「だからそれが怖ぇんだよ」
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アルヴェインは静かにその様子を見ていた。
そして小さくつぶやく。
「観測の機会ですね」
その言葉を聞いたクロの目が鋭くなる。
だが。
リリアは気づかない。
ただ困っている人を助けたいと思っただけだ。
その願いが。
どんな結果を呼ぶのかも知らずに。




